表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エデンの王  作者: Palerider
連合加入編
29/58

第二十六話 魔族の女

仲間増員!

ハーレムメンバー追加とも言う。

 西暦二五七〇年/ブリストン暦四五六年 天蝎(スコルピオ)の月(八月)二十三日

 エデン臨時最高統括府 最高統括官執務室



 コンコンッ


「入れ」


 アレスが執務室で書類仕事をしていると、部屋のドアがノックされた。

 入室許可を出すと、入って来たのは憲兵隊の隊長だった。


 憲兵隊はエデン防衛軍の一部門だが、その仕事は軍内の法規違反者を取り締まる事が主で、他にも治安維持的な事を業務としている。警察権と軍事権を併せ持つ役職なので、警察とも軍とも区別されている。


 そんな憲兵隊だが、彼等には今、通常の業務以外にもアレスからある業務を命じられていた。


「失礼致します。閣下、例の捕虜の件ですが」


「何かあったのか?」


 そう、憲兵隊は今、先の魔族侵攻の際の捕虜を一名監視していた。

 捕虜として捕らえて以降、原因不明の意識不明状態に陥っており、監視しながらも治療を行っていたのだが………、


「実はつい先程、魔族の意識が戻ったもですが…」


「ですが、どうした?」


 憲兵隊長が言い難そうに言葉を詰まらせる。

 しかし自分の職務を全うする正義感が強かったのか、あまり時を置かずに続きを口にする。


「逃亡しました」


「逃がした!?」


 素っ頓狂な声を上げるアレス。その声音には純粋な驚きの感情が込められている。

 と、言うのも、憲兵隊は通常の戦闘能力こそ並だが、この捕虜監視の様な類の任務における能力に特化しており、そういう類限定だが、アレスでさえ一目置いている連中なのだ。

 その彼等が捕虜の逃亡を許したという報告は、にわかには信じられなかった。


「どうしたって言うんだ?簡易的なモノだが対魔法講習も受けていた筈だろう?」


「それが、強力な催眠術の類の魔法を使われた様で、暴れ出した隊員達に取り押さえられている間に逃げられたと。交替の瞬間に魔法を受けた様です」


「フム、やはり魔族が使う魔法は通常の人類よりも上なのか…」


「申し訳御座いません」


 顎に手を当てて唸るアレスに、真面目な憲兵隊長が深々と頭を下げる。

 しかしアレスはゆっくりと首を振って憲兵隊長に向き直った。


「過ぎた事はしょうがない。で、その逃げた魔族の行方は?」


「は。二分前、魔法で外縁部防壁を飛び越えたとの報告が入っています。特に武力行使はせず、真っ直ぐに逃走を図っている様です」


「そうか。よし」


「閣下?」


 突然立ち上がって服を脱ぎ始めたアレスに、憲兵隊長が訝しげな声をかける。

 それを無視して服を脱ぐアレス。

 その下にはインナー、ではなく、『ジ・アトラス』の半身、乙零種身体能力超強化装備『ネフィリム』を着込んでいた。


「俺が行こう」




 数分後 エデン近郊 森



「はあっ、はあっ」


 森の中を走る、一人の女。

 鋭い雰囲気の銀髪褐色の美女は、つい先程まで意識不明でエデンに捕虜として捕らえられていた魔族だった。

 服装は病人服みたいなクリーム色の貫頭衣。ポニーテールにした銀髪を振り乱しながら疾走している。


「…チッ、魔力さえ充分なら…」


 そんな事をブツブツ言いながら走る女。

 今の彼女は百メートルを十一秒台ぐらいで走っている。しかし、彼女が森に駆け込む前、エデンの周囲一キロに広がる平原では、彼女は百メートルを七秒ぐらいで走っていた。魔力による身体能力強化だ。

