7・変化
初投稿の習作です。
推敲も重ねていくので随時、変更していく予定です。
基本は細かい修正ですが、今後のストーリーと整合性を持たせるためガラッと変更することもあります。ご了承ください。
特に1.2.3話は変更しがちです。
地名はかなり適当なので変更するかもです。
とりあえずの終わり方はだいたい決まってるので、完走できるよう頑張ります。
星評価やリアクション、感想など頂けると、今後の励みになります。
どうぞお手柔らかに、よろしくお願いします
ウィリアムはカウンターの椅子に腰掛け目を開けながら、中空を呆然と眺めている。
しかし、よくよくみると眼球が凄い勢いで上下左右に動いているのがわかる。
かなりの不気味さである。
「良い湯だった…。さっぱり…」
そこにアイリーンとテュルソスが風呂から戻ってきたようだ。
2人はお揃いのパジャマを着ている。
事前にテュルソスが準備していたものだ。
元々は温泉宿屋だった時の備品をテュルソスが修繕しながら使っている。
各サイズ揃っており、なかなか重宝している。
ウィリアムが無反応なことに気付いたテュルソス。
「ウィル!このやろー…ボーとすんな…!」
尻にバシバシとパンチを入れ始める。
腰の入った中々良いパンチだ。
そこら辺の喧嘩自慢よりよほど堂に入っている。
殴られている大男はびくともしていないが。
程よい弾力があり、殴るとポヨンと反応が返ってくる。
徐々に楽しくなってきたテュルソスが、ウィリアムの尻をサンドバッグ代わりに、シュシュと言いながらステップも交えて、殴り続ける。
折角の風呂上がりの彼女が汗ばみ始めた頃、やっとウィリアムがテュルソスに気付く。
「おっと…すまねぇ。ついつい考え込んじまった。ん?風呂はもういいのか?」
やはり、テュルソスの打撃など、どこ吹く風であったウィリアムは何事もなかったように、小さな相棒に向き直る。
「うん…。良い湯だった…。ウィルもその加齢臭を洗い流すと良い…」
そこはかとなく酷いことを言いつつ、満足そうに頷いている。
アイリーンはテュルソスの後ろで驚愕の表情をしながら、このやり取りを眺めていた。
いったい今のやり取りのどこに驚くことがあったのか。
テュルソスのパンチのキレ、または中年男性の尻の柔らかさに驚いたのだろうか。
(今のウィリアム様の状態は…もしかして、瞑想思考法?)
瞑想思考法。
思考の並列化によって、別々の思考を同時に可能とする特殊技術。
習得には生まれ持った才能と長い修練が必要とされている。
人によって同時思考数はそれぞれであり、多い者は4っ以上の思考が可能とされる。
封印教団の秘匿技術である。
(教団の研究者様の中でも上級の方々が用いる思考方法だったはず…一度、先生がおこなっているのを見たことがあります。あなたはいったい何者なのですか?元勇者様でも異質過ぎます…)
只者ではないとは思っていたが、まさかここまでとは。
驚きを通り越して、疑いの目を向け始めるアイリーン。
それを不思議そうにテュルソスは振り返り見上げていた。
「どうしたの…?リン?怖い顔をして…」
ハッとして、テュルソスに硬い笑顔を向けるアイリーン。
「な、なんでもありません。ご心配おかけしました。ルーちゃん」
その様子を見てウィリアムはほうと感心する。
いつの間にか2人が打ち解けているようだ。
やはり2人で風呂に行かせたのは正解だった。
「おいおい。だいぶ仲良くなったじゃあねぇか。お二人さん!良かったな!お嬢ちゃん!」
バンバンとアイリーンの背中を叩きながら、茶化すように声をかける。
もちろん力加減は調整しているが、急にアイリーンが黙って俯いてしまった。
(やべー…力加減を間違えたか?嬢ちゃんガリガリだしな。あやまんねぇと)
「お、おい嬢ちゃん…」
「リンです…」
アイリーンが俯きながら、ボソっとなにか言っている。
この中年にはよく聞き取れなかったようだ。
「は?なんだって?嬢ちゃん」
ウィリアムは何気なしに少し屈みながら、彼女の顔に耳を近づける。
「リン!です!今日から私の呼び名はリンです!
