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ダークEND:鏡輔とダーク

ダークEND

「やっといたよ・・・」

 目に涙を溜めながら焼きそばを口に運んでいるダークを見つけると地を這うように鏡輔はダークの元へと向かったのだった。

「ふぅ、何してるの?」

「・・・鏡輔にはこれが何をしているのかわからないのか?それは眼科に行ったほうがいいぞ?おえっぷ、いい眼科を紹介しようか?」

「い、いや・・・・遠慮しておくよ。それよりダークのほうが病院に行ったほうがいいんじゃないの?」

 たまにおえっといいながらダークは何とか焼きそばを食べ終えたのだった。

「・・・食べ物に殺されると思ったのはこれで四回目ぐらいだな」

「以前にそんなに殺されそうになったんだ・・・・」

「魚の骨が刺さったり、スイカの種を飲み込んで胃の中で成長した・・・」

「嘘!?」

「・・・夢を見た。寝苦しいといったらこの上はないだろうな。実は私の家にその映像があるんだが・・・一緒に見るか?」

「いや、いいよ・・・」

 ちょっと変わったところのあるダークを見ながら鏡輔はようやく他の人物たちを忘れていたのを思い出したのだった。

「そうだった!ダーク、他のみんなは?」

「は?てっきり鏡輔側にいると思ったんだが・・・やはり、迷子になったのは鏡輔だったのか?」

「いや、それを言うならダークが迷子になったんじゃないの?僕はもう高校生なんだよ!?」

「落ち着け、ここは冷静に考えよう・・・・」

 憤る鏡輔にあくまで冷静なダーク。

「・・・・今考えた可能性なんだが・・・」

「何?」

「我々二人だけが迷子になったのではないか?」

「どういうこと?」

「つまり、鏡輔と私は知らず知らずのうちにみんなから離れていってしまったということだ。だから、他の三人はいまだに我々二人を探しているのではないのだろうか?私一人だけが迷子になるのは忍びない、どちらかが損をするのならお互い損したほうがいいだろう?」

「・・・・そうかなぁ?」

「とりあえず、他のみんなを探そう。三人が固まって動いていたら我々二人が迷子だったということになるからな」

 ダークは鏡輔の手を掴んで歩き出す。

「・・・さぁ、いくぞ」

「ダーク、そっちは出口じゃないのかい?」

「・・・お、本当だ・・・失敬、私としたことが冷静さを失っていたようだ。鏡輔、私の手を離すんじゃないぞ?無論、離しても構わないがその場合は鏡輔一人だけが迷子になったということにしよう」

 メガネをくいっとあげてダークは再び歩き出したのだった。

「・・・なんだかなぁ・・・」

 その後をダークの手を握っている鏡輔が続いたのだった。


「・・・まったく見つからないな?」

「そうだね、三人ともいないねぇ」

「何周まわったか覚えてるか?」

「・・・五周以上?」

「携帯を鏡輔から借りたのはいいのだが、途中落としてしまったからなぁ・・・・さて、どうしたものだろう、他に考えられる可能性は・・・」

 メガネがきらりと光ってそのまま何事か考えるような仕草を見せる。まさにその姿は探偵ものの犯人を追い詰めるシーンそのものだった。

「・・・・一つ目、はぐれている我々と探していると思われるあちらの三人のスピードがまったく一緒」

「でも、途中で反対方向にも進んでみたよ?」

「それは、あれだ・・・あちらも同じ時間に反対方向からこっちに向かってきたんだ」

 どうだといわんばかりのダークなのだが、それはそれでおかしい気もする。

「・・・・他の可能性は?」

「他の可能性?そうだなぁ・・・高校生なのに迷子になってしまった我々二人に幻滅して先に帰ってしまった・・・・・」

「それはそれで悲しいね」

「まぁ、実際に迷子になったのは鏡輔だけだ。現に私はあそこで鏡輔がやってくるのを待っていたのだからな」

 胸をそらしてえばっているダークにため息をついて鏡輔は先を促す。

「三つ目は?」

「三つ目か?三つ目は何か事件に巻き込まれた・・・・そうだな、他の世界に転送されてしまったというのはどうだろうか?今頃、魔王を倒しているかも知れんぞ?」

 彼女たちは龍なのでどっちかというと魔王がわなのではないか?という疑問を鏡輔は覚えたのだが黙っておいた。ここでそれを言ってもこの龍は取り合ってくれないに違いないだろう。

