2・魔王の目覚め
初投稿の習作です。
推敲も重ねていくので随時、変更していく予定です。
基本は細かい修正ですが、今後のストーリーと整合性を持たせるためガラッと変更することもあります。ご了承ください。
特に1.2.3話は変更しがちです。
地名はかなり適当なので変更するかもです。
とりあえずの終わり方はだいたい決まってるので、完走できるよう頑張ります。
星評価やリアクション、感想など頂けると、今後の励みになります。
改めて、よろしくお願いします!
その言葉を聞いた瞬間、ウィリアムから湯気のようなものが立ち上がる。
よく見るとその湯気らしきものは赤色をしている。
知識がある者が見れば、それが魔力であると断言できるだろう。
顔に目を向けると、怒りの表情ではあるが、どこか笑っているようにも喜んでいるようにも見える。
不思議な表情だ。
さらに刺青のようなものが首筋に薄らと浮かんでるようにも見える。
酒場にいた酔っ払いたちはウィリアムから立