第五十一話 燃える水を求めて
更新が遅れに遅れてしまい、この様な駄作を読んでくださっている方々には真に申し訳ありません。
それでは、どうぞ。
西暦二五七〇年/ブリストン暦四五六年 射手の月(九月)二十日
フランシナ帝国 帝都パリジェス郊外 エデン軍フランシナ帝国派遣軍駐屯地
「………石油?」
「はい」
「リアクター用のソリッドハイドロゲンチップやらアンチマターリキットフューエルやら、挙句の果てには魔法やら何やらを習得したというのに、化石燃料ときたか」
アレスがいるのは、パリジェスの郊外に設営されたエデン軍派遣部隊の駐屯地、その仮設指揮所だ。アイレセン攻略の際にも仮設指揮所として用いられた、コンテナ型の簡易指揮所である。
今この場にはアレスをはじめとしたレンディ、ルーサーなどのエデンの首脳陣が集まっている。もちろんアレスの秘書官であるマナもいる。
集まったアレスたちの前にあるのは巨大なホログラフィックスクリーン。そしてそこに表示されているのは、エデンの残存物資に関する情報だ。
食料は、エデンの生産プラント(工場でレーション等を作っている訳ではなく、農場や農園、養殖場等の総称である)の自給率はほぼ1100%なので、選り好みはできないが問題無い。
電力も、核融合炉の燃料は30年はもつ。
様々な生活物資に関しても、ほぼ100%に近いリサイクル率によって問題は出ないと思われる。
唯一にして最大の問題は、化石燃料だ。
エデンの様々な車両は戦車に至るまで、そして攻撃ヘリまでもがバッテリー、つまり電力で動いている。
しかし、唯一化石燃料を用いるものがある。A-20攻撃機だ。
「地球といつ接続が復旧するのかが分からない現状、戦力は常に最大限を整えていなければならない」
「勿論、航空燃料に備蓄はあるが…」
当たり前だが、攻撃機はその性質上、燃料を莫大に消費する。
そして、地球との接続が途切れてから既に何度か出撃してしまっているので…
「……残量はどれほどと?」
「攻撃機10機を満タンにする分。つまり一個飛行編隊を2回出撃させる分だけです」
「そいつは…マズいな」
慈悲もクソも無い宣告に、頭を抱える一同。
しかし嘆いていても燃料が増える訳ではない。
「…無い物は仕方が無い。無くても必要ならば代替品を見つけるしかないだろう」
「そうだな。航空燃料というか、つまりは石油が手に入れば精製ぐらいは出来るだろう?生物の死骸が変質した物なんだから、この世界にだってあるはずだ」
「だろうな。それじゃ、当面の問題は石油探しという事で。はい、かいさ~ん」
レンディがパンパンと手を打ち、ゾロゾロと各自動き始める。
エデンの会議は、いつもこんな学級会の様なノリであった。
「探すといっても、地下にある物をどう探せと…。この世界の科学水準ではまだまだ石炭すら使われていないから、市場に出回ってもいないだろうしな…」
エデンに大使館代わりとして貸与された宿舎の廊下を歩きながら、アレスは呟く。
そもそも彼の専門分野は戦闘だ。こんな小難しい事はレンディなどの他の優秀な奴らに任せていればいいのだ。
そう考えて石油の事を一旦忘れようとした、その時。廊下の角から銀髪褐色のメイドさんが出てきた。
「あら?ご主人様」
「リリアナか」
アレスのハーレムメンバー(笑)の一員である元魔族のメイドさんは、一度恭しくお辞儀をするとさりげなく距離を詰めてアレスに密着する。
振りほどきたい所だが、もう諦めの境地に入ったアレスにできる事は哀愁漂う溜め息をつく事だけだった。
「………フゥ………」
「ご主人様?何かお困りのようですが、先程の会議でどうかされたのです?」
アレスの溜め息は自分ノセイジャナイヨ、とでも言う風にリリアナがニコニコしながら尋ねてくる。
「ああいや、大した事じゃないよ。ちょっと面倒な探し物が決まっただけでね」
「何をお探しで?私が力になれる事があるかもしれません」
「いや、多分聞いた事は無いと思うよ。『セキユ』っていうんだけど」
「『セキユ』、ですか?」
アレスたちエデンの人間はこの世界の言葉を完璧にマスターしており、普段は意思疎通に欠片も問題は無い。だがこの場合、『石油』という言葉そのものがこの世界に存在していないので、リリアナには上手く伝わらなかった。
リリアナはしばらく考え込んだ後、申し訳なさそうな顔になる。
「………申し訳ありません、『セキユ』という物は聞いた事も無いです」
「まあ、そりゃそうだ」
「お力になれず……」
「いや、仕方が無いさ。この世界にはまだ必要の無さそうな物だしね」
「その石油とは、一体どのような物なのですか?」
「地球で使われる燃料だよ。薪の代わりだな。でも薪みたいに固体じゃなくて液体で…」
「液体、ですか?」
アレスの言葉を遮り、リリアナが声をあげる。
「え?ああ、液体で………リリアナ?」
「液体の…燃料………燃える水…」
何事かをブツブツと呟くリリアナ。
そしてしばらくして、リリアナはゆっくりと顔をあげた。
「ご主人様。その『セキユ』という物に、心当たりがあるかもしれません」
「え?」
「これはこれは、レックス陛下。ようこそおいでくださいました」
フレンドリーに接してくるお髭のおじいちゃんは、ルクオール・(略)・フランシナ。フランシナ帝国の皇帝で、アレスは今、彼の応接間を訪れていた。
「して、この度は何用で?」
「実はフランシナ陛下にお力を借りたい事がございましてこの度は参らせていただきました」
「ほう、私の。微力ながら、是非ともご協力させていただきましょう」
ただでさえアレスたちエデンに借りが多過ぎる現状である。まだ内容も聞いていないのに、随分と良い顔で快諾してくれた。
「ありがとうございます。その前に陛下、1つお尋ねしたいのですが、カブ・ラーン砂漠のスハク首長国はご存知ですよね?」
「この国の西方にある大砂漠と、そこを領土とする国ですな?勿論存じております。国家間の交流もありますよ」
「では、その国で時々湧き出ているという『燃える水』の話は?」
「聞いたことはあります。油でもないのに燃える液体があると。しかし黒くドロドロしていて悪臭が強く、なのにそれほど良く燃える訳ではないと利用価値が無いそうですが」
ルクオールの言葉を聞いて、アレスは顔がニンマリとなる事を抑えきれない。
「フランシナ陛下。是非ともスハク首長国と我がエデンとの橋渡しをしては頂けないでしょうか」
一足遅いアレスたちのバカンスは、海でも山でもなく、まだ見ぬ異世界の砂漠に決まったようだ。
何か最近ヒロインのヤンデレ要素が無いね?との指摘を頂きました。………面目次第もございません。
また更新がいつになるかは分かりませんが、まだ続かせます。気長にお待ちください。




