8・巫女は眠らない
初投稿の習作です。
お手柔らかによろしくお願いします。
推敲も重ねていくので随時、変更していく予定です。
基本は細かい修正ですが、今後のストーリーと整合性を持たせるためガラッと変更することもあります。ご了承ください。
地名はかなり適当なので変更するかもです。
とりあえずの終わり方はだいたい決まってるので、完走できるよう頑張ります。
感想など頂けると、とても喜びます。辛辣なもの以外で…
翌朝、ウィリアムは早くから店で出す料理の仕込みと自分たちの朝食の準備をしていた。
カウンター内のキッチンからは良い匂いが流れてくる。
朝の献立はベーコンエッグ、サラダ、スープ、パンと昨日の夕食とは打って変わり、簡単に済ませられるシンプルなものらしい。
そんな匂いに釣られてか、テュルソスを先頭に少女たちが奥の扉から姿を見せた。
まだパジャマ姿である。
一番に目につくのはやはり、テュルソスの頭だ。
寝癖なのだろう頭が大爆発している。
もう見た目は毛玉にしか見えない。
なにか新種の中型動物のようだ。
ここまで毛量があると大変そうである。
対するアイリーンは、俯いて顔が良く見えないが、ベリーショートのお陰か髪に変わりがない。
テュルソスは瞼をこすりまだ半分寝ぼけているようだ。
少女たちに気付いたウィリアムは、手を留めずに背中越しから2人に声をかける。
「おい!寝ぼけてないで、顔を洗ってこい!もうすぐ朝飯だぞ!」
少女たちは、はーいと、生返事しながら、扉の奥に引き返していく。
勇者酒場の洗面スペースは風呂場同様、温泉宿時代のものをそのまま使用しているので結構広く、5人くらいなら並んで使用出来る。
洗面所についた少女たちはゴシゴシと歯を磨き始める。
アイリーンも自分用の歯ブラシセットを持ってきているようで、マイブラシで磨いている。
歯磨きをしていると、テュルソスは徐々に目が覚めてきているようだ。
テュルソスは隣の少女に歯を磨きながら声をかける。行儀が悪い。
「あるはねむにゃた?(夜は眠れた?)」
枕や布団が変わると眠れない人もいると聞く。
自分はいつでも、どこでも、どんな体勢でも寝ることが出来る。
しかし、アイリーンはどうなのだろう?
きちんと眠れたか少し心配だった。
そんなことを聞かれたアイリーンだが、何を言っているのかさっぱりわからなかったが、なんとなくニュアンスで何を聞かれているか理解した。
(これが友達との朝の会話!)
なにをしてもいちいち感動しているようだ。
アイリーンは口を濯ぎ、タオルで口をきちんと拭いてから答える。
さすが、教団員は行儀を叩き込まれているようだ。
「は、はい。ち、ちゃんと眠れました」
嘘である。
アイリーンは嘘をつく時もどうやら吃るようだ。
実は昨夜は、友達が出来た喜びでテンションが上がり過ぎて、眠るどころではなかった。
思い出しては、枕に顔を埋め、足をバタつかせる。
そして、天井を見つめ、にへらと気持ち悪い笑みを浮かべ、また枕に顔を埋める。
このループを繰り返していたら、いつの間にか夜が明け始めていた。
それに気付いたアイリーンは慌てて布団を被り、羊を数え始めた。
昔からそうすれば安心して、どんな時だってすぐに眠れるのだ。
しかし、今回は違った。
脳内の羊が全てが、テュルソスに変化していた。
モコモコとした羊毛に包まれたテュルソスがアイリーンに向かって飛んでくる。
ルーちゃんが1人、ルーちゃんが2人、ルーちゃんが3人……ルーちゃんが100人!?
