第七話:恋文?→幽霊?→謎の少女?(後編)
七、
屋上にて、僕は校庭を去っていく生徒たちを見ていた。そろそろ、夕日が僕の目に映らなくなってしまう。これから後の戦いのために僕は気合を入れるため、口を開き・・・
「・・・かかってこいやぁ!」
と心の中で叫んだのであった。別に、意味はない。相手もいないのにこんなことをいっていたら少しばかり頭がおかしいと思われたってしょうがないかもしれないのだが・・・まぁ、いいだろう。だって、声に出して叫んだわけじゃないんだもん!
夜空は果てなく、僕の頭上に広がっている。暗闇を彩るためか、空にはきらきら光るお星様が・・・いや、そんなロマンチック?名ことを言っている場合ではないな。
「・・・先輩、今日もきちんと来てくれましたか・・・」
振り替えれはそこには木刀と竹刀を腰に差している少女が昨日と同じように立っていた。その目は真剣そのもの・・・まぁ、そういう僕も今日は真剣にやりたいと思う。
「・・・最初に教えてくれないかな?僕を何でここに呼んだのかを・・・・」
そう尋ねる僕に、月明かりに照らされた少女は薄く笑ったのであった。
「・・・簡単なことですよ。私は強い人と戦いたいだけなんです・・・」
「それだけ?」
「ええ、それだけです。私のモットーはどのような卑怯な手を使っても獲物は倒せればそれだけでいい・・・武士道というものには反するかもしれませんが、残念ながら私は武士ではありません・・・大体、このようなことをする気にはなりませんでしたが、私は・・・」
そういって彼女は静かに木刀を引き抜いた。
「・・・あなたの実力を知りたいんですよ。三匹の龍を従えているところを見ると相当の腕を持っているに違いないと私は睨んでいるということです・・・」
木刀の切っ先がまっすぐと僕の喉を狙っている。あんなものを当てられたら一撃であの世に逝ってしまうに違いない。真剣に戦うと誓ったのだが・・・ここは逃げの一手でがんばりたいと思います。
「・・・霧月 霧仔・・・またの名をミスト・・・参ります!」
彼女の周りに霧が発生し、僕へと向かってくる・・・・それに対して、僕は・・・
「・・・まず、霧が人間の体から発生すること自体、おかしいな・・・」
冷静に判断し・・・目前に迫る霧仔の攻撃をあわててよけた。手にする獲物は木刀で、素手の僕よりはるかにリーチが長い。さらに、辺りは昨日ほどではないが霧がたちこめている。相手との距離をとりすぎると姿を確認すること自体が不可能となってしまう。
「・・・・ううん、どうしたもんだろ・・・」
「考える時間なんて与えませんよ!勝負は迷ったら負け・・・」
屋上にある転落防止用の柵を駆け上がり、相手は僕の頭上からスカートを惜しげもなく翻して・・・・木刀を突き刺すように・・・落ちてきた。
「・・・くそったれぇ!」
それに対して思いついたことは一つだけ・・・真剣白刃取りである。いや、木刀にもこの名前を使用していいかどうか悩むのだが、そこは何とかなるに違いない。
どすっ!!
「・・・・」
僕は木刀の切っ先を受け取ることなく・・・かといって、自分の体を貫いている木刀を見るでもなく、目の前に突き刺さった木刀を眺めていた。それは、見事にコンクリートを貫通している。相手は使えなくなってしまった木刀に未練がないのか、あっという間に僕から離れる。ちらちら見えるパンツに誘惑されながらも僕は相手と再び向かい合う。
「・・・・外してしまいましたか・・・やはり、人型では少しばかり長期戦はきついですね・・・・こうも、避けられてしまうとは思いませんでした」
腕に自信がある人たちの戦いでは少しのミスだけで勝敗が決定してしまう。まさに、
「刹那の刻」といったものだろう。
「・・・魅せてあげましょう、私の真の実力を!」
気張る僕に対して彼女は腰に刺さっている竹刀を抜き、地面に突き刺す。さて、どんなマジックだろうか・・・・突き刺さったそこから、あたりを白く染めている霧とは比べ物にならないほどの濃密の霧がすべてを多い尽くす・・・・
「・・・・」
別に何かをするでもなく、僕は呆けたように相手を見ていた。
がぁぁぁぁぁぁぁぁ!
