第三十五話 スネーク失敗⇒戦闘
メタルギアでは、わざと見つかって戦闘に突入するという、ゲームのコンセプトに真っ向から立ち向かう(アホな)作者。
西暦二五七〇年/ブリストン暦四五六年 射手の月(九月)九日
フランシナ帝国南端 アイレセン
「「「ソード・レイン!!」」」
再び詠唱の声が響き、アレス達三人目掛けて、空中に出現した数百本という数の剣が降り注いでくる。
「チッ、避けろ!」
アレスの言葉で三人は転がりながら回避し、剣は全て外れた。
しかし、体勢を立て直そうとした、その瞬間。
「「「サンダー・レイン!!」」」
「ぐわっ!」
「ゴースト3!?」
降り注いだ雷がボビーのM250機関銃を直撃し、ボビーは銃を取り落としてしまう。
当然、拾おうとするボビーだが、
「「「ソード・レイン!!」」」
地面に落ちた機関銃の周りを囲む様に剣が降り注ぎ、ボビーは拾おうと延ばした手を引っ込めざるを得なくなる。
「大丈夫かっ、ゴースト3!?」
「はい、負傷はありません!しかし、メインウェポンを失いました!」
他の二人がそれぞれのメインウェポンを構える中、ボビーは腰のホルスターからサブウェポンのハンドガン、M98Fベレッタを抜いて構える。
油断無く周囲を見回すアレス。
周囲にいるのは、合計十八人の魔族。その全員が禍々しい長杖を持ち、真っ黒なローブを顔が隠れるように着込んでいる。
更に特徴を掴もうとした、その時。
「「「ファイアー・レイン!!」」」
魔族三人の声が響き渡り、空中に直径三メートル程の火球が生じる。
「避けろっ!」
アレスの叫びとほぼ同時にライルとボビーが動き、直後に火球から数百本という矢の形をした火が放たれた。
初動が早かったので直撃はしなかったが、この火の矢は先程までの剣や雷の雨とは違い、地面に着弾した瞬間に爆発した。その爆風で三人は吹き飛ばされ、アレス以外の二人はロクに受身も取れずに地面に叩き付けられる。
「グッ!!」
「かはっ!!」
かなり勢いよく叩き付けられたらしく、二人とも、すぐに起き上がる様子は無い。
「ゴースト2、3!くそっ!」
魔族達が続けて詠唱を行おうとしたので、ライルとボビーが体勢を立て直す時間を稼ぐ為、アレスがM34を横薙ぎに掃射する。
ロクに狙いを定めていなかったので、魔族達はヒラリと避ける。だが、目的である時間稼ぎは成功し、ライルとボビーは起き上がって武器を構え直していた。
「すいません、隊長!」
「助かりました!」
「いいから敵に集中しろ!来るぞ!」
アレスの言葉通り、魔族が再び杖を掲げ、詠唱を行う。
「「「ソード・レイン!!」」」
空中に出現し、降り注ぐ剣。
ライルとボビーは横っ飛びして回避するが、アレスは今度は違う行動を取った。
剣を限界まで引き付け、前方に転がる。即ち、前転回避したのだ。
すぐ背後の地面に、ズシャズシャズシャズシャズシャ!!と剣が突き刺さる音を聞きながら、アレスは体勢を立て直してM34のトリガーを引く。
「「「………!?」」」
突然の行動に驚いたのか、狙われた魔族は先程のスマートさとは程遠いドンクサさで回避する。
その際、三人組で動いていた魔族の内の一人が他の二人から離れた。それも、アレスから十メートルも離れていない距離だ。
チャンスを逃すまいと、アレスはナイフを抜き、孤立した魔族に飛び掛る。
凶刃がその喉を掻き切る、その直前。魔族がアレスに手の平を向け、殆ど悲鳴の様な声で叫ぶ。
「そっ、ソード・レインッ!」
魔族が詠唱を終えるよりも早く殺すつもりだったアレスだが、間に合わなかったので横に回避しようとする。しかし、魔族の前方の空間から出現して、アレスへと射出された剣は、
「二本?」
先程までは何百本となく撃ち出されてきた剣が、目の前の魔族からはたった二本しか撃ち出されなかった。
恐怖で集中力が削がれたのか、他の原因なのか、理由は分からない。とにかく、一瞬驚いたアレスだが、すぐに立ち直る。そして、回避をやめて突っ込む事を決めた。
先程は数百本とあったから万が一を考えてできなかったが、たった二本程度ならば、間違いなく迎撃できるからだ。
「セイッ!」
目前まで迫った剣を、ナイフを鋭く二閃して弾き飛ばす。
そのまま、ナイフを魔族へと向ける。
「ひっ、ひいいいっっ!ソード・レイ………ゴブウェッッ!?」
再び剣を放とうとした魔族だが、それよりも早くナイフの刃が喉を捉え、首の傷口と口の両方から大量の血を吹き出しながら絶命する。
「まずは、一匹っ!」
そう叫んだアレスの後方から、
「「ソード・レイン!!」」
詠唱と共に、風を切る音がする。
バック転の要領で宙返りして避けるアレスだが、飛び上がった自分の眼下を剣が通り過ぎる時、奇妙な点に気付いた。
「また、減っている…?」
通り過ぎた剣は、先程殺した魔族の二本よりは遥かに多いが、最初の数百本とは比べ物にならない。精々、十数本といったところか。
「(最初の数百本を三人で………。その後、一人だと二、三本程度。二人で十数本。まさか………?)」
剣を回避したアレスは、攻撃せずに素早く部下達のもとへと戻る。
