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プロローグ 後編

 あのあと、佐々木よりも早く昼食を食べ終わった俺は校内に戻り、校内を徘徊して時間を潰した。それから、午後の授業開始の5分くらい前に教室へ入り、授業の準備をした。

 今は授業の真最中だ。しかし、佐々木は教室に居なかった。彼女が授業をサボった事は今まで無かった筈。生徒は誰も彼女の事は見ていないらしい。その時俺は、彼女と屋上で話した内容を思い出していた。


〈あまり考えた事無かったけど……一条君と同じなのかな〉


 ……あの答えた時のあの表情は何だ?

 俺と同じ理由……?

 少し変な考えが頭に浮かんだ。そんな筈は無いと思ってみたが授業に集中出来なかった。

 気になった俺は佐々木の名は出さずに適当な口実で教室を抜け出し、屋上へ向かった。


 屋上の扉を音を立てないように静かに開け、屋上に出た。すると屋上を囲む柵を握って、空を見上げてる佐々木が居た。


「こんな所で何してるんですか?」


 佐々木が驚いたように振り返った。


「……一条君……君こそ何してるの?」


 佐々木は驚いた表情を隠し、少し微笑んだ。


「少し気になった事があって」


「そう。私は……」


「自殺しに来た、ですか?」


「………」


 その時風が吹き、彼女の髪を揺らした。

 また彼女の顔が驚きの表情に染まった。


「違いますか?」


「……よく気付いたね」


「………」


「私、生きる事に疲れたみたい。生きる希望も無く、生きる楽しみも無く、私を必要としている人もいない」


 佐々木は体の向きを変え柵に凭れかかった。


「生きる意味の無い、そんな私が死んでも誰一人困らない、そうでしょ?」


「だったら 、生きる希望も楽しみも、あなたを必要とする人を作ればいいじゃないですか」


「私だって色々考えた。そして何人かと付き合った。でも、どれも長くは持たなかった。全部が相手からの告白。そして別れを切り出すのも相手だった。こんなのオカシイよね。ねぇ、オカシイって言ってよ」


 佐々木は笑っていたが、目には涙を浮かべ、涙声になっていた。


「………」


「私が言われ続けた好きって言う言葉は薄いものなの。だから私を心から愛してくれる人は居ないのよ」


「だからって死ぬ事はないです。それに愛してくれる人はきっと居ますよ。多分今まであなたが選ばれる側だったからオカシイと思ったんです。だから今度は、あなたが選ぶ側になれば良いんじゃないですか?あなたが信頼できる人を、生きる意味になってくれそうな人を」


「じゃ、じゃあさ一条君。君が私の生きる希望に、意味になってよ」


 佐々木は指で涙を拭き、微かに涙声ながらも言った。


「……は?……え……へ?」


 今、何て言った?と言うかどうゆう意味?

 自分ではわからないが、かなりポカンとした顔をしているだろう。


「何回も言わせないでよ。一条君の言う事聞いてたら死ぬ気が失せちゃったの。だから、ちゃんと責任取ってよね」


「……責任って、何のですか?」


「……私にここまで言って信頼するなって方が不可能に近いっての……」


「……え?」


「はぁ、とにかく人にあんな事言っといて断るなんて論外よ?それに、あそこまで言うなら自分にだって出来るんでしょ?……ちゃんと私を愛してよね……」


「……えっと、最後の方がイマイチ聞こえなかったんですが」


「あぁもう、そんな事いいから。どうなの?生きる意味になってくれるの?」


「えっと、少し意味が……」


 あ、睨まれた。グダグダ言うなって事かな?


「え、あ、はい。分かりました。頑張ります」


 何を頑張るんだろ?


「うん。じゃあ、よろしくね。一条……ううん、永」


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