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六話  大体の物はパンに合う

 今日は土曜日。特にする事は無い。

 する事が無い日に限って早く起きてしまう。今は七時過ぎ、平日では嫌々起きる時間だ。


「永?起きてる?」


 階段の下から声が聞こえた。この声は姉さんだな。

 俺には三歳上の姉と二歳下の妹がいる。名前は姉が紅春、妹が冬香。姉はいつも家事をしてくれる。だから、親がめったに帰って来ないこの家では親の代わりみたいな感じだ。妹は……何もしてない。姉さんはかなり美人だ。妹も可愛い方だと思う。二人は血が繋がってるのか疑うほど俺と似てない。


「……寝てます」


「ふふふ、それなら降りてきなさいよ?」


「あいさ」


 ふぅ、自然に目が覚めたのに微妙に眠い。目を擦りながら階段を下り……。


「わっつぁ!」


 危ねぇ。階段を一段飛ばしちまった。


「大丈夫です?……永って、どうしてそんな変な声出すの?」


 姉さんがキッチンから顔を出した。


「大丈夫、大丈夫。何でだろうね」


 キッチンに入るとパンとパンに塗るマーガリン類がテーブルに上に並んでいた。


「何か作りましょうか?」


「じゃあ、お願い。あ、簡単なのでいいよ」


「はい、了解です~」


 それから数分後……いや、一分も経ってないか。スクランブルエッグがテーブルに置かれた。


「お待たせしました。どうぞ」


「えっと、それじゃあ……」


 パンにマーガリンを塗って、その上にスクランブルエッグを載せて。


「いただきます」


 うん、美味い。パンと卵って意外に合うよね。美味いって、なんで美味いって書くんだろう。美味をうまとは読まないだろう。……まぁ、どうでもいいんだけど。

 やっぱ、姉さんは料理が上手いね。さすがだね。さすがって流れる石だっけ?なんでこんな漢字なんだろう。……駄目だ、キリがない。

 なんて考えてたら食い終わった。キッチンから出てリビングに行く。


「ふぅ、暇だ」


「それじゃあ、冬ちゃんを起こしてくれません?」


 冬ちゃんとは冬香の事。冬香は朝が苦手で休みの日は大体寝てる。起こされるまで寝てる。起こされても起きない時もあるが。


「マジで?」


「嫌ですか?」


「いや、起きるまで待った方がいいんじゃない?少なくとも俺が起こしても起きないし。逆に俺が寝るかもしれん」


「そこまでではないでしょう?寝過ぎも体に良くないと思いますし、では私が行ってきます」


「そのうち起きて来るから、大丈夫でしょ?」


 すると、リビングのドアが開いた。


「ふぁ~ぁ、おはよ」


 目を擦りながら冬香がリビングに入って来た。


「おはよ、冬ちゃん。何か食べる?」


「うん。お願い、春姉」


 よかった、起こしに行く手間が省けた。むしろ、二度寝する事にならずに済んだな。

 どうでもいいが、姉さんは冬香を冬ちゃん、冬香は姉さんを春姉と呼ぶかは分からない。そして俺の名前に季節が入ってない理由も分からない。俺は季節で言うと秋くらいかな。本当にどうでもいいですね。

 これもまたどうでもいい話だが、俺は一度、名前の由来を親に聞いた事がある。その答えは確か、「そりゃ、お前が永遠に男でいてくれるように……」うんぬん。なんなんだよ。確かに性同一性障害、だっけ?そんなのあるけど、必ずしもなるとは限らないのに。いや、ならないとも限らないけど。そんな名前の由来って嫌過ぎんだろ。……本当にどうでもいい話でした。

 なんて事を頭の中で繰り広げていたら、姉さんが冬香の朝食を持ってきた。


「どうぞ、冬ちゃん」


「ん、ありがと。ふぁ~ぁ、ふぅ。……春姉、何これ?」


 冬香の前に出された皿にはパンの上にスクランブルエッグを載せた、つまり俺がさっき食べた物だ。


「それは永が、朝に食べてたから美味しいのかな?って」


「ひさ兄、こんなの食べたの?」


「こんなのってなんだよ。パンと卵って結構合うんだぞ。フレンチトーストくらい知ってるだろ?あれも卵使ってんだろ。それと同じだよ」


「フレンチトーストって、パンと卵だけじゃなかったよね?ま、いいけどさ」


「じゃあ、言うなよ」


「………!」


 冬香が驚いたのか、目が寝起きとは思えないほど開いていた。


「ど、どうした?」


「……美味しい」


「あぁ、そう。だから言っただろ」


「ううん、違う。パンに卵が合うんじゃない。春姉の料理はなんでも合うんだよ」


「ふふふ、買い被り過ぎよ」


「……お前はどんだけ俺のを認めたくねんだよ」


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