シルバEND:鏡輔とシルバ
さて、今回からそれぞれのENDとなっています。読み終わったら感想を書いてくれるとうれしいです。
シルバEND
シルバがようやく鏡輔と合流できたとき、お互い非常に体力を消耗していたのだった。あたりは既に帰宅を始めている人たちが多いのか、人の流れは止まることなく、出入り口となっているところへと向かっている。この辺りではとても有名なお祭りらしく、警察までが出てきている。
「・・・・はぁ、何とか鏡輔さんに会うことが出来ました」
古びたブランコに座ってシルバはそんなことを呟いていた。
「いやぁ、正直このままばらばらに帰ることになるのかと思ったけどよかったよ」
その隣のブランコに座っている鏡輔は何度か足を踏まれたのか足をさすっていたのだった。
「鏡輔さん、怪我しているんですか?」
「怪我・・・どうかな?何度か踏まれたけどどうってことないよ?だから怪我とは・・・おわっ!!」
いきなり足を掴まれバランスを崩した鏡輔は危うく後頭部から地面に着陸するところだった。このままいっていたら足の怪我よりも大変な事態になっていたかもしれない。
「・・・・あざになってます。ほら、すねのちょうどした辺り・・・」
「そう?それより僕・・・かなり危険な状況なんだけど?すね?すねより人間は頭のほうが丈夫だと思うんだ・・・」
何とかしてもとの状態に戻ろうと努力している鏡輔だが・・・・
「動かないでくださいね?動くとその足へし折りますよ?」
「マジ?」
そのさらりと言ってのけたシルバに恐怖しながら鏡輔はうなずいたのだった。
「さ、これで大丈夫ですよ」
鏡輔の足に包帯を巻き終えたシルバは鏡輔のほうを見た。鏡輔はシルバをまじまじと眺めている。
「どうかしましたか?」
「あ、いや・・・ありがとう」
「いえ、当然のことをしたまでですよ。仮に、私がこんな状況になったら鏡輔さんは当然こうしてくれるでしょう?」
「・・・・・」
黙りこむ鏡輔に不信感を表すシルバ。
「あの、してくれないんですか?」
「あ、いやねぇ・・・なんでもないよ。勿論、シルバが怪我をしたときは僕が包帯を巻いてあげる」
ちなみに、鏡輔が黙っていた理由は
「え、シルバって青痣できるの?体、僕より頑丈そうだから大丈夫だと思うだけどなぁ」ということを頭の中で考えていたからである。実際、彼が考えている以上にシルバは体が頑丈である。
「・・・怪しいです」
「いや、怪しくないヨ」
顔が笑っている鏡輔とジト目でそれを見ているシルバ。彼らの姿は光に照らされてムードはよかったのだが、いかんせん、状況的には二股をかけていたことをばれて彼女に追及されているような状況であった。
「あ、それよりさぁ・・・他のみんなを探さないと・・・」
その状況を打破すべく、鏡輔は立ち上がって歩き始める。
「待ってください!」
せっかく包帯をしてあげたほうの足をりんごを握りつぶすような感じでシルバは掴んだのだった。
「ぐっはぁ!」
鏡輔はそのまま前のめりに倒れそうになる。だが、シルバに支えられて何とか難を逃れたのだった。
「・・・せっかく二人ですから少しだけ、一緒にお祭りをまわりませんか?」
「・・・僕としては既に人ごみを回りまくったんだけどね・・・・」
「何か言いましたか?」
「いえ、何も・・・」
綿菓子を食べているシルバの隣を歩きながら鏡輔は夜空を見上げたのだった。
「・・・・どう?おいしい?」
「ええ、おいしいですよ」
シルバは財布を落としたそうだったので(中身は五百円あるかないか)お祭り代はすべて鏡輔が出し代えなくてはいけなかった。片っ端から食べているのでそろそろ鏡輔のお財布は役立たずになるかもしれない。
「・・・・いや、既になってるよ・・・」
「鏡輔さん、一緒におまいりしていきましょう?」
シルバは鏡輔の手を引いておまいりをしたのだった。しかし、そこでシルバの肩に手が置かれたのだった。振り返るとそこにはちゃらちゃらした男性と女性が立っていたのだった。
「あ、君たち・・・カップル?それならここでおまいりするのはやめたほうがいいよ?ここさぁ、カップルがお参りすると一年以内に分かれるんだって」
その二人はそういい残して去っていったのだった。
「・・・・親切に言ってくれたのはいいんだけど・・・大体僕たちカップルじゃないんだけどなぁ・・・・」
鏡輔がそういうと、遠くのほうから声がしてきた。どうやら他の三人がやってきたようだ。
「・・・・そうですよね、私たちはカップルじゃありませんでした・・・」
シルバはそういって鏡輔の手を掴んだ。
「・・・それなら、これから・・・これから私の彼氏になってくれませんか?」
そういうと鏡輔の元を離れて三人のほうへと走っていってしまったのだった。鏡輔はその場に立ったままほうけており、シルバの告白を聞いていた近くの男性が彼に言った。
「しっかりしろ、人生ってものはもっと厳しいぞ」
帰り道、三人が騒いでいる後ろのほうでシルバと鏡輔は黙って歩いていた。鏡輔は意を決したように言葉をひねり出した。
「シルバ、さっきのことだけど・・・」
「何でしょう?」
「僕のほうからもお願いしたいんだ」
「・・・よかった・・・」
「え?」
「いえ、何でもありません・・・これからも、お願いしますね?」
「・・・うん」
先を歩いていく三人においていかれないように鏡輔とシルバは手を取り合って走って向かったのだった。
〜END〜