何者かの心の叫び?が僕の鼓膜を響かせる。
そして、ある程度霧が晴れたところで相手がいるところを見ると・・・そこには大きな龍が僕を見下ろしていたのであった。目は紅く、白くぼやけている鱗・・・・そして、白い毛・・・・その目は獲物を捕らえる獣のようであった・・・いや、正直言って勝てる気がしません。今すぐここで白旗あげて屋上から逃げ出したいと思ってます。
「・・・・かといって、逃げさせてくれないんだろうなぁ・・・・畜生!爬虫類っぽい奴に負けてたまるかぁ!」
僕は鋭く相手を見据えると・・・・そのまま突撃していったのであった。
朝日が目にしみる・・・気がつけば、朝になってるし・・・・
「・・・すー・・・すー・・・」
隣にはぼろぼろの学生服を着ているミストが静かな寝息をたてながら寝ていた。
あの後、僕も我を失い・・・大暴れ・・・ではなく、僕は正気を保って戦っていた。
攻撃をするのは容易なことではなく・・・避けてばっかりだったのだが・・・・なんとか、あの面に一発・・・・(転がっていたコンクリの塊や突き刺さっている木刀を引き抜いて投げたりした。)以上拳を叩き込んでやった。わはは、正直言ってこのまま保健室に行きたいや・・・そして、そのまま寝たいや・・・・
「しかしまぁ、四匹目の龍が姿を現すなんてねぇ・・・想像もできなかったよ」
誰に言うでもなく、僕は一人でつぶやいていた。目の前には竹刀が突き刺さっている。
「・・・・・・・そういえば、今日は休みだったな。それなら、このまま帰っても罰は当たらないだろうし・・・・」
そこまで独り言を続けていると・・・・
「ん・・・」
隣の少女が目を覚ましたようだった。
「・・・・・・」
「・・・やぁ、おはよう」
顔を近づけてにこりと笑うと、僕の顔に張り手が・・・飛んできた。
「・・・・・・」
「・・・・先輩!寝ている私の寝顔を見た挙句に欲情して襲い掛かりましたね!」
「誤解です・・・僕は健全です・・・」
あまりよくないほうに吹っ飛びそうな意識をなんとかつなぎとめながら僕は彼女に誤解であることを告げる。
「・・・違うんだ・・・」
「本当ですか?」
「うん、本当・・・」
彼女の大きな瞳が僕の目を見据え、その目に僕の顔が映っている。
「・・・どうやら本当のようですね。信じてあげますよ」
はいはい、その目が僕をまったく信じていないということを僕は信じてあげましょう。さて、いつまでもこんなところにいることはできないなぁ・・・
「ミスト、もう用事は済んだだろ?」
「・・・え・・・」
「僕と真剣勝負したかったんだろ?」
「あ、ああ・・・そうです。どうやら私は負けてしまったようですね」
悲しそうにそういっているのだが、実際のところ何度も死ぬかもしれないとこっちは思ったのだ。実力は五分・・・つまり、今回は運が勝負を分けたに違いない。
「まぁ、また何か鬱憤を晴らしたくなったら僕を呼んだら?君のような女の子に手合いを頼まれたらうれしいからさ・・・」
「先輩・・・先輩ってその・・・」
少しばかり恥ずかしそうにもじもじしながらこっちを見てくる。その行動に僕は何かを期待している・・・のだが、どうなのだろうか?