そこでもテンションが上がってしまって、全く眠れなかったのだ。
結局、2400人以上の羊型テュルソスに包まれニヤニヤしていると、コンコンとドアがノックされたのであった。
寝ぼけながらテュルソスがアイリーンがいる客間の扉をコンコンと叩く。
アイリーンはバタバタと部屋内で慌てていたようだが、しばらくして顔を覗かせた。
「お、おはようございます!ルーちゃん!」
「お〜は〜…」
いつも以上に間延びした声をだしながら、眠そうにテュルソスも挨拶を返す。
朝からアイリーンのテンションが高いとは思ったが、目覚めが良い方なのかな?と、特に気にすることはなかった。
そして、むにゃむにゃと下を向いていたので、アイリーンの顔をよく見なかったが、どうやらこれは正解だったようだ。
実は、この時のアイリーンの顔は、血走った目を見開き、ハァハァと口も緩み、鼻の穴も膨らんでいた。
それは自称乙女がするような顔ではないし、人様に向ける顔でも、ましてや友達に向けても良い顔ではなかった。
どちらかといえば、王都のスラム街の薬物中毒者たちの顔とよく似ていたと、
後日、今と同じ顔を直視してしまったテュルソスが、ガチ引きしてしまい、遠い目で語るのはまた別のお話。
閑話休題
顔も洗いさっぱりした少女たちは、ウィリアムが待つ酒場の営業スペースに戻って来た。
テュルソスの頭も通常状態に戻り、アイリーンの顔も若干怪しいが通常状態に戻っている。
巫女候補は厳しい訓練を積んでいるので、2.3日眠らずとも平気で活動できるようだ。
カウンターに近づくにつれて、良い匂いがしてくるのは2人共気付いていた。
カウンターの上には特に良い匂いを放つパンが大量に入ったバスケット等、献立内容はいたってシンプルだが量だけは非常に多い。
それを見たテュルソスは涎が垂れ始める始末で、早歩きというか、ほぼダッシュでカウンターに向かい、シュタッと椅子に座る。
その後ろからおそるおそる、アイリーンも椅子に腰掛ける。
どうやら、昨夜の夕食に続き、朝食をご馳走になるのを遠慮しているらしい。
ウィリアムにしてみれば、2人分が3人分…2.5人分いや2.2人分くらいに変わっただけだ。
特に手間もなにも変わらない。
気にするなと軽くアイリーンに声を掛ける。
「よし!揃ったな!じゃあ、いただきます!」
ウィリアムとテュルソスの大小コンビは素早く、焼きたてのパンを手に取りアチチと言いながら、齧りついている。
勇者酒場にはパン窯も設置されているので、毎朝焼き立てのパンが食べられる。
ウィリアムの作るパンは職人顔負けでとても美味しい。
平日の午前中、酒場の開店前に店先のスペースでパンを販売している。
もちろん売り子はテュルソスで、なかなか評判も良くすぐに売り切れる。
人気商品は羊パンで羊型パンにミルククリームが入った菓子パンである。
ミルククリームも自家製に拘っており、ウィリアムの自信作である。
このパン販売の売上が中々にばかに出来ず、勇者酒場の大事な収入源の1つであった。
アイリーンも昨夜同様、最初は2人の食事を見ていたが、今回は自分からパンに手を伸ばす。
もちろん食事前の聖句は忘れない。敬虔なことである。
それを牛乳をがぶ飲みしながら、見ていた大小コンビも安心顔だ。
しかし、アイリーンの食は細い。
このコンビと比べるのがそもそも間違いなのだが、彼らの五分の一も食べているだろうか?もっと少ないだろう。
まずはそこからどうにかしなければと、彼らは考えている。
方法はいくつかあるので徐々に試していこうと、アイリーンには見えないように、ニヤっと2人揃って悪い顔をしている。
アイリーン肉体改造計画の始まりである。
ウィリアムは痩せぎすな子供を見ると無視出来ないタイプで、ほぼ毎日街の浮浪児たちに作りすぎた残り物などを恵んでいる。
テュルソスもアイリーンを強きものにする為にまず必要なのは脂肪だと思っている。
そこから筋肉をつけ、強きものにしっかり育成するつもりだ。
2人がそんなことを計画しているとは、露とも知らず、アイリーンは美味しい食事が出来て、のほほん顔だ。
やはり、なかなかお話が進みません。アイリーンが自由過ぎます。最初はこんな子になるはずじゃなかったのに…。
因みに大小コンビは朝から常人の5倍以上は食べてます
なので、アイリーンはそれでも常人の8割くらいの食事量をイメージ
2人が食いすぎなのです。
次回は勇者と巫女関係のお話が出来ればと思います。




