第二話:鏡輔とダーク
第二話です。いえ、特に何もありませんが・・・
二、
「え〜彼女はこのクラスにいる白河の従妹だ。今日からこのクラスの一員になるからみんな、仲良くなるように」
クラスの男子や女子の両方から歓声が上がる。
まぁ、当然といえば当然かもしれないな。
僕の家に住むといった・・・シルバは何故か学校に転入していたのであった。
僕はそれを朝知っていたので問題は無いのだが・・・・シルバが言うにはこれで僕の運が上がったらしい。朝から犬にまとわりつかれたりほかの犬が骨を持ってきたり、猫が僕の目の前で鰹節(塊)をおいていったりと・・・それは確かに運があがったのかもしれないのだがそれはどうかと思う。僕としてはもうちょっと違う運がほしかった。
「・・・・白河君、あの人本当にあなたの従妹?髪の毛の色が違うみたいだけど・・・?」
このクラス一の無口の女子生徒が僕に話しかけてきた。これはこれで運がいいのだろうが・・・・いや、運がいいのだろうか?早速シルバと僕の関係が怪しまれてるぞ?
「ええと・・・・彼女、養子なんだって・・・その、小学校の頃にあったぐらいでよくわからないんだ。ほら、よく知らない親戚だっているだろう?彼女がそうなんだ」
前々から考えていた言葉(当然、これは予期していたことだ。)をすらすらと出して彼女の抱いた疑問を消す。
「・・・養子?それなら龍なのも納得できるか・・・だが、どうやら先を越されてしまったようね。・・・ああ、いや、なんでもない独り言」
俺の視線に気がついたのかそういう彼女だったのだが、弁解するようにそういって彼女はシルバのほうを再び見ている。興味があるようである。
「・・・・ええと、白河 シルバです。漢字で書くと白羽と書くそうなので・・・これから、よろしくお願いしますね。」
彼女・・・シルバが言うには自分は運の塊(運固!?)だといっていた。彼女が僕と契約をしたということで僕に住んでいるらしい。
「それじゃ、彼女はええと・・・鏡輔の席・・・」
ほら、やっぱり運がいい!これはクラスの女子と話すきっかけになるかもしれん!
「・・の隣に座っている黒山の隣に座ってくれ。この前退学した奴の席だからもしかしたら机の中に何かが入っているかもしれないが気にしないで結構だ。」
いや、気にしたほうがいいでしょうって!
「はい!わかりました!」
いやいや、あんたもそのくらい気にしろよ!
隣を歩いていったシルバと目をあわすことも無く、僕はこちらを見ている黒山さんと話していた。これはこれで運がいいかもしれない。
「・・・・ねぇ、そういえばほかの男子はよく女子と話しているのに白河君は何で話してないの?」
「・・・気恥ずかしいって奴かな?」
「・・・・そうなのか・・・」
「でも、黒山さんも男子と話してないような・・・」
彼女の場合は女子とも話をしていなかったような・・・・
「・・・とりあえず、隣にやってきたあなたの従妹と親睦でも深めてみるか。」
どこか変わった口調の彼女はシルバの方に話しかけていた。
「・・・シルバさん、黒山 ダークといいます。」
黒山さんってそ、そんな名前だったの!?自己紹介のときはもっと別の名前を言っていたような・・・・
「・・・・見たところ、白銀の龍と思いますがどうでしょうか?」
「え、ええ・・・驚きました・・・ほかにも私の仲間がいるなんて・・・」
「残念ながら、私はあなたを敵だと思っています。」
爆弾発言・・・というより、二人ともすでに授業が始まっているということに気がついていないのだろうか?周りから見たら非常識なことしか言ってないぞ?