ひとしきり彼女がくねくねしたところ、ようやく決心したのかどうか知らないが、僕の目をひたと見据えてきた。
「・・・い、痛いのが好きな変態さんですか?」
「違うわぁ!俺の趣味はお前さんのようなペタン娘さんじゃないわい!不愉快じゃ!わしゃ、帰る!」
僕はそういって・・・・再び、屋上から脱出用に使用されているロープを掴んで・・・・
「うわぁぁぁぁ・・・」
情けない声を響かせることとなったのであった。自分の言動に反省する自分であった。
週の初め、月曜日・・・充分に休養できたと考えることにしよう・・・とりあえず、学校というものは私事をはさんではいけないのではないかと僕は思う。だから、今日だってまじめにやってきた。心の中は雨ザーザーだけどね。
「・・・はぁ、朝っぱらから大変だなぁ」
「鏡輔さん、疲れているようですけど・・・あの女の子・・・また出ましたか?」
「そうだぞ、鏡輔・・・私たちにそこのところを教えてくれても罰は当たらないだろう?」
「あ〜そうだなぁ、あれから会ってないけど?」
僕は彼女たちに再びあったことを伝えていない。彼女は確かに龍だったのだが、僕とは・・・契約をしていない。だから、彼女たちに教えるつもりもないし・・・また、厄介ごとに巻き込まれてしまったら大変だ。それに、そのときに他の三人に迷惑をかけたらいけないからなぁ。
「・・・そういえば、カオスってさぁ・・・他の世界にいたのに・・・なんでこの世界に詳しかったんだろ?」
「それはまぁ、彼女がやってきてすぐに私たち二人が教えたりしましたからね。鏡輔さんが寝ているときにも私たち二人で教えてあげたんです」
そういって自慢そうに言っているシルバと少しばかり暗い雰囲気のダーク。どうやら心配事があるようだ。
「・・・きっと、また鏡輔はトラブルに巻き込まれるんだろうな。私はがんばってそれを回避しようとはしたんだが・・・・すまん、鏡輔・・・・」
「・・・・・はぁ、何かまた・・・気をつけておかないといけないのかな?」
そんなことを考えて今日も僕らは学校の始まりである・・校門をくぐる。既に桜の季節は終わり、新緑の萌える季節である。そろそろテスト勉強を始めないと赤店を取ってしま可能性大・・・だろうなぁ。」
朝から暗澹たる気持ちの僕とは裏腹に元気そうな?二人を横目で追いながら下足箱を開ける。
ぱさり・・・
床に何かが落ちたのに気がつき、僕はそれを拾い上げた。
「・・・・はぁ、またか・・・・」
まさか、朝から来るとは思わなかった。しかも、相手は・・・・やっぱりミストだ。彼女の日本語名?である霧仔で呼んだほうがいいのか知らないが・・・とりあえず彼女からの手紙はろくなことがないに決まっているし・・・
「・・・時間帯指定・・・今すぐ!?」
手紙内容は『この手紙を見てすぐに屋上に来てください』というものだった。つまり、彼女はまだ僕に用事があるようで・・・・
「・・・シルバ、ダーク・・・悪いけど僕はトイレにいってくるよ」
「トイレ?」
「・・・大か?」
「・・・中・・かな?」
不思議そうな顔をする二人を置き去りに・・・・颯爽と、僕は屋上へと向かったのであった。もちろん、彼女に何か鬱憤がたまったら呼んでいいといったのは確かだがこんなにすぐに呼び出されるとはまったく思っていなかった。
屋上、朝からいる奴はひとりもいない。
「はぁ・・・・はぁ・・・早すぎたのか?」
「・・・遅すぎです、先輩」
背後から姿を現したミストに驚きながらも・・・・僕は息を整えてひそかに体を動かせるように準備運動を始める。
「・・・今日はなんのようかな?」
「・・・・そんなに構えなくてもいいですよ。別に・・・今日は決闘を挑みに来たんじゃありません・・・安心してください」
そう言われて・・・僕は安心して深呼吸をしたのだが・・・・それが甘かったのかもしれない。
首に何かの感触・・・・驚いて目を開くとそこには顔を真っ赤にしたミストの顔があった。そして、僕の目の前からまるでライオンにあったかのようなシマウマのように去っていった。
一人、屋上で立ち尽くしていた僕はそろそろ授業が始まる時間帯だということにあわてて気がつき、教室へと向かったのであった。だが、これは始まりでしかなかった。
とうとう、四匹目の龍の登場・・・となってしまいました。正直なところ三匹で押し通すところだったんですけどね。え〜急遽思い立った企画?ですが、ここでは評価してくださった方に対してお礼の言葉を述べさせてもらいたいと思います・・・・いいのかな?えっと、不便だとかやめてほしいとか思った人はいつでも言ってください。すぐにやめます。『第一回目:評価してくれたタンポポさんへ』という題名でいきたいと思います。恥ずかしながら持てる言葉をもってしても「ありがとうございます!これからもよろしくお願いします!」としか言いようがありません(今後、誰かが評価してくれたらなんていおうかな?)。とりあえず、他の読者の方々もこれからよろしくお願いします!僕はこのまま続投することにします!




