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勇者酒場  作者: 古太十三


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6/12

6・友達

初投稿の習作です。


推敲も重ねていくので随時、変更していく予定です。

基本は細かい修正ですが、今後のストーリーと整合性を持たせるためガラッと変更することもあります。ご了承ください。

特に1.2.3話は変更しがちです。

地名はかなり適当なので変更するかもです。

とりあえずの終わり方はだいたい決まってるので、完走できるよう頑張ります。

星評価やリアクション、感想など頂けると、今後の励みになります。

改めて、よろしくお願いします!


「なに…?」


テュルソスがアイリーンに問いかける。

アイリーンが先程から薄目でチラチラと自分を見ていることに気付いていたようだ。

アイリーンもまさか気付かれていたとは思っていなかったようで、慌てて下を向いている。


アイリーンは特に用もないようなので、テュルソスは自分が思っていたことを言ってみる。


「リンはもっとたくさん食べた方が良い…。痩せすぎ、そんなんじゃ強きものになれない…」


「え…り、リン?」


いきなり、別の名前で呼ばれたアイリーンはひどく狼狽している。


「うん…。アイリーンのあだ名。アイリーンだから…リン。可愛いでしょ…?裸の付き合いをしたのだから、私たちはもう友達」


(え…あ、あだ名?友達?…うそ?これは現実?それともいつもの夢?おお神よ?)


実はアイリーンの住んでいた村には同年代の子供がひとりも居なかった。

子供という年齢の子たちは一回りも上の子ばかりで、アイリーンが物心つく頃には既に村内で簡単な仕事をしている者ばかりだった。

たまに暇なお姉さんたちが遊んでくれたが、そう毎日というわけにはいかない。

一緒に遊ぶ友人などなく、母親にべったりになってしまったのは必然といえるだろう。

いつもの遊び相手といえば、牧羊犬のジョンとメイと羊たち。


封印教団に入信後は信者の姉弟を教育する学校に通うことになった。

その学校には同年代の子達はもちろんたくさんいたが、アイリーンは特別顧問、教団No.2であるマクスウェルの直弟子。

教師も同級生も腫れ物を扱うにようにしか、接してくれなかった。


アイリーンは生まれてから、同年代の友達が出来たことがない、生粋のボッチ、ボッチエリートであった。


友達に強い憧れはあった。

周りの子供たちは友達同士仲良くいつも楽しそうだ。

そんな姿をアイリーンは羨望の眼差しでこっそり眺めていた。

しかし、同時にアイリーンは自分には無理なことと諦めてもいた。

そもそも村人全員が知り合いの小さな村出身のアイリーン。

知らない人への話しかけ方がわからない、かなりの人見知りであった。

そんな理由で自分から周囲との壁を破って、積極的にコミュニケーションをとるなど考えられなかった。

しかも緊張してしまったり、焦ってしまうと昔から吃ってしまう癖があった。

それがとても恥ずかしかった。

信仰の力でその癖はだいぶ改善されたが、いまだに出てしまうこともある。

それに元々寒村生まれのアイリーンは勉強についていくのに必死で遊びどころではなかった。

努力の結果、最終的に首席まで登りつめたが。


(わ、私に、あ、あだ名?あの憧れ続けていた、夢にまで見た友達の証!あだ名!おお神よ!)


感激のあまり今にも天に召されそうな感覚に震えるアイリーン。

目を見開きながら固まっている。


「大丈夫…?リン?もしかして、嫌だった…?」


テュルソスが心配そうにアイリーンを見つめている。

ハッとフリーズから回復したアイリーンはブンブンと頭を横に振る。

振る度にば、バ、バ、バ、と水滴が飛び散る。

テュルソスの顔にも当たっているようで、目を瞑っている。

そんなことにも気付いていないアイリーンは頭を横に振り続ける。

そして、首振りをピタッと止めて、テュルソスの目を正面に見据えながら、彼女の両手を自らの両手でギュッと包み込む。


「いや!…ち、違います…嫌という意味じゃなくて…。そ、そう!私は今日からリン!リンと名乗ります!」


とテュルソスの両手を握りながら、鼻先が触れてしまいそうな距離まで顔を近づける。

そんなアイリーンの勢いに、いつもマイペースでなかなか表情が変わらないテュルソスも顔を引き攣らせながらドン引である。


それに気付いたアイリーンはパッと手を離して、す、すみません…と平謝りしている。

その顔も人に謝罪する顔ではなく、にへらという感じで若干気持ち悪い。

嬉しくて堪らないのだろう。


テュルソスは開けてはいけないパンドラの箱を開けてしまったのかと思い、不安を感じていた。


「それで、なんのお話ですか?て、テュルソスちゃん?」


アイリーンは初めての友達とあだ名の感動で我を忘れていたが、テュルソスが何か話していたことだけはなんとか憶えているようだ。

そして、おっかなびっくりテュルソスの名を呼んでみる。


「ん…ルーのことは、ルーで良いよ…。さっきは、リンは痩せすぎって言った…」


(ルーって愛称ですよね…え?と、友達の愛称まで呼べるのですか…す、凄い。これはもう親友と呼んでも過言ではないですよね?それとも家族?おお神よ!で、でも、ルー?ルーちゃん?いきなりルー呼びするのも…)


またアイリーンがフリーズしているのを見たテュルソスは、今度も突飛な動きをするんじゃないかとビクビクしている。

そのアイリーンは全てが初めての経験で、友達の愛称の呼び方すらわからない。ぐるぐると悩んでいた。


しかし先程とは違い、意外にも静かにフリーズからの再起動をはたす。


「そ、そうなんですね。る、る、ルーちゃん。でも教団員のみなさんもこれくらいですので、これが普通だと思っていました」


アイリーンは、初めての友達の愛称を呼ぶことに緊張しながらも、自分の全身を見渡す。

先程まで恥ずかしがっていた姿が嘘のようである。

これが友達(親友)効果なのだろう。


今度は多少まともな反応が返ってきたことにホッとしたテュルソスは、実は親友認定されていることなど露とは思わずに、じっとアイリーンの身体を凝視する。


「うん。リンは痩せすぎて、本来のポテンシャルを活かしきれてない」


特に腕回りはガリガリだ。それでは正常な上腕二頭筋は育たない。

テュルソスはアイリーンを強きものにするために的確なアドレスを行なおうとする。

しかし、アイリーンは何を勘違いしたのか、頬を赤く染めて、モジモジしながら。


「た、確かに、ルーちゃんほどお胸は大きくありませんし、お尻も小さいですし…」


なにか勘違いしてるようだ。

テュルソスはすでにちょっと面倒臭くなってきてるので訂正する気もないようだ。

それにどんなことと勘違いしてるのか、あまり聞きたくない。


(うん…。面倒…)


そうしてテュルソスは早々に思考を放棄したのであった。

改めて自分は恐ろしい化け物を生み出してしまったんじゃないかと恐怖を感じながら。

なかなか良いお風呂回だったはず…


ボツエピソード

テュルソスは髪にシャンプーをつけてゴシゴシと、洗い始める。

するとみるみるうちに泡立っていく。

モコモコモコモコモコモコモコモコモコモコモコモコモコ。

モコモコモコモコモコモコモコモコモコモコモコモコモコ。

浴場内が泡で満たされていく。

アイリーンは泡の中で溺れそうになり、意識が遠のく。

なぜか自分がばい菌なった幻覚をみながら。


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