「・・・大体、その仮説はあとどのくらいあるの?」

「あ〜次で最後だが・・・・」

「四つ目は何?」

「それは・・・」

 急に黙りこくってしまったダークを不振そうに見る鏡輔だったが、遠くのほうからどこかで聴いたことのあるような声が聞こえてきたのだった。

「鏡輔さーん!ダークさーん!」

「あ、シルバだ・・・・」

「む、本当だな・・・他の二人の顔もあるということはやはり私たちだけが迷子になっていたということなのか?」


「あ〜やっぱり我々二人だけが迷子だったのですか・・・・」

 鏡輔は後ろからそんなことを話している四人を見ている。鏡輔はこの歳にもなって迷子になってしまったのに不覚を感じ、ダークよりも沈んでいたのだった。

「あの、鏡輔さんと何かあったんですか?」

「・・・いや、何もありませんでしたよ?」

「そうなの?それにしては鏡輔君かなり元気ないと思うんだけど?」

「そうですねぇ、元から暗いところはありましたけど・・・先輩、かなり落ち込んでいるようです」

 それぞれがそんな勝手なことを言っているのだが・・・近くで離されているのに鏡輔の耳には届いていなかった。いや、一応届いていたのだが右から入って左に抜けていっているのだった。

「・・・あ、そういえば・・・少々、心当たりがあります。先に行っててくれませんか?謝ってきますので・・・・」

「待っておきますよ?」

「いや、他にも用事がありますから・・・ちょっと、落し物をしていたことを忘れていました」

 そういって四人から離れていくとダークは鏡輔の元までやってきたのだった。

「鏡輔、すまなかったな」

「・・・・あ、ダーク・・・どうしたの?」

「どうしたも、何も・・・・鏡輔は私がお前の携帯を落としてしまったことを怒っているのだろう?」

「・・・携帯?」

 その言葉を聞いて鏡輔も携帯のことを思い出したのだった。

「ダーク!僕、携帯を探してくるよ!先に帰ってて!」

 そういってお祭り会場に走り出す鏡輔の後姿をダークも追いかけながら呟くのだった。

「何を言っているのだ、私がなくしてしまったのだから私が行くのが筋だ」

「にゃにおう!それならどっちが先に見つけるか勝負しようじゃないか!」

「ふ、望むところだ」

 意気込んだ二人は共にお祭り会場に乗り込んで左右分かれて携帯を探し始めたのだった。


「・・・・といっても、僕が持っていたわけじゃないからこっちのほうが不利なのではないだろうか?」

 言い出したほうの鏡輔は既に弱腰だった。どこから探していいのかわからずにうろうろとしている・・・と、彼の目に・・・・

「あった!」

 自分の携帯が写ったのだった。

「・・・よっしゃ、これで勝ちだ・・・」

 携帯しか目にはいっていない鏡輔はそれを拾おうとして・・・・・

「あ・・・」

 誰かの手の上に手を重ねてしまったのだった。

「すみません!」

 急いで手を離したのだが・・・・携帯はそのまま上に上がっていく。その携帯を追って鏡輔の視線も上に上がっていき・・・・

「ふふふ、鏡輔、私の勝ちだな?」

「ダーク!?」

 勝利の微笑をたたえているダークの姿があった。

「勝てない勝負には載らないほうがいいぞ?まぁ、この場合は鏡輔が先に提案をしてきたのだがな・・・・」

「く、くそう!」

 悔しんでいる鏡輔の手に携帯が載せられる。

「・・・携帯、落としてすまなかったな」

「いいよ、戻ってきたんだし・・・・それより、元気ないようだけどどうかしたの?」

「・・・・いや、私が元気がないのは鏡輔が元気がなかったからなんだがな・・・」

「どういうこと?」

 不思議がる鏡輔にダークは答えた。

「いや、誰だって大切な人が元気がなかったりしたら自分だって元気がなくなるものじゃないのか?他人が違うとしても、私はそうなってしまうんだ」

 そういってダークは歩き出す。

「・・・・ごめん、僕のせい?」

「そうだな、鏡輔の所為だ・・・一つ、約束して欲しい・・・」

 ダークはそういって鏡輔の手を掴んだ。

「・・・幸せそうな顔をしてくれないか?私は鏡輔の幸せそうな顔を見るとうれしいんだ。悲しい、苦しいときには私に相談して欲しい・・・相談に乗れないようなことがあっても、私は絶対に鏡輔を幸せにしてみせる・・・迷惑か?」

「・・・いや、うれしいよ・・・」

 鏡輔もその手を握り返す。

「・・・そうか、それなら・・・大丈夫だな。さぁ、帰るとしようか?」

「そっちじゃないよ。思ったより早く見つかったからまた、二人だけでお祭りをめぐろう?」

「・・・・そうだな・・・・」

 鏡輔とダークは手を取り合ってお祭りの喧騒の中に再び向かったのだった。

「・・・そういえば、四つ目の可能性ってなんだったの?」

「あ〜あれはだな・・・」

 黙りこんだダークだったが、意を決したように口開いて告げたのだった。


「・・・他の三人がわざと私のために席をはずしてくれた・・という自己中心的な考えさ・・・」


〜END〜


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