プロローグ
~プロローグ~
西暦二五四六年、人類は危機に瀕していた。
度重なる戦争、深刻な環境汚染、小惑星の衝突。それらの影響により、二六世紀、地球は限界を迎えようとしていた。
地球規模の環境再生を目的とした「リボーン計画」、地球を諦めて宇宙へと旅立つ「アーク計画」。そのどれもが失敗し、人類に残された道は滅亡一本にしぼられたかの様に見えた。
その時、奇跡は起きた。
ある科学実験中、偶然観測されたワームホール。通称ゲートと呼ばれる事になるそれは、地球とは空間的、時間的、次元的に異なる座標へと通じていた。そう、「異世界」へと。
人類の状況は切迫しており、最早一刻の猶予も無いと判断した人類連合は最低限の調査のみを行い、第一次移民団を異世界へと送り出した。
次の文は、その第一次移民団のメンバーが記した物である。
「青いゆらゆらとした薄膜を通り抜けると、そこには『世界』が広がっていた。木、草、湖、川。ライブラリでしか見た事が無い物が、私の周囲に無造作に存在している。先程から咳きが止まらない。屋外でマスクを外せば咳きが出るのは当たり前だが、理由が全く違う。我々の汚れきった肺が、清浄すぎる空気を受け付けないのだ。だが、何も問題は無い。これからじっくりと慣れていけば良い。今日からここが、私達の『世界』なのだから」
彼等はゲートに程近い川のほとりを拠点とし、居住地の造営を行った。
「エデン」と名付けられた町は、半年後に第二次移民団を受け入れる事で本格的に機能し始めた。
そして更に半年後。第三次移民団がやってくる頃、「二世」と呼ばれる事になるエデン生まれの子供、その一人目が誕生する。
全てが順調に進んでいるかの様に見えた異世界入植計画。しかし、当然問題もあった。
「先住民」。つまり、元から異世界に住んでいた者達との接触である。
調査の結果、先住民達の科学水準は極めて低く、精々地球の中世ヨーロッパ程度であると判明した。生活もそれ相応で、ほとんどの国家が封建制を布いている辺り、地球の歴史の再現の様でもあった。
しかし、この世界には地球と全く異なる点が一つあった。「魔法」の存在である。
何も無い所から火を起こし、水を操り、大地を揺らし、風を吹かせ、雷を落とす。空気中の「マナ」と呼ばれる特殊な素子を体内に通して発動されるそれらは、まさに魔法と呼ぶに相応しい物だった。
術者の技量によっては戦略級兵器に相当する未知の能力を前に、地球人類は慎重な接触を余儀なくされる。とは言え、本当に戦略級の術者はごく僅かしかおらず、基本的には地球の兵力の方が優秀であった為、入植は続いていった。
しかしそれは、前述の通り、異世界人類との全面戦争も辞さないほど、地球人類は窮地に追い込まれている事に他ならなかった。
それでも、初代エデン執政部長官の意向により、異世界先住民との友好関係構築を主方針として粘り強い外交政策が二〇年余り続けられた。
西暦二五六〇年代後半、異世界の暦であるブリストン暦では四五〇年代。異世界入植都市エデン総人口、約二〇万人。
はじめまして、輝岡と申します。
この作品、完全に趣味で書いております。しかも作者が現役高校生、更に現在高校三年生の為、超不定期更新でお送りします。最悪一ヶ月とか空くかもしれません。
このような駄作を読んでくださるという方々、どうか長ーーーい目で見守って下さい。