ミストEND:鏡輔とミスト
ミスト エンド
「・・・・はぁ・・・・はぁ・・・・」
人ごみの中を緊迫した様子の鏡輔が駆け抜ける。
「あいたっ!」
「すみませんっ!」
「ちょっと、踏まないで!」
「誤解です!」
そんなことを口にしながら彼は何かから逃げていた。
「・・・・なぜだ?誰が俺を追いかけてきているんだ?」
鏡輔は迷子になったほかの人たちを探していたのだが、どうにも、途中から誰かにつけられているようだった。知り合いだろうかと思ったのだが、知り合いはゾンビのような声を出さないはずだ。
「・・・・ここまでくれば大丈夫か?」
途中から消え去った気配のことを考えながらも息を整える。
「・・・ラルド君・・・じゃないし、ばあちゃん家の池からまた生物兵器でも生まれたのかな?」
その肩を思いっきりつかまれる。
「うわっ!!」
鏡輔はその手を払いのけると相手の喉元に拳を叩きつけようとして・・・・
「ミスト!?」
「せ、先輩でしたか・・・とりあえず、これでほっとしました」
半なき状態のミストがその場にへなへなと座ったのだった。
「・・・なるほど、迷子になってて不安になってたのか・・・」
「・・・別に不安になっていたとは言ってません!大体、先輩たちが私から離れるのが悪いんですよ!」
二人で近くの階段に座って鏡輔が買ってきた(ちなみにミストもついてきた)チョコバナナを一緒にかじる。
「・・・・ふぅ、本当に死ぬかと思いましたよ!普通は喉元に拳をたたき出しません」
「まぁまぁ、こっちもそれなりに怖い思いしてたし・・・さ、これ食べたら他の人たちを探しにいこうか?ミストみたいに寂しがってるかもしれないからね・・・・」
「べ、別に寂しがっていたわけじゃないんです!先輩が不良に絡まれていないか心配だったんですよ!」
「はいはい、わかったわかった。ほら、行こう?」
ミストの手を引いて鏡輔は歩き出す。
「・・・わかりましたよ」
不承不承といった様子だが、ミストも階段を下りたのだった。
「う〜ん、みんないないね・・・」
「ええ、そうですね・・・意外と人が多いですからもしかしたらまた離れ離れになるかもしれませんね?」
言っていて不安になったのかぶるぶる震えだすミスト。
「いや、きちんと手を繋いでいるんだし、迷子にならないと思うんだけど?」
「いえ、わかりませんよ?簡単に考えているとすぐに迷子になってしまいます。戦場ではマイナス方向に考えるべきですよ?」
ミストはそういって鏡輔に引っ付く。
「・・・・戦場?ここは祭り場だよね?」と誰かに鏡輔は問いかけたのだった。
鏡輔ともはや離れている距離がゼロになっており、ミストはいまだに不安なのかほぼ、鏡輔に抱きついているような状況だった。
「ミスト、引っ付きすぎ」
「いえ、これでもまだ足りないくらいですよ?」
「足りない?これ以上どうするよ?」
「そうですねぇ・・・・」
暫し、考え込んだミストを引きずるようにして鏡輔は答えを待つ。
「・・・私を抱っこ、もしくはおんぶするのはどうでしょうか?そうすれば迷子になる確率は減るでしょうね」
「いや、どうだろう・・・おんぶしていたミストがほら、ええと・・・泣いて重たくなるおじいさんになるかもしれないよ?僕、まだ妖怪をおんぶしたいとは思わないんだけど・・・」
「じゃ、抱っこですか?」
「抱っこも却下!」
顔を真っ赤にして叫ぶ鏡輔を見ながら
「何で、先輩は怒ってるんだろ?」とミストは考えたのだった。
「父さん!?」
「あれ?お前はまだいたのか?」
鏡輔は祭りに仲良くやってきていた輝、葵、加奈、碧にたまたまあったのだった。そして、恐ろしい事実を耳にする。
「・・・あ、そういえばカオスたちは既に家に帰ってきてたぞ?」
「にゃ、にゃんだって!」
「来る途中あったんだ。そろそろ家に帰り着いてる頃じゃないか?」
「家に着いたら連絡するって・・・鏡輔の携帯に連絡がかかってくる頃じゃないかしら?」
葵がそういったと同時に鏡輔の携帯がなりだしたのだった。
「じゃ、俺たちは祭りを楽しんでくるからな・・・・・早めに帰るんだぞ?」
そういって輝たちは帰っていったのだった。そして、心配そうに見てくるミストを見たのだった。
「先輩、私たちも帰りましょう?」
「何言ってんの!文化祭もろくに僕は楽しめなかったから・・・みんなと楽しめなかったからさ・・・ミスト、悪いけど付き合ってもらうよ!」
ミストを掴んでそのまま鏡輔は走り出す。いきなり走り出した鏡輔の隣に並ぶようにしてミストも走り出す。
「え、ど、どこに?・・・いくんですか?」
「・・・楽しいか知らないけど、僕が一番、好きな場所!そこならとりあえず落ち着けるからね」
鏡輔はそういって先ほどよりもスピードを上げたのだった。
満月が見える丘・・といっても、もはや山の付近なのだが、人はめったに寄り付かないような場所だった。
「・・・ここからなら月も綺麗に見れるよ?まぁ、今日は満月じゃないからあんまり迫力ないけどね」
そういって芝生の生えている場所に座る。
「・・・綺麗ですね?」
ミストはその場に立ったまま、そう呟く。
「・・・・うん、そうだよ・・・・ここにくるのはものすごく久しぶり・・・一年以上来てないからね」
そういって鏡輔は再び立ち上がる。
「・・・抱っこ、してあげるよ」
「え?でも・・もう迷子にはならないと思いますけど?」
「・・・まぁね、そうだろうけど・・・・あ〜もうっ!」
鏡輔はミストを抱え上げ、お姫様抱っこを強行したのだった。
「・・・・・これで、僕が見えている景色が見えるんじゃない?」
「ふふ、大人になった・・・って奴ですか?」
「僕は大人じゃないけどね・・・・さ、帰ろうか?」
「・・・そうですね、また、この場所に来ますよね?勿論、私と二人だけで・・・・」
その問いに鏡輔は呟いた。
「・・・うん」
〜END〜
さて、今回で龍と書いてドラゴンと読む!は終了となってしまいました。知っている人は知っていると思いますが、鏡輔の父親の輝は以前の主人公でした。以前も似たような感じでそれぞれと終わりました。どうだったでしょうか?ちなみに、当初の予定では葵、加奈、碧のそれぞれの子供を主人公として三部作書くつもりだったのですが、それはどうかと思って葵だけの子供の物語とさせていただきました。この小説を投稿したときに第一話とシルバエンドが同じだったりしますが、それは読者の皆さんにこの小説の第一話を思い出して欲しかったからでもあります。皆さんの心に残れば幸いです。では、これからはどうするかわかりませんが、また何か思いついたらかきますのでそのときもよろしくお願いします。これまで呼んでくれてありがとうございます!




