第四話:対決!クリムゾン・デビル!
8月20日 いや、今日も自分的には猛暑でした。猛暑だけにもうしょうがないってところですね・・・失礼しました!
四、
母さんが帰ってくるまで僕はおとなしく一階にいて部屋に座っていた。他の三人は二階で“龍同士の話し合い”をしているらしい。この話は人間が聞いてはいけないものらしく・・・・聞いてしまった人間は頭の中をちくわみたいにしないといけなくなってしまうそうだ。どうかんがえても怪しいことこの上ないのだがどうせ、くだらない話だろう。
「ただいま。鏡輔、輝さんの姉さんと妹さんがきたからお茶を準備してくれない?」
そういって僕の母さんが二人の女性を連れて僕のいる部屋に上がってくる。まさか、母さん以外もいるなんて・・・この状況ではちょっと無理だな。あきらめよう。
「・・・こんにちは、鏡輔君?」
「いやぁ、大きくなったもんだね」
いや、以前にあったことある人たちなのだが・・・この人たち、ふけないなぁ?おっと、こんなことをしている場合ではない。母さんに頼まれたことがあったのだ。
「・・・あの、碧さんに加奈さん・・・緑茶とコーヒーのどちらがいいですか?」
「あたしは何でもいいよ」
「私も・・・どちらでもいいです。輝君はいつごろ帰ってくるんですか?」
白衣に緑色の髪の毛の碧さんとツインテールで金髪の加奈さん・・・・二人とも戸籍上では僕のおばなのだがどう見ても若い。
「・・・・輝さんは今日早いそうです・・・ところで、鏡輔・・・お友達でも来てるの?お客様が来ているのならきちんと相手をしていないといけないわ」
そういっている葵母さんはエプロンをつけている。いや、母さんもどうやらこの二人の相手をするきがさらさらないようなのだが?
「・・・う、うん・・・」
「さ、ここはいいから・・・お茶さえ出してくれればお友達と遊んできてかまわないからね」
僕はそういってくる母さんに頷いてあっさりと二階に戻ってしまったのだった。どうにも、葵母さんは苦手なのだが・・・
二階の扉を開けるとなぜか、そこには父さんがいた。
「・・・お、鏡輔か?」
「と、父さん!?」
「まったく、お前は両親のことを信じられないのか・・・というより、お前はお前で大変なんだろうな・・・これも運命だと思ってあきらめろ。」
「う、運命!?」
なにやら事情を知ってそうな輝父さんに話を聞こうとすると父さんは立ち上がった。他の三人はニコニコしながら僕を見ている。
「じゃ、がんばれ・・・と、そうだ!ばあちゃんがお前を呼んでたぞ!」
「ば、ばあちゃん・・・」
僕のばあちゃんは恐ろしい。近くに家を構えており・・・そこは日本庭園が見れるところなのだが・・・鬼婆だ!こんなことを言えば明日ぐらいに僕の体はぶつぎりにされておなべにはいっているだろうな。
「な、なんて?」
「・・・ふ、それは自分で言って聞いてくるんだな。いやぁ、俺もよく俺の母さんから無茶を言われたものだよ。看板をとって来いとかさ・・・・」
看板を取ってくるって・・・どこの看板なんだろうか?そこのところが気になるが・・・聞かないほうがいいのかもしれないなぁ。
出て行った父さんの代わりに僕は父さんが座っていた場所に座る。
「いいお父さんですね?あっさりと私たちがここに住むことを許可してくれましたよ?」
「う〜ん、確かに・・・なんだか、裏がありそうな気がしてきたよ」
「・・・・本当に変わった父親だ。なんだか、普通の人間じゃない気がしたぞ?まったく隙が無いって言うか・・・」
「まぁ、輝君はそうでしょうねぇ。やっぱり成長はしてますけど中身は変わってないようです」
「!?カオスは輝父さんのことを知っているの?」
「さぁ、それはどうでしょうか?それより、鏡輔君はあなたのおばあさまからお呼びがかかってるんじゃないんですか?」
「そういえば・・・ごめん、ちょっと待ってて!すぐそこなんだ!」
僕は三人に言って待ってもらうことにした。途中、談笑が聞こえてくる前を通る。
「しかし、本当に鏡輔君は輝君にそっくりですね」
「どうかなぁ、俺が思うに俺のじいちゃんに似ているような・・・・」