 では何故、今の彼女はそれを使っていないのか。

 理由は簡単、魔力が切れてしまったのだ。

 一ヶ月ぐらいずっと寝たままだったのだが、それでは体力は回復しても魔力は回復しない。魔力は、覚醒状態(起きている状態)で魔力を使用しなければ回復する。

 ずっと気絶したままだった女は、戦闘時に消費した魔力が回復されていなかったのだ。

 それでも、混乱系の催眠魔法と防壁を越える為の風系統魔法、そして一キロ以上を高速で走破するぐらいの身体能力強化魔法を使用出来るぐらいの魔力が残っていたのは、流石と言うべきか。


 ともかく、女は逃げおおせた。今は走っているが身体能力強化は使用していないので、少しずつ魔力も回復している。魔力が完全に回復すれば、彼女は『ゲート』の魔法が使えるので、瞬時に魔族の本拠地に帰る事が出来る。


「はあっ、はあっ、早くあの方の下へ帰らなければ…」


 女は走りながらも、自分の仕える主人の事を思い出し、顔に喜色が浮かぶ。


「ああ、あの鋭い眼、キリリとした眉、スッとした目鼻立ち、引き締まった肉体。あの瞳で私の事を見て、あの逞しい二の腕で私を抱き締め、あの美しい朱色の唇で私の………デュフフフフ………」


 じゅるり、と涎を拭いながら笑う女。長時間意識を失っていた影響か、だいぶイッてしまっている。


 だからなのか、彼女は気付く事が出来なかった。


 後方から、凄まじい速度で迫り来る黒い影に。


「デュフフフうぐあっ!?」


 突然、天地が逆さまになった。投げられたと気付いたのは、背中を地面に強打した後だった。


「くっ、なにもの…あぐあっ!」


 慌てて起き上がりながら誰何するが、言い終わる前に首根っこを引っ掴まれ、近くの木の幹に投げつけられた。


「ぐ…うぐっ!?」


 再び強打された背中の痛みに耐えながらも、敵の正体を見極めようとする魔族の女性。

 だが、そうしようと顔を上げた瞬間、巨大な黒い手が彼女の首をガッシリと掴んだ。正確には、重厚な黒い鎧の篭手を装着した手が、首を掴んだ。


「くっ…はな…せ…!」


 強気に叫ぶが、声が引き攣る。それは何も、首が絞められているからだけではない。

 真正面に来た、その者の顔。

 フルプレートアーマー(全身甲冑)らしき物を身に纏っている様だが、その兜が。兜の、視界確保のスリットの部分がガラスの様な物で覆われ、更に青く輝いているのだ。

魔法による奇怪な装備品を身に纏う者が多い魔族でも、そんな鎧を見た事は無かった。


「………」


 鎧の男(?)は暫く女性の顔を見た後、無言で首にかけていた手を外し、女性を解放した。

 女性はしばらくゲホゲホと咽た後、


「ゲホッゲホッ…食らえっ!!」


 鎧の男に手の平を向け、そこから炎を槍を放つ。しかし、


「………」


 鎧の男が片手で軽くいなすと、炎は簡単に霧散した。


「なっ………!?」


 女性は絶句しながらも、風の槍、土の槍、水の槍と、残魔力が少ないながらも行使出来る最大限の威力の魔法を連発する。

 しかし、その全てが鎧の男によってことごとく無効化されていった。


「そ…そんな…」


 女性が驚いたのは、ただ魔法を無効化されたからではない。女性は魔族の中でもかなり高位に列せられる実力者なので、ただ無効化されただけでも充分驚きだが。

 女性が一番驚いたのは、鎧の男が、魔力を一切使用せずに(・・・・・・・・・・)魔法を無効化した事に対して、だ。

 鎧の男は、魔法を受け止めているのではない。魔法を消滅させているのだ。それは、鎧の篭手が全くの無傷である事からも窺い知れる。だが普通、魔法を消滅させるには同程度の量の魔力をぶつけなければならない。鎧の男からは、その魔力が一切感じ取れない。だから、打ち消せる筈が無いのだ。