「敵って・・・何故?」
「残念ながら、あなたが宿主としている彼・・・つまり、白河 鏡輔君は私が先に眼をつけていた人間です。」
そ、それは驚いた・・・
「しかし・・・それなら先に契約をすればいいんじゃないんですか?」
「・・・・いえ、それはできませんでした。それに、今日はじめて話しましたし・・」
それは事実だ。この根暗な女の子と話したことはこれまで一度も無い。
「・・・・何故、できなかったんですか?」
「・・・恥ずかしかったからです」
そうですか・・・そんなに恥ずかしかったんですかって・・・もう付き合ってられん。
彼女たちはその後も僕にはよくわからないことを話し合っており、そろそろ授業を聞かなくてはと思った僕はまじめに先生の授業を受けたのであった。
「やばい!もれる!」
あわてて男子トイレの個室に入って用を足す。家でやってくればよかったな。そろそろ出ようとして扉に手をかけると外から・・・
コンコン・・・
ノックをする音が聞こえてきたのであった。当然、僕はすでに出ることにしていたので
「えっと、今出ます。待っててください・・・・」
扉を開けるとそこにはダークと名乗った女の子がたっていた。ここは・・・男子トイレのはずだ。
「・・・黒山さん!?」
「・・・・」
黙ったまま、僕を個室の中に押し戻して自分も入ってくる。何気に僕が通っている高校はトイレにお金をかけているらしく、『くつろげる空間を提供する!』というコンセプトのもとに個室は広い。
「・・・ど、どうしたの?ああ、女子のトイレ入れなかったの?」
「・・・違う・・・」
そのまま水洗トイレ(先ほどきちんと蓋をしていた。)に座らせて彼女は僕の開いた股に体を割り込ませるようにして僕の目を見てくる。
「・・・・私が思っているような人物ならば、耐えられる・・・はず。だから、ごめん」
「え・・・」
そういって彼女は爪で僕の首元を引っ掻いた。
「いたっ!」
「目、つぶって・・・」
逆らえないというか、なんというか・・・・そのまま目を閉じた僕の首に誰かの唇が当たる。
「・・・・」
「・・・・終了したから目を開けていいぞ。」
そんなぶっきらぼうな言葉に従い、僕は目を開けた。そこには顔を真っ赤に染めた黒山さんの顔があった。手は僕の胸に添えられており、動けないような状態・・・
「・・・・やっぱり、私の思ったとおりだな。先に詫びておこう・・・これはちょっと危ないことだったのだ」
「はぁ、わからないんだけど?」
「・・・まぁ、いい・・・とりあえずこれで彼女と私は五分だ」
「?」
「さ、教室に戻るぞ。」
そういって僕たちは普通にトイレから出てきたのだが残念なことにそこには女子生徒がいて僕たちを見て友達とひそひそ話をし始めたのであった。うう、なんだか不幸だ。
昼休み、シルバの周りには人だかりができており、僕は遠巻きに見ているぐらいしかできなかった。今、近くにいるのは黒山さんだけである。
「・・・・人気だな、やはりそういう雰囲気があるのだろう」
「・・・・なぜか、黒山さんのしゃべり口調が男みたいになっているけど?」
「・・・・まず、話しかけるのなら同姓だと思えばいいのでは?と私なりに思ったからだ。それで、ある程度仲良くなったらそこから私は女口調に戻ろうと思う。」
「・・・・そうなんだ」
「そうだ・・・ところで、これから一緒に屋上で弁当を食べないか?」
そういえば昼飯を食べていない。僕と黒山さんは弁当を所持して屋上に向かったのであった。
屋上は人気スポットの一つ・・・ではなく、そういえば本当は立ち入り禁止区域の一つである。ほかにも立ち入り禁止区域はいろいろとあり、この高校には地下がある。普段は生徒だけでは立ち入ってはいけないところで・・・・・
「・・・では、ここでたべるとしよう。」
「そうだね。」
おっと、いけないいけない・・・・せっかく女の子と食事できるんだ。これはこれで楽しんでおかないと・・・・
「・・・・やはり、白ご飯にはこのふりかけだな」
自作なのか知らないのだが、彼女はなにやらポケットから取り出してご飯の上に乗っける。僕はそれをまじまじと眺めていてなんなのだろうかと思った。
「・・・それ、何?」
「・・・まぁ、宿主である鏡輔には教えないわけにはいかないな。これは、イモリの黒焼きの粉末だ」
「・・・・そ、そうなんだ。黒山さんは・・・・」
「鏡輔、私のことはダークと呼んでかまわない。いや、むしろそう呼んでほしいな」
「わ、わかったよ」
なんだか話をはぐらかされたような感じがするし、実のところ彼女は僕をからかっているのかもしれない。
「・・・・ダークは本当に龍なの?」
「・・・シルバの姿を見たのに龍の存在を信じないのか?」
「そりゃ、シルバの姿は見たけど・・・」
「・・・私の龍の姿は見たことが無い・・そういいたいんだな?」
なんだか攻めるような口調なのだが、彼女は立ち上がった。気がつけば、彼女の弁当はにんじんをのこしてすべてなくなっていた。どうやらにんじんが嫌いのようだ。
「・・・目を、つぶっていてくれ」
彼女はそういい、僕はそれに従う。
「まさか、こんなところでするとはな・・・」
何かし始めたようで・・・僕の頭に何かがかかった。
「?」
そんな僕の肩に手がおかれる。どうやら、もういいらしい・・・・それより、僕の頭にかかっているほのかに温かいこれは?