ウィリアム様も是非、リンとお呼び下さい。というかリンと呼ばれないと私は一切返事を致しません。そこはご了承お願いしますね。あ、そうだ!今度先生にも私をリンと呼んで頂くようお伝えしないと、あ!良い事を思い付きました!明日手紙を書きましょう。ついでに現在の状況もお伝え出来ます。我ながら良き思い付きですね!」
すると、アイリーンはこの酒場に来てから一番大きな声、しかもかなりの早口で捲し立てる。
しかも満面の笑顔で。
ウィリアムもこの少女が急にこんな大きな声でしかもこんなペラペラと話し始めるとは思っていなかったようで、鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をしている。
「ど、どうした嬢ちゃん。頭でも打ったか?」
しかしアイリーンは急に絶望したような表情になり、無反応だ。
そして、じっと何かを訴えかける瞳でウィリアムを見つめている。
それを見たウィリアムは慌てて、ゴホンと咳払いし。
「お、おう。リンか…うん。いいんじゃないか…はは」
そう言われたアイリーンはむふーと満足そうに頷いている。
ウィリアムは気持ち悪い笑顔のアイリーンから目を逸らし、その横へ目線を移す。
すると我関せずと無視を決め込んでいるテュルソスがそこにいた。
ウィリアムからの視線に気付いたテュルソスもバツが悪そうにそっぽを向く。出来もしないのに口笛を吹く真似事までしている。
(おい!これはなんだ!さっきまでとは別人じゃあねーか?おまえなにをした?)
ウィリアムは小さな相棒へ口パクと目配せだけで意思を伝える。
それを受けたテュルソスも身振りと口パクで相棒の大男に意志を伝える。
(しらない…ルーのせいじゃない…)
確実にテュルソスがパンドラの箱を開けたせいなのだが、彼女は知らぬ存ぜぬでとぼけようとしている。
それがわかっているウィリアムはさらに追求する。
(おまえまたなにかやったな?いつも考えなしに行動しやがって!だからいつも考えから動けといっているんだ)
ぐっと痛いところをつかれたテュルソスだったが、自分は悪いことをしたとはまったく思っていない。
お店の閉店後、片付けながらチラッと見たアイリーンは、身体の線も細いすごく頼りない印象の少女だった。
あれじゃ強きものになれない。まずは脂肪が必要だ。まずはたくさん食べさせよう。
顔も整っているが、いまにも消え去りそうな、思い詰めた表情をしていた。
なぜ、そんな表情をしているかわからなかったが、笑えば素敵なのになと思った。
そんな少女をテュルソスなりに少しでも元気付けたいと思っただけだ。
そうだ!まずはこの少女と友達になろうと考え、行動に移したのだ。
ただアイリーンにとって、友達という存在が途方もなく大きかっただけである。
この場合どんな賢者だって予測不可能だろう。
テュルソスには罪はない。
(ただこの子と友達になっただけ…あとはホントわからない…)
友達という言葉を聞いてウィリアムも黙る。
なんとなく事情を察したのだ。
はーと、ため息ひとつテュルソスからアイリーンへ視線をまた移す。
アイリーンはニコニコと笑顔をこちらに向けている。ちょっと怖い。
「まぁ、なんだ…良かったなじゃないか。お前ら友達になれて…まぁもう遅いから子供は寝る時間だ。
俺も風呂入って寝るからよ。ルー客間まで案内してやれ」
疲れたようにウィリアムは締めようとする。
あとは責任をもってテュルソスにお任せしよう。
人はこれを丸投げと呼ぶ。
頷いたテュルソスはアイリーンを促して、奥の扉に向かう。
アイリーンはテュルソスの後にくっ付いて歩いていたが、あっ。と言いながらこちらに向き直り。
「おやすみなさい」
ぺこっとこちらに頭を下げて、テュルソスを追いかけていった。
おう。とアイリーンに手を振って2人の後ろ姿を見送ったウィリアムは、はぁと一息。
「今日は色々なことがあったぜ。中年には堪えるな…フン、明日から忙しくなるな…店はどうするかねぇ。まぁなるようになるか…。じゃあ、俺もひとっ風呂浴びてくるか」
ぶつぶつとひとりごちながら、奥の扉に消えていった。
なかなかお話しが進みません。お話しを書くってやはり大変です。キャラが動くって意味がわかりました笑。あれもこれもと大忙しです。特にアイリーンが暴走気味で少し自重しないとと反省。でも後悔はしていない。