「まぁ、いいじゃない。元気な証拠だと思うわ」
「そうですよ、輝さんのおじいちゃんはとても元気な人です」
そんな声が聞こえてきたのであった。
ばあちゃんの家の前に立つと必ず、足が震えてまっすぐ立つことができない。これは幼少の頃からここで僕が育ったからだろう・・・詳しく言うなら毎日が修行だった。何でも、その昔はぶいぶい言わせていたらしいばあちゃんは僕に格闘技を教えたいといったらしく、僕の両親はあっさりとそれを承諾・・・理由は『強くなってほしいから』だったそうだ。
「・・・ばあちゃん?鏡輔だけど・・・」
震える足を叱咤して、僕は手に汗握るRPGのラスボスへと赴く勇者の心境だった。
「・・・鏡輔か・・」
扉を開けて中に入ると広い庭に腕を組んで立っている一人の老婆がいた。いや、老婆といえないほど若いのだが・・・老婆は老婆だ。戸籍上僕のおばあさんであるのでばばあなのだ。
「・・・毎日、あちらに住んでいても修行はしていたんだろうね?」
「と、当然であります!」
敬礼する手にも汗が・・・ばあちゃんの元を離れても毎日毎日、町の不良などを使って練習してきた。顔がばれるとやばいのでみかんのネットやパンストをかぶって戦ったこともある。
「・・じゃ、今日で最後の締めだ・・・こいつを倒してみな」
そういって池のほうを指差す・・・・・別に何もいなかった。
「・・・河童でもでてきて相撲でもするんですか?」
「・・・・まぁ、見てろ」
指を鳴らすと・・・・地響きがしてくる。そして、僕の目の前にありえないものが出てきた。
「・・・・お化けザリガニ!?」
そう、そこには人間の二倍はあろうかという化け物ザリガニが池から出てきているところだったのだ。
「・・・・あの、そんな化け物・・どうしたんですか?」
「これか?これは葵が碧のもっていた薬品を借りて加奈と一緒に作り出したザリガニだ。名前は“クリムゾン・デビル”だ。」
た、確かに見上げるようなこの大きさで意外と怖い顔つきのザリガニは悪魔だ。それに、液体の効果なのか知らないが・・・・甲羅は色むらがあって一部分は異常に紅い。その部分を見れば返り血を浴びてるんじゃないかと思う。
がぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・
ザ、ザリガニが、吼えた!?生まれて初めて吼えるザリガニを見つけたよ・・・こいつは煮干やかえるじゃつれない代物だ・・・・というより、こんなのと戦って勝てるわけが無い!
「ば、ばあちゃん!僕がこいつに勝てるはずが無いよ!」
「そうか?輝は似たような奴を過去に倒したぞ・・・葵が倒したそれを食べてたなぁ。」
うちの家族は化け物家族〜♪しかし僕だけ真人間〜♪こんな化け物倒せませぇん♪
ザリガニがその大きなはさみを僕に向かって振り落とす。あまりの速さに僕は何もできないで・・・・基本であるずっと目を開けていることしかできなかった。体はまったく動かない・・・未知なる遭遇、こいつを学会に発表したかった・・・
死を覚悟した僕の目の前に銀色の髪の毛が視界いっぱいに広がる。
「きょ、鏡輔さん・・・大丈夫ですか?」
「シルバ!」
そこには両腕で化け物ザリガニのはさみを防いでいるシルバの姿があった。気がつけば僕はしりもちをついている。
「・・・これ、なんですか!」
「ザリガニ・・・・」
「見ればわかりますけど・・・ザリガニはもうちょっと小さいと思います!」
「僕もそう思うよ!」
「とりあえず・・・・」
そういってザリガニのはさみを押し戻したシルバは僕をつかんで距離をとる。
「・・・倒します!」
「うん、そうしよう!じゃ、僕はこれで・・・・」
逃げようとする僕の首筋をシルバがつかむ。
「あなたのお父さんから聞きましたよ!なよっとしている割には喧嘩強いそうじゃないですか?」
「正直言うけど、そりゃ、他人に比べたら強いと思うよ?だけど、あの化け物は洒落にならない!」
言い争っている僕らに迫る“クリムゾン・ナイト”。足がしゃかしゃか動いていて気持ち悪い。
