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勇者酒場  作者: 古太十三


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3/12

3・少女の追憶

初投稿の習作です。


推敲も重ねていくので随時、変更していく予定です。

基本は細かい修正ですが、今後のストーリーと整合性を持たせるためガラッと変更することもあります。ご了承ください。

特に1.2.3話は変更しがちです。

地名はかなり適当なので変更するかもです。

とりあえずの終わり方はだいたい決まってるので、完走できるよう頑張ります。

星評価やリアクション、感想など頂けると、今後の励みになります。

改めて、よろしくお願いします!

あれはいつの頃だっただろう。

もう遠い記憶のような気がする。

まだ10年くらいしか経っていないはずなのに。

まだあの日のことは目にいまでも焼きついている。

忘れもしない…あの夜のことを…


私は聖ハズマ王国の山間にある小さな村に生まれた。

村人全員が知り合いの穏やかで平和な村。

村の特産品は羊毛で、私たちの村で作る羊毛は良質で近隣の街からの評判も高かった。


私の家は村長一家で当時は祖父が村長をしていた。

村長だからといってなにも特別ではなく、父は普通の羊飼いだったし、母も羊飼いの妻だった。

家族は祖父母と両親、そして私、あとは牧羊犬のジョンとメイ。


ただ特別だったのは母が村一番の美人だったことだろう。

母はもともと村の出身ではなかった。

別の土地から逃げてきたとか、ミココウホだったとか、右手の手袋はその証らしいなど近所のおばさんたちが話しているのを聞いたことがある。

当時、意味がよくわからなかった私は、それを母に聞いたことがある。

母の右手には確かにいつも手袋がはめられており、その理由もなぜか教えてくれなかった。

しかし、母は困ったように美しい銀髪を揺らし、アイリーンが大きくなったらお話するね。と笑っていた。

そして、優しく、左手で私の頭を撫でてくれた。

なんでーと頬を膨らませて当時の私は抗議したが、本当は母の過去にあまり関心がなかった。

どんな過去があろうともこの優しく、美しい母が大好きだった。

そして私の一番の自慢は母と同じこの銀髪だった。

母もアイリーンの髪は素敵ねといつも褒めてくれる。

毎日母に背中まで伸ばした自慢の髪を梳いてもらう時間がなにより大切だった。


私の楽しみはもう一つ、年一回の豊穣祭だった。

今思えば、小さな村の小さなお祭り。

王都のお祭りに比べればなんてこともない。

しかし、当時の私にとって普段食べられないお肉をみんなでお腹いっぱい食べるのが、本当に嬉しかったのだ。

そこには、旅の音楽隊一座も招待され歌や踊りを村人みんなで楽しむ。

家族と笑いながら観るのが毎年のお楽しみ。

とてもとても楽しかった。

私の中の一番幸福な記憶。


そんな平和な村に異変が起こり始めたのはのは、冬の足音が聞こえるある寒い日だった。

異変と言っても最初は、放牧に出していた羊が数匹戻らない、森の小動物が少なくなった等の些細なことだった。

実はこれらのことは毎年よくあることで、この時も冬ごもり前の熊の仕業か、狼の集団が近くの森に住み着いたと考えていたらしい。

この時点では村長である祖父も村人たちも、今年もか。くらいで深く考えていなかったようだ。

しかし、日に日に行方不明になる羊が増えていく。

探しに出した牧羊犬も帰ってこない。

遂には数日前から森に入った猟師さんたちが戻らないとのことだった。

ここで危険を感じた祖父は近隣の兵隊さんが駐屯するような大きな街へ使いを出した。

近隣といっても馬車で片道2日かかる距離だ。

魔道車や魔道二輪などあればもっと早いのだろうが、こんな寒村にそんな高価なものはなかったようだ。

だから、すぐに兵隊さんたちが来ることはない。

兵隊さんたちが魔道車に乗り、急いで駆けつけてくれても3日はかかるようだった。

そう…もうすでに手遅れだったのだ。


その日の夜中、村につんざく様な悲鳴が響いた。

ジョンとメイが外にむかって激しく吠えている。

家族たちも慌てて起き出して、窓から外を見る。

最初はなにが起こっているのかわからなかった。

外に松明を持った…あれは隣のジョージおじさんだ。

松明を振り回しながらなにか叫んでいる。

松明の灯の先に、なにか大きな影が見えたような気がした。

その大きな影は素早くおじさんに飛び掛かる。

おじさんは声をあげながら、激しく抵抗していたが、やがて動かなくなった。


それを見た父と祖父は手に松明と斧を持ち、ジョンとメイを連れて外に飛び出していった。

母と祖母は私を連れて地下の貯蔵庫に向かった。

床にある重たい扉を開けて、私だけを地下室に押し込める。絶対にここから出てはダメよ。必ず迎えにくるからね。

と言い残して扉に鍵をかける。

母と祖母がなにかを言い争う声。

祖母の叫び声と母の痛そうな声。

いつも仲が良かった母と祖母が喧嘩をしている?