 『全ての魔法には起動式が付随しており、それを正確に攻撃すれば物理攻撃でも魔法を消滅させられる』

 そう言ったこの世界(異世界)の剣豪がいた事を、鎧の男はイリーガルの書庫にあった文献で知っており、魔族の女性は知らなかった。


 魔力切れになるまで魔法を撃ちまくって荒い息をする女性を、鎧の男は無言で見下ろす。

 女性は暫く手を付いて息を整えると、鎧の男をキッと見上げた。そして、


「ああっ!くそっ!もう煮るなり焼くなり好きにしろっ!!」


 そんな事を叫びながら、完全に開き直って胡坐をかいて座り込む。

 簡素な貫頭衣で胡坐をかくと、なまじナイスバディな美人だけに、色々と目に毒な感じになる。しかし女性がそれを気にする素振りは見せないし、鎧の男が女性を見下ろす視線にも、劣情の色が混じる事は無い。


 頑として座り込み続ける女性。それに対して、


「いや、別に煮ないし焼かないから」


「へっ?」


 ゴツい大男という外見に合わない意外と繊細な声に、女性は思わず顔を上げる。

 そして見た物は、鎧の兜を脱ぎ、素顔を見せる若い男だった。


「お前は捕虜だ。こっちの世界(異世界)ではどうか知らないが、俺達の世界(地球)では捕虜の安全は保障されている。逃走しようとはしたが、こちらに特に死人は出ていないから、今大人しく捕まるというのなら………ん?どうした?」


 鎧の男、アレスは、捕虜の取り扱いについての説明をしながら、安心させる為に威圧感のある『ジ・アトラス』のヘルメットを脱ぐ。すると、女性からの視線が別の種類の物に変わったのを感じた。

 女性を見ると、眼を大きく見開いてアレスの顔を凝視している。

 肌が褐色なので分かり難かったが、よく見ればその頬は赤く染まっている様に見える。


「………おい?」


「………いい」


「え?」


「かっこいい………」


「………あ?」


 何事かをボソリと呟いた女性から、アレスは妙な気配を感じて少し遠ざかる。

 しかし、


「超タイプゥゥゥゥッッッッ!!」


「うおあああああああっっ!!??」


 胡坐の姿勢から、いきなりアレスに飛び掛った魔族の女性。

 殺気が無かった為にアレスは避けきれず、受け止める形となってしまった。

 そしてアレスの首っ玉にかじりついた女性は、


「あなた超好み!あの人(魔王)よりも鋭い眼、キリリとした眉、スッとした目鼻立ち!!私の好みどストライクッ!!愛していますわあああああっっっ!!」


「うわああああああっっっ!?何だお前、離せっ!!」


「お前じゃありませんわ、ご主人様!リリアナ・ファリオル!リリーとお呼び下さいませ、ご主人様っっ!!私、一生あなたにお仕え致しますわ!さあ、何なりとご命令をっ!!」


「いや、仕えるとか命令とか………ええっ!?」


「遠慮は不要ですわよ、ご主人様!ご命令とあらばこのリリアナ、夜伽でも夜伽でも夜伽でもいたしますわっ!さあ、何なりとご命令を!さあ!さあ、さあ、さあっ!!」


「じゃあ、まずは離れてくれえええええええっっっっっっ!!!」


 つい先程まで静かだった森の中に、リリアナの嬌声とアレスの絶叫が響き渡る。




 リリアナ・フォリオル。

 魔族の中でも、高位の魔法戦士にして、優秀な将軍。

 そして同時に、極度の面食いとしても有名だった。




第十一話のフラグを回収しました。

魔族の女性がハーレムメンバー入りは確定していたのですが、入れ方を悩んでいました。

記憶喪失とかも考えましたが、結局、後腐れの無いよう、この様な形に。

感想・指摘募集。評価してくださると、クオリティーと更新速度は上がりませんが一時間はオクラホマミキサーを踊り続けます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