「・・・くそぉ!こうなったら玉砕だぁ!!」
僕は無策に突っ込むことにした。とりあえず、目に付いた奴の触覚を引きちぎる・・・・と、相手は怒り狂ったのか知らないが再び僕にはさみを振り落としてくる。
「させません!」
シルバがそれを防ぎ・・・僕は相手の目にこぶしを叩きつける。シルバが抑えているはさみの間接部分に向かってけりを入れると・・・あっさりと腕が取れてしまった。もう片方のはさみの間接にもけりを入れて切断・・相手は動かなくなった。
「・・・・終わったようだね。思ったより遅かったじゃないか」
ザリガニは池のほうに逃げていき、姿を消す。今後二度と、あの池には近づくまい。近づけば今度はまた違うものが出てくるに違いないだろうからだ。
「・・・・シルバ、助かったよ。」
「・・・契約上、仕方ないですからね。それに、あなたを助ければまた、私の力も強くなりますから・・・」
「・・・ふぅん、また変なのを連れ込んできたんだねぇ。まったく、輝といい鏡輔といい・・・節操の無いというかなんというか・・・よし!」
ばあちゃんは一人で何やらかつぶやいていると急に声を出した。
「・・・この付近には不思議なほど道場があるのは知っているだろう?」
それは知っている・・・よく、ばあちゃんのところに挨拶に来ていたりするからなぁ。そのおかげで知り合いが増えたぐらいだ・・・まぁ、男の知り合いは別に必要ないんだけどね。
「・・・知ってるよ?それがどうかしたの?」
「・・・お前、道場破りしてきて看板もってこい」
「な、なんだってぇ!?」
「何人連れて行ってもかまわないよ。ま、輝の息子だ・・・他にも変なのがいるんだろう?」
なにやら核心をついてくるばあちゃんに言い返せないでいると僕たちに背中を見せる・・・と、そこへシルバが踊りかかった。
「シルバ!」
「・・・さすがに変なのとは聞きづてなりません!」
彼女が怒るのは勝手なのだが・・・・ばあちゃんに手だけは出してはいけない・・・ばあちゃんは強い・・・
僕が断言したとおり、シルバの右手をなんと、後ろから押さえ込んでいる。
「はっ!」
「まぁ、やっぱり青二才だね」
シルバが気がついたときにはばあちゃんはシルバの背後を取っている。いつの間に・・・とっていたのだろうか?小さい頃から思うのだがばあちゃんは人間ではないのでは?
「・・・そ、そんな・・・・」
「・・・鏡輔、この娘はちょっとだけ鍛えておいてやるよ。ほら、ついてきな」
「そ、そんなぁ・・・助けて!鏡輔さん!」
「いまさら可愛い声出したってだめだよ」
そういってずりずりとつれていくシルバに十字を切って僕は
「さすが、僕の運を高めてくれるシルバだ。僕の身代わりになってくれた」と思ってばあちゃんの家を後にしたのであった。
「・・・あ、鏡輔か・・・今、シルバさんの悲鳴が聞こえなかったか?」
「・・・まぁ、シルバにはかわいそうだけど自業自得だよ。とりあえず、ばあちゃんからちょっと頼まれごとがあってさ・・・」
ダークも龍なら強いだろう・・・名前がかっこいいから強いに違いない。
「・・・・ほぉ、おつかいか?」
「ちょっと違うと思うけど・・・ついてきてくれないかな?どうにも、僕だけじゃ不安で・・・」
「了解した。それならば早めに終わらせたほうがいいだろうな。」
「うん、ありがとう。」
僕はダークを連れて悲鳴が聞こえてくるばあちゃん宅から離れたのであった。無論、近くにいては自分たちも被害をこうむるからでもある。
まぁ、そんな感じで僕の生活は崩れ始めていたのかもしれない。よくよく、思えばあんな馬鹿でかいザリガニが存在するのだ・・・他にもいると思うべきだった。
さてさて、今回の話では知っている人は知っている・・・知らない人は知らない人物たちが出てきました。そんで、ザリガニ・・・これも知っている人は知っているんじゃないかと思います。まぁ、彼女たちは龍ですが今回出てきた人たちの足元にも及びません。さて、次回はダークと鏡輔の道場破りと鏡輔の親友を出していきたいと思います。そういえば、主人公の親友ってどこかおかしい連中がおおいですね?




