五話 テレる理由は人それぞれ?
午前中の授業が終わり、今はお昼で教室で昼食を食べている生徒がいれば、売店へ食べ物を買いに行ってる生徒もいて人はまばらだ。
「あ、一条君」
俺がいつも通り屋上へ行くために教室から出ようとしたら、高い聞き覚えのある声が呼び止めた。
「ん?あぁ、神楽木か」
「あの、朝の話の続きなんだけど」
「あぁ、俺昼食まだなんだけど、神楽木は?」
「僕もまだだよ」
「なら丁度いいや。今から屋上に行くんだけど、来る?」
「屋上?いいけど、何で?」
まぁ、その反応が普通か。
「佐々木も居るから分かりやすいんじゃない」
「え、佐々木さんも来るの?」
「来るはず。もしかしたらもう居るかも」
「そうなんだ。……本当にどんな関係なんだろう」
俺と神楽木は屋上に出た。
「あ、永~。もう遅いよ。何してたの?」
結衣が俺の方を向き言った。やっぱり、先に来ていた。
「まぁ、色々あって」
「えっと、こんにちは」
「あれ?確か君って学級委員じゃなかったけ?」
「はい。学級委員の神楽木海斗です」
「だよね。何で屋上なんかに来てるの?」
「あ、一条君にちょっと用があって……」
「ふ~ん」
そう言うと結衣は弁当を開け、食べ始めた。……俺が来るまで待っててくれたんだ。いつも先に来て食べてる自分が申し訳ない。
「あ、神楽木。その用なんだけど、結衣に聞いて」
「え、そんなの聞いていいの?」
「うん、俺はよく分からないから。答えは結衣に任せる」
俺は立つのに疲れ、結衣の隣に座った。
「え?何の話?まったく読み取れないんだけど」
結衣は俺と神楽木を交互に見ていた。
「えっと、佐々木さんと一条君はどういう関係なのかな~と思って」
「私と永の関係?」
「うん。昨日、佐々木さんが一条君と親しそうに話してたから」
そんな親しそうにしてたっけ?
「関係か~。一応付き合ってるかな。……って永、分からないはないでしょ!?永も了解したんだから!」
「ん?そうだっけ?結構一方的だったと思うけど。その前に付き合ってたの?」
俺も弁当箱を開けながらあの日の事を思い出してみた。
「そうだよ。生きる意味になってくれるんでしょ?」
「確かになるとは言ったけど、付き合うとは言ってなくない?」
「そうだけど。……永は私じゃイヤなの?」
結衣の声にどこか悲しさを感じた。
「イヤってわけじゃないけど、付き合う程なのか?」
「そう言われると付き合う程じゃないのかな?」
「付き合う、付き合わないは後でよくない?俺、そんな付き合うとかまだ分かんないし」
「あの、だんだん二人の関係を聞いた僕がバカみたいに感じてきたんですが」
「いやいや、神楽木は悪くないよ。ちゃんと決めてなかった俺達が悪いだけだから」
「そう?あ、それと生きる意味になるとか言ってたけど、あれって……?」
「あ、え~と。どこから話せばいいのかな。実は私ね、自殺しようとしてたんだ。そしたら、永が止めてくれて死ぬ気が失せたの。だから、その責任とってもらってるってわけ。まぁ、永が私の話を色々聞いてくれたり、話してくれたりしたからね。……っていうか永。何であの時私を止めたの?」
「ん?何でって何が?」
「だって永も死にたいって言ってたじゃん。死にたいって思ってる人が自殺を止めるのってなんか変じゃない?」
「あ~、そういう事。まぁ、気付いてなかったら止めなかったよ。その前に止めれないけど。でも、気付いて止めないなんて事俺はしないつもりだから。それに、俺は自分が死んでもいいって思ってるだけで、他の人が死んでもいいとは思ってないからね」
「ふ~ん」
「今では止めてよかったと思ってるけど」
「何で?」
「何でって、俺にも生きる理由が見つかったわけだし、二人がそれぞれの生きる意味になれたって言う事ではよかったんじゃない?最も、結衣と仲良くなれた事も正直嬉しかったよ。結衣が俺でよかったのか分からないけど、選んでくれてありがとう」
あれ?上手く日本語が繋がらなかった。
「なっ、なっ、何言ってんの!?バ、バッカじゃないの!」
結衣の顔が赤くなった。確かに変な日本語だったとは思うけど、変な事言ったかな?
「そりゃ、結衣と比べられたらバカだけど?」
「そういう意味じゃないの!まったく、……永だから頼んだのよ……」
「……何?」
「な、何でもないわよ!バーカ」
「なぁ、神楽木。俺何か変な事言っ……」
神楽木の顔も仄かに赤くなっていた。何で神楽木も赤くなってんの?
……わけが分かりません。