そして祖母の泣いているような声も聞こえてくる。

暫く後、今度は母がお祈りのような、聞いた事がない言葉でぶつぶつと囁きながら、扉になにか書いているようだった。

時折、扉の隙間からポタポタと液体が落ちてくるが、地下室は薄暗くそれがなにかはわからなかった。

その後、母と祖母はどこかに行ってしまった。


私はなにが起こっているのか、理解出来なかった。

しかし、子供ながら大変なことが起きていることだけはわかった。

どのくらい時間がたっただろうか?頭を抱えてブルブルと震えていると、上からガタンと物音がした。

家族が戻って来たと思い、扉の隙間から外を覗く。

美しい銀髪がすぐそこに見えた。お母さんだ!と私は喜んだ。

ゆらゆらと美しい銀髪が目の前で揺れる。

でもなにか違和感を感じる。

ここは地下室だ。私は見上げるように扉の隙間から覗いている。

母の銀髪はそこまで長くはない。

母は低く屈んでいるのだろうか。

もう一度、目を凝らす。

そして。


首だけの母と目が合った。


私の村での記憶はそこで途切れている。

次に目覚めた時は病院のベッドの上だった。

祖父が呼んだ兵隊さんたちが来たのが、あの夜から3日後。

私は地下室の中でひとり倒れていたらしい。

脱水症状と低体温症。

一週間、目が覚めなかったと看護師のお姉さんが教えてくれた。


数日後、だいぶ回復した私に面会する人が現れた。

立派な法衣を着た、ニコニコした優しそうなおじいさんだった。

おじいさんはマクスウェルと名乗った。

私と先生の出会いである。

この病院を運営する封印教団の特別顧問。

教団No.2。

母とも知り合いで、教団で母の師匠だった人だ。

先生は当時の私にもわかるように丁寧に説明してくれた。

村で起こったこと、母のこと、そしてこれからのこと。


先生は村は魔物に襲われたと教えてくれた。

魔物とは生き物が魔力によって変異した存在。

魔物となった生き物は獰猛なものはより獰猛に。

狡猾なものはより狡猾になる。

村を襲ったのは狼の魔物だったらしい。

そしてあの村の周辺で魔物が出たのは今回が初めてのことだったらしい。

魔道車に乗り駆けつけた兵隊さんと封印教団の聖騎士様が死傷者を出しながらなんとか退治してくれたらしい。

その後、村をくまなく捜索した結果、倉庫に避難出来た数人と地下室で倒れている私を発見、保護くれたとのことだった。

お母さんは?家族のみんなは?と幼い私は聞いたけれど、先生がとても悲しそうなお顔をするのでそれ以上は聞けなかった。

お葬式も既に終わっているようだった。


そして、私には母の才能が強く受け継がれていると先生は言う。

母は隠していたみたいだけど、封印術士だったようだ。

あの地下室の扉と村人が避難した倉庫にも、母の封印術が施されていたらしい。

隠蔽と防護の二重封印術。

だから、魔物が私や倉庫の人たちをいくら探しても見つけられなかったと、先生が教えてくれた。

さらに兵隊さんが到着するであろう3日後にきちんと封印が解けるようになっていたらしい。

封印術は魔力を込める量で出力を調節する。

力加減を誤れば対象を破壊しかねないので、繊細な魔力コントロールが必要なのだ。

だが、それが凄く難しい。

力いっぱい魔力を込めるのは得意なんだけどな…

さらに発動時間の調節なんて私にはまだ無理だ。

本当に高度な技術だ。

二重封印術のうえで、さらに発動時間の調整。

しかもあの限られた時間の中でひとりやってのけた。

母の凄さが今だからわかる。


そして、私は他の魔力保持者と比較してもかなり魔力が高いと先生は言う。

そもそも魔力保持者の数は少なく、1000人に1人の割合と言われている。

先生曰く、素晴らしい才能だそうだ。

でも魔力って魔物にする力じゃないの?と、幼い私は先生に質問した。

そんな私に先生は、魔力は確かに危険な力だが、正しく使えば人を救える力であると教えてくれた。

たしかに魔力とは毒と同じだ。

正しく使えば人を救う薬にもなれば、悪意をもって使えば人を殺す毒にもなる。

そして先生は魔力を正しく使う為に私の弟子になり、多く学びなさいと言ってくれた。

大好きだったお母さん、私も母みたいになりたかった。

私の意思はすでに決まっていた。

天涯孤独となった私は本来、孤児院にいくはずだった。

だが、こうして先生に引き取られ封印教団へと入信することになる。

このあたりの別視点ストーリーも機会があれば書きたいな。お母さんとか村人とか。

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