岩陰に隠れていたライルとボビーと合流し、端的に自分の考えを述べる。
「隊長、だいじょう………」
「奴等を簡単に倒す方法が見つかったかもしれない。手伝え」
「ぶですか………。え?あ、はい。分かりました」
「それで、何をすればいいんで?」
「「「サンダー・レイン!!」」」
「「「ファイアー・レイン!!」」」
隠れている岩に魔族達がバカスカ魔法を撃ち込んでいるので、だんだんと岩が削られてきているのを感じる。それを無視して、アレスは腰のポーチをゴソゴソして、目当ての物を見付けた。
「今からこれを使う。発動後に俺が飛び出すから、お前達も続いて飛び出して、手当たり次第に撃て。それでどうにかできると思う」
「了解しました」
「了解」
二人が頷いて銃を構えたのを確認して、アレスはそれからピンを抜き、岩の向こう側、魔族達の方へと投げる。
十センチ程の、緑で塗装された金属缶。ジリリ、と音を立てながら地面に落ちたその物体、音響閃光手榴弾は、次の瞬間、凄まじい光と音の奔流を吐き出した。
「ぐわああああああっっ!?」
「ぎゃああああああっっ!!」
「眼がああっっ!!」
「み、耳がっ!耳があああっっ!?」
予想通り、お約束のセリフが魔族の口から飛び出した。
魔族の半分は飛行の魔法まで解けてしまったらしく、地面に落ちてのた打ち回っている。残りの半分はまだ飛んでいるが、視覚、聴覚、そして冷静さは奪われたらしく、ネズミ花火みたいに無茶苦茶な動きで縦横無尽に飛び回っている。本人がコントロールできている様には見えない。
魔族達は完全に大混乱に陥ってしまった。
しかし、特に負傷した訳でもないので、戦闘行動は継続できる。
「くそっ、ソード・レイン!」
「ソード・レイン!」
「ファイアー・レイン!」
「サンダー・レイン!」
無茶苦茶に放たれる攻撃魔法。十七人の魔族が好き勝手に撃ちまくっているので、岩陰から飛び出すのは逆に危険かもしれない。
先程までと同じ規模の攻撃ならば。
「ほら、そ~っと見てみな」
「はい。………ああ、成程」
「これなら大丈夫ですね」
岩陰から首だけ出して確認したライルとボビーの目に飛び込んできたのは、二、三本程度の剣を飛ばす魔族や、ピンポン玉サイズの少量の火を飛ばす魔族達だった。
「原理はよく分からないが、どうやら先程までの奴等の攻撃は、三人同時に放つ事で、相乗効果か何かが発揮されてあれだけの威力を誇っていたらしい」
「だから、さっき隊長が一人殺して二人になったら露骨に威力、というか規模が落ちて、一人ずつバラバラだと、こんなもんですか」
「ああ、予想が当たっていて良かった。それじゃあ、後は終わらせるだけだ」
そう言ってアレスが岩陰から素早く出て、ライルとボビーも続く。
いい的になってしまった魔族達を、アレス達は何ら躊躇無く撃つ。
パンパンパン
「ガッ、グゥ、アッ!」
パパパパパパパパパ
「ギッグガゲゲガゲガッ!」
ガガガガガガガガッ
「グガアアアアアアッッツ!?」
順に、9mmパラベラム弾、5.7×28mmスポーツ弾、6.0×45mmフルメタルジャケット弾が魔族の肉体を貫き、悲鳴と共に命が口から漏れ出していく。
そして、アレスがM34で最後の魔族の脳漿をブチ撒けたのを境に、周囲は静寂に包まれた。
「………終わった………か?」
「………ええ、恐らく」
周辺を油断無く見回し、敵の気配が完全に無くなったのを感じて、アレス達はリロードだけしてから武器を下ろす。
「さて、それじゃあ本来の目的である、アンノウンの調査に………」
『………た…ちょ………たい…う、………隊長!』
「うおう?ゴースト4、メルピアか?」
『そうです、隊長!』
暫く連絡がつかなかったメルピアとの通信回線が開いた。
しかし、メルピアの声はかなり切羽詰っている様で、アレスは眉根を顰める。
「どうした?何かヤバい事でも………」
『隊長!今すぐにそこから離れてください!危険です!』
「………おい、何があるんだ?」
『その周辺に、数百の魔族が接近しています!もう数分でそちらに到着します!急いでください!』
「はっ………」
メルピアの言葉に、アレスが素っ頓狂な叫び声を上げようとした、その時。
ガサササッ ガサガサガサッッ ズシンッ
「………どうやら、もうお越しになられたみたいだ」
周囲の林から、人型、小鬼型、大鬼型、獣人型、鳥人型、昆虫型、魚人型、その他色々と、多彩な魔族達が現れた。
「………こいつは、ちとヤバいかもしれない。ゴースト4、HQに連絡して………ゴースト4?」
『………………』
再び通信不良に陥ったのか、メルピアの声は全く聞こえなくなっていた。
長距離通信機はメルピアが担いでいて、アレス達はそれを介してHQと連絡を取るようになっていたので、メルピアとの回線が維持できない現状、アレス達はHQに連絡ができず、完全に孤立した状況と言える。
「………どうしたもんかね、こりゃ?」
本当は、魔族は一人でももう少し強い魔法が使えます。目が見えなくなって、集中力が下がっていた、という事で。
銃弾の規格は、M34だけ妄想です。他は実在兵器と同一。




