表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/20

第十二話:VS熊龍のラルド

十二、

 僕の目の前には右腕が取れたクマのぬいぐるみ(名前はラルド)が横たわっている。

「・・・・メス!」

「鏡輔、何もそこまで気合を入れてしなくていいんじゃないのか?」

「・・・雰囲気だよ、雰囲気!」

「まじめにやってくれ・・・・」

 ダークにたしなめられ、僕は彼女から裁縫セットを受け取る。

 何故、こんなことをしているかというと・・・・・


「あのねぇ、私のぬいぐるみさんが怪我しちゃったの!」

「そうなのか・・・・」

 ダークと共に帰宅途中・・・今日はシルバが風邪で休みなので彼女と一緒に文化祭の準備をしていた・・・一人の女の子がダークと話していた。何でも、この女の子はダークの知り合いらしい。

「私たちに任せてくれ。誓おう、君のラルドは“ぐれーどあっぷ”して君の元へ帰ってくる」

「本当?」

 うれしそうに聞いてくる少女にダークはうなずいた。

「無論だ!この私にできないことは少ないぞ!」

「うん、じゃあ任せる!」

 渡されていたクマのぬいぐるみは肩が微妙に裂けていて中から白い綿が出ていた。

 家に帰り、ダークは早速クマの緊急オペに取り掛かった。そのとき、僕はシルバの看病をしており、カオスは料理を作っていた。つまり、誰も彼女を見ていなかったのだ。

 事件が起こったのはそれから数分後・・・・・

「う〜ん」

「シルバ、君が下着姿で寝るから風邪を引くんだよ」

 そんなことを話していた僕たちのところへダークが血相を変えてやってきた。

「きょ、鏡輔!助けてくれ!」

「ど、どうしたの?」

「とりあえず来てくれ!」

 そのまま引きずられていき・・・・そこには無残に右腕が千切れているラルドが横たわっていた。

 そして、今に至る。

「・・・・できないのなら、早く他の人に頼めばよかったのに・・・・」

「この程度だったからできると思ってたのだ。別に、慢心していたわけじゃないぞ」

 そうやってぶつぶつ言いながらもダークはぬいぐるみを直している僕の隣に座っている。

「・・・・よし、終わり!」

 右腕を完全補修して僕は立ち上がった。

「ほら、直ったよ?」

「うむ、完璧だが・・・・何かが足りない」

 そうやってなにやら唸っているのだが・・・それを放っておいて僕は再びシルバの元へと向かったのだった・・・・それがいけなかったことに気がついたのはそれから十分後・・・・

「シルバ、そろそろ夕飯だけど大丈夫?」

「う〜ん、正直つらいですけど・・・食べておかないと治りませんよね?」

「そうだね、食べておいたほうがいいと思うよ」


ガシャーン!!


「・・・・ちょっと、行ってくるね」

 僕はダークのいる部屋と向かったのだが・・・・

「ダーク?今度は何・・・ぐはっ!!」

 扉を開けるなり、ダークが僕にぶつかってきた・・・

「鏡輔か?助かったぞ・・・」

「・・・ダーク、あれ・・・何?」

 ダークを抱きしめるような感じでダークが飛んできたほうをみると・・・・そこにいたのは茶色で背中から黒い羽根を生やした化け物の姿だった。

「・・・実は、あの後私の力を使ってぬいぐるみにかけていたものを強調した結果が・・・あれだ」

 一体全体、何がかけていると思ったのだろうか?


きしゃー!


「・・・何を強調したの?」

「凶暴さ」

 なるほど、だからあの化け物はこちらをにらみつけているというわけだ・・・・

「・・・完成したら急に襲い掛かってきたのだ。どうにも、一人じゃ勝てそうにないと思って奴の尻尾で飛ばされたところに鏡輔がやってきたということだ」

 正直、あんな化け物と遊んでいられない・・・・・それに、二人で勝てそうな気がしないんですけど・・・・

「シルバは風邪だし・・・」

「カオスさんも夕食の途中だ」

「・・・ミストは・・・・そうだ、買い物にいったんだ」

 だんだんとこっちにやってくるラルド(覚醒バージョン)はかわいらしかったあの目を恐ろしい瞳に変化させている。

「く、こうなったら・・・・やるしかない!」

「よし、それなら・・・・・とりあえず、広い場所に連れて行こう!」

 そのまま窓から飛び降りて(僕はダークに抱えられ)追いかけてきたラルドを広い場所である公園に誘導。辺りは既に暗くなっているので人影が見えない。

「・・・吼えたらどうしようか?」

「そうだな・・・一応声帯は持っていないと思うがな・・・困ったものだ。鏡輔も何かいい知恵がないのか?お前も共犯者だろう?」

 うん、これってどう考えてもダークが悪いよね?僕はどう考えても被害者だよ。

 今のところは相手の力量を計っているのか知らないが、様子を見ているラルド。龍の力をもってしてもさすがにあれはきついとダークがいっていたとおり・・・強そうだ。

「・・・・ダーク、何か方法はないの?」

「なくはないが・・・ちょっと、隙ができるからな。その隙を突かれたら少々危険だと思うぞ。だが、それならばあのラルド君を討ち取ることは可能だろう」

 絶対的な自信を持ってそんなことを言っているので・・・・

「それなら、僕が囮になるよ!」

「いや、困ったことにこの技は鏡輔がいないと使えないからな・・・・今のところはにらみ合いが続くと思ってくれ。もしかしたら相手の弱点を理解することができるかもしれんからな」

 そういって相手を見据えるのだが・・・・それもどうだろうか?素直にミストとかが応援に来るのを待ったほうがいいような・・・・・


それから、三十分後・・・


「・・・動かないね?」

「そうだな、どうかしたのだろうか?」

「電池がきれたのかな?」

「まさか・・・相手はぬいぐるみだぞ?ぬいぐるみに電池を入れたりしないだろう?」

 石を投げてみると・・・・


うお〜!