「うわっ!ブラジャー!?」
い、意外と大きい!・・・じゃなくて、僕の目の前には漆黒の龍がきちんといたのであった。その鋭い目つきは神々しくも恐ろしいものだった。人間の力が及ばない・・・そんなものをその目の奥に持っているようだった。
あたりには下着やら制服が適当に落ちている。
「・・・ごめん、信じるよ」
わかればいいといったようにため息をついたのであった。僕は目を再び閉じる。途中、いまだに頭の上に乗っかっていたブラジャーが取られて残念だ・・・・と、僕は何を思っているんだ!
「・・・もういいぞ」
許可をもらい、僕は目を開けた。そこにはちょっと顔を赤くしているダークがいたのだが、僕は話しかけることができなかった。
「・・・・何も、感想は無いんだな?」
何も言わない僕に彼女は顔を赤くしたままそう尋ねてくる。
「あ〜その、鱗がきれいだったよ」
「そ、そうか・・・そういわれるとうれしいものだな」
あまりよく見ていなかったのだがとりあえず褒めたほうがいいのだろうと思って僕はそんなことを言ったのだがどうやらあたりだったようだ。
「・・・シルバは自分のことを運の塊(運固!?)だといっていたけど・・・やっぱりダークもそうなの?」
「私か?そうだなぁ、どちらかというと私は“−”のほうに力を与えているからな。私と契約してしまった人物は運がなくなるな」
「そ、そんな!」
僕はあわててダークに詰め寄るが彼女は冷静そのものだった。
「慌てるな。既にシルバさんと契約をしているのだろう?彼女が“+”で私が同等の力を持つ“−”だ。」
つまり、結果はゼロ・・・ということだろうか?
「それに、行き過ぎた運は逆に不運だ。鏡輔も何か迷惑・・・というより、変なことが無かったか?元から人間にもてるならばべたべた誰かがよってきたり・・・」
犬と猫!?あのことか!
「彼女とずっと契約していて女にもて始めれば見知らぬ女が嫉妬するぞ。そして、鏡輔は包丁で刺されて終わりだな。どうだ?運がもたらすものに不運だってあるんだ」
犬が骨をずっと持ってきて、猫がそれに対抗・・・嫉妬した犬は僕ののど元にがぶり?どうやら最悪の事態は僕の運が元に戻ったことでおさまったらしい。
「・・・私が鏡輔とこれまで契約しなかったのも同じ理由だ。私と契約したものは“−”の影響を強く受けてしまうからな。」
「なるほど・・・」
その後、僕たち二人は昼休みが終わるまで青空の下、屋上で他愛のない話をしてすごしたのであった。しかし、話を聞けば彼女たちの体調で力は変わるらしいので気をつけよう。
どうだったでしょうか?ご意見、ご要望、文句・・・・随時募集中です。(できれば最後は勘弁してください。)面白かったのならばよかったですし、面白くなかったのならば、努力したいと思います。これからもがんばりますんで、よろしくお願いします。




