第三話:鏡輔とカオス
さて、第三話です・・・・いや、今回はきちんと考えました!第三の龍登場です!
三、
学校帰り、別にシルバと帰る必要は無かったのだが僕はシルバの隣を歩いていた。
「・・・鏡輔さんは浮気者ですね」
「浮気って・・・」
「普通、人間は運や力を求めるもので私たちのような存在とよく契約をしていました。だから、神様は怒って人間の体が一体までしか契約できないように体を弱くしたのです。ですが、世の中にはいろいろと例外があって鏡輔さんもその一つみたいですね。」
「例外?」
「ええ、誰も“−”の力を求めたりしませんからね。ですが、鏡輔さんは“−”の力を求めた・・・せっかく、私が運を強くしてあげたのに・・・」
でも、運は強くなると不運を呼ぶってダークが言っていたよと言おうとしてシルバはむっとしたような表情になる。
「・・・・ちぇ、先に私が契約したのに・・・鏡輔さんは強運をどぶに捨てましたね。まったく、馬鹿なことをしたものです。」
「そんなに怒らなくても・・・」
「不愉快ですから、私は先に帰ります!」
そういって僕は置いていかれたのであった。
「ねぇねぇ、母ちゃん・・あの女の人、何であの男の人を置き去りにしたの?」
「あれはね、修羅場だったのよ。きっと、あの男の子がほかの女の子に手を出したに違いないわ」
「そうなんだぁ」
「時雨君はそんなことしちゃだめよ?」
「うん!そんな八方美人な人間にはならないよ!」
ここにいてもどうやら見世物になってしまうようで僕は歩き始めた。
「はぁ、やれやれ・・・」
一人で道を歩いていると・・・・
「・・・・?」
視界の端に見慣れない何かが映る。それは電柱だったのだが・・・なにやら電柱のしたあたりがぐにゃりと曲がっている。
「?」
近づいてその電柱の捻じ曲がった部分に触れてみた。しかし、何かに触れたような感じは無く、僕の手はそのまま電柱の中に吸い込まれていった。
「!?」
慌てて取り出そうとしてもとることができない。もがけばもがくほど僕の腕・・は電柱の中に引きずり込まれていくようだった。なんだか、とても情けないような感じだが、当人の僕は非常に怖い思いをしている。
「う、うわぁ!!」
「ほら、時雨君・・・見なさい、今度は電柱にちょっかいを出してるわ。」
「あ、本当だ!」
そんなことを言っていないで助けてほしい・・・急激に体を引っ張られるのを感じながら僕はそんなことを思っていたのであった。無論、体は完璧に引き込まれてそこには白と黒が混ざったような世界が広がっている。
大地は白く、空は真っ黒
「ここは?」
一歩踏み出すと、世界は反転・・・大地は黒く、空は白く染まる。
「・・・?」
歩くたびに反転するので気分が悪くなってきた。僕はその場に腰を下ろすとどうしたものかと考える。こういう不思議な世界にこそ、シルバとダークが助けに来てくれるのではないのだろうか?
そんなことを考えていると人影を見つけた。その人は黒と白の服・・・メイド服を着てこちらに歩いてきている。目の前までやってくると彼女は僕をまじまじと眺めている。
「・・・龍持ち?まさか・・普通はこれないはずなのに・・・でも、仕方ないか・・」
そういって僕に頭を下げてくる。
「・・・突然の召喚、すみません。私はこの“混沌”の世界を治めている龍です。名前はそのまま“カオス”で構いません。この世界から出たいのですがお力を貸していただけないでしょうか?」
慇懃な態度である謎のメイドさんに僕はつい、うなずいてしまった。彼女はうれしそうな顔をする。
「・・・失敗したときはともにこの世界に飲まれてしまいますが・・・失礼します。」
お決まりとなったのか、僕は目をつぶった。しかし、予期していた痛みは訪れず・・・やわらかい何かが僕の首に当たっただけだった。
そんな僕の耳に驚いたような声が響き渡る。
「・・・こんな、そんな・・・初めて契約が成立するなんて・・・」
どうやら目を開けてもよさそうだったので目を開けると目の前のメイドさんは首をかしげているようだった。
「・・・どういう意味ですか?」
「・・・この世界から何度も脱出を図りましたが、私には無理なことでした。以前、この世界に来たとある・・・たぶん、あなたと同じ歳ですね・・・男の子は普通に帰っていったのですが、私を連れ出すことはできないようでした。でも、彼が言うにはきっと訪れるといってましたからね」
そういうと彼女の足元が崩れ始める。
「・・・大丈夫です、あなたがもといた場所・・・に行くだけですから」
瞬き一回の間に世界は崩れ、気がつけば電柱の前に立っていた。
「ほら、つきました」
先ほどの出来事が嘘ではないことを証明するかのようにそこには非日常的な存在のメイドさんが立っている。
「ええと、カオスさんでしたっけ?」
「そうです。何か?」
「何故、メイド服を?」
「・・そのときやってきた男の子からこれをもらったんです。きっと似合うだろうといわれましたからね。」
ええまぁ、確かに似合いますって・・・いや、そういうことが問題じゃねぇや。
「とりあえず、僕の家に来てくれませんか?龍のことぜんぜん理解できてませんからあなたのお仲間に聞きたいと思います」
「そうですか?それならお供したいと思います。あの世界から出してくれたお礼として、一生尽くさせてもらいます」
その言葉に嘘は無いのだろう・・・目の置くには真剣そのものをしめす輝きがあった。ああ、これは願っても無いいいことなのに・・・なぜだろう?普通に考えたら意外とやばいことなんじゃないのだろうか?