「ほ、吼えた!」

「なぜだ?」

 動くには動いたのだが・・・・・状況は悪化!目の前の敵をすべて地獄に宅急便で送りますという顔をして僕らに突っ込んでくる。

「・・・まったく、先輩たちは何をしているんですか?」

「ミスト!」

 そのラルドの前に立ちはだかってミストが木刀で相手の脳天を叩く。

「・・・しめた!ミスト、そのままラルド君をおびき寄せていてくれないか?私はちょっと鏡輔とともにそいつをしとめたいからな」

「なにやらわかりませんが・・・・とりあえず、こんな化け物を相手にするのは少々つらいということを覚えておいてくださいね」

 ミストは相手の背後に回って今度は竹刀を叩きつける。

「さ、鏡輔・・・覚悟はできたか?」

「覚悟って何の?」

「とりあえず、ラッキーだと思ってくれ!」

「ダーク・・・んっ!な、何を!」


地面から現れた謎の影・・・それはラルド君をあっという間に飲み込んだ。


「・・・・す、すごい・・・」

「一体全体・・・これは?」

「これか?これは私と鏡輔の力だな。契約者との“ふれんどしっぷ”によって力を使えるのだ。いくら、あの化け物が強かろうが・・・・こうなったらおしまいだな」

 そういってダークは面白くなさそうに残ったラルド君の羽を見る。

「・・・・鏡輔、ぬいぐるみどうしようか?」

「・・・・あの子になんていおうかな・・・・・」

「よし、これからぬいぐるみの作り方を勉強して私と鏡輔でぬいぐるみをつくるぞ!」

 そういって僕を引っ張っていくダーク。

「・・・・ミスト、悪いけど先に帰っておいてくれないかな?あと、ちょっと今日は帰ってくるのが遅くなるってカオスだけでいいから伝えておいて・・・・」

「目指すは図書館だ!」

「わかりました、なにやら事情はよくわかりませんが・・・・・ご健闘を!」




「ありがとう、お姉ちゃん!」

「いや、何・・・この程度私の手にかかれば朝飯まえだ」

 そういって胸を張るのはいいのだが・・・・・その隣に立っている僕はすでにぼろきれ状態なのだ・・・・・ふふ、僕を使ってクマのぬいぐるみが作れるかもね・・・・あの後、本当に図書館にやってきて『蛇でもできるぬいぐるみ』を読破。その後は材料を買ってきて白いクマのぬいぐるみを作ることになったのだが・・・・・いかんせん、僕らは初心者で・・・・ぬいぐるみができた頃には既に朝になっており、白かったはずのクマのぬいぐるみはところどころ僕らの血を吸っており・・・・なんとなく、怖いものになっていた。

「どうかね?」

「うん、とくにこの赤いのがいい!」

「そうだろう、これは私たちが夜通しで作り上げたものだからな。いわば、われわれの子供なのだ」

 辺りのおばさんが僕を見てひそひそと話している。ち、違うんです!ダークな、なんてことを・・・

「・・・・ダーク、早く帰ろう?」

「ん?そうだな・・・じゃ、ラルド君弐号をよろしくな」

「わかったよ!」

 元気いっぱい笑っている子供に背を向けて・・・・僕らは帰宅し始めたのであった。

「・・・鏡輔、ぬいぐるみの件ではかなり世話になったな」

 いきなりそんなことを言ってくるダークだが、僕は別に世話をした・・・とは思っていないので答えに困った。

「・・・え、いや・・・別にいいよ。僕だってラルド君なんて珍しいものを見ることができたんだし・・・・」

「そうはいうが・・・・また、犬死しそうになったし・・・今だって足元がふらふらしてるぞ?」

「・・・・これはね、ちょっとばっかり文化祭のことを考えていてね・・・・とりあえず、大丈夫、僕は別に怪我してもないし、健康だよ」

 足を叱咤し、僕は走り出す。

「あ、待ってくれ!」

「ほら、早く帰るよ!」

 僕はダークの手をとって・・・・・


『全く、本当に元気ならいいんだが・・・・』


「・・・・」

 再び、誰かの声をきいたのだった。この前と同じではなくまた、別のもので・・・・僕はその声を聞いてなんとなく、安らぐことができたのだった。


 そして、ぬいぐるみの事件もきちんと終わりを向かえ・・・・文化祭まであと数日となったある日・・・また、別のことが起こったのだった。


少々、間が空いてしまったことにお詫びを申し上げたいと思います。自分としては今のところこの物語は二十話ほどで終わる予定なのですが・・・・反響があれば、続けたいと思っています。それでは、不定期の次回予告・・・次回は順番的に言ってカオス中心で行きたいと思います。そして、今回影に呑まれてしまったラルド君はどうなってしまったのでしょうか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