「さ、そんな難しい顔をしないでください。」
「・・・とりあえず、聞きますけど・・・カオスさんって・・・」
「カオスで結構ですよ、ご主人様」
「・・・いやぁ、照れるなぁ・・ってそうじゃなくて!カオスはやっぱり“+”とか“−”とか契約者に何か力を与えるの?」
「ええ、それはもう・・・」
頷くところを見るとそうなのだろうが・・・その顔は優れない。ま、まさか・・・ダークと同じような感じなのか?つまり、僕の運は“−”側ということなのだろうか?
「そこまで話を知っているのならば別にかまいませんね。残念ながら私がご主人様に与える力はわからないのです。」
「・・・わからない?」
「ええ、“+”だったり“−”だったり・・・また、別のものだったりします。知っているのは風だけさぁ・・・って感じですね。この世界や龍の世界に私の存在はイレギュラーなんです」
なるほど、この人の存在自体がまさしく混沌なのか・・・しかし、なんだか封印されていたようなボスキャラ的存在の彼女を普通に引っ張り出してきてよかったのだろうか?
そこは一物の不安を抱きながら僕は歩き出した。カオスは僕の後ろを追いかけてくる。
家についても母さんたちが帰ってくるには少々早すぎたようで鍵は開いていたが一階には誰もいなかった。だが、きちんと靴が二人分置かれているということは最低、二人の人間が二階にいることなのだろう。
一人はシルバ・・・もう一人は・・・
「・・・やっぱり、ダークだったか」
「おじゃましてるぞ、鏡輔・・・」
ダークはカオスのほうを見て驚いたような顔をする。
「きょ、鏡輔さん・・・その人は?」
当然のようにメイドを従えて帰ってた同居人を驚いた表情で見てくる。
「メイドですよ、龍のお二人さん?」
にこりと微笑むカオスにいまだに驚いているシルバとダークだったのだが、僕の襟をつかんでゆさゆさとし始める。
「どういうことなんですか!また、龍をつれてくるし!話もきちんとしたでしょう!メイド?メイドがそんなにいいんですか!」
「むぅ、メイド属性なんかがいいのか・・・意外と鏡輔はマニアックなんだな。学校じゃ、静かなのに・・・意外とあれだな・・・私もめがねをつけてみるか?」
「ほらほら、ご主人様が苦しんでますから・・・シルバさん、放してあげたらどうですか?」
カオスにそういわれて僕が既に真っ白になっていることに気がつく。
「あ・・・」
「・・・・」
手を離し、僕はそのまま地球の引力に引かれ
「・・・地球の引力に惹かれる奴が悪いのさ・・・ぐふぅ!」
意識がなくなってしまったのであった。
目を覚ませばそこにはシルバの顔が・・・
「おはようございます、ご主人様」
「・・・・おはよう、カオス」
まさしく、頭の中は混沌が支配している。そして、気がつけば今度はメイド服ではなく巫女服に変わったりしている。あ、巫女服もかわいいなぁ・・・じゃなくて・・・
「・・・・・あの、その服は・・?」
「これですか?可愛かったので以前私に会いに来てくれていた女性にもらったものです。本当に可愛いですよね、これ?ほかにもいろいろともってますよ?」
ええ、それはぜひとも今度着て僕に見せてください・・・はっ!殺気!?
「・・・・起きたんですね?」
「あ、シルバ・・・」
そこには昔の不良の座り方をまねして改造制服とリーゼントのかつらをかぶったシルバとダークがいた。なぜか、ダークのほうは伊達めがねをかけている。
「・・・・私たちも・・・コスプレをしてみました」
「・・・・おどりゃ、なめとんのかコラ!」
この人たち・・・コスプレしてるの?目つきが悪いの素だろうか?
「・・・・リーゼント、よく似合ってるね」
「・・・おどりゃこりゃ!見せもんちゃうぞ!ゴラァ!」
そういって僕の胸倉をつかんでくるシルバ。迫真の演技ではなく、どうやらなりきっているようでとてもすさまじいメンチを僕にきってきている。おいおい、絡まないでくれよ。
「・・・・ダーク、とめてあげて・・・」
「・・・わかった。まぁまぁ、シルバさん、鏡輔が困ってますから・・・」
「・・・ちぇ、のってたのに・・・」
乗らないでほしい・・・・悪乗りする性格なのか?ああ、以前にあった白銀の美しい龍は何処へ?あの礼儀正しくも可愛い女の子は?
「・・・ご主人様・・・・」
「カオス、ちょっと待って・・・まず、“ご主人様”はやめて名前で呼んで」
「そうですよ、このパチモンメイドが・・・」
「そうですか、それなら鏡輔君!」
きょ、鏡輔君・・・その微笑み具合がなんとも・・・・それになんだか、心に響くええ響きや・・・ああ、もっと言ってほしい!
「・・・鏡輔さん、鼻の下が伸びてますよ。みっともない・・」
「・・・かまわないよ・・・ああ、僕は今とても幸せだ・・・」
「く・・・・」
「鏡輔君はこの人たちと暮らしているんですか?」
そういって二人のほうを見ているカオス。それに対して僕はどうしたものだろうかと思いながら答えた。
「いや、暮らしているって言うのかな?ダークのほうは別に家があるし・・・」
「それは大丈夫だ。ここにほれ・・」
そういってかばんを指差すダーク。
「・・・このように荷物を持ってきて引っ越してきたからな」
「そうなんだぁ・・じゃなくて!」
「それなら、私が住んでもかまいませんよね?鏡輔君、これからは一緒ですよ」
うれしそうにそういうカオスを無下に扱うこともできずに僕はただ、黙っていた。
さてさて、これから僕がするべきことは一つ・・・この三人がこの家に住むようにと両親に頼み込むしかない・・母さんは了解すると思うが・・・父さんは・・・どうだろう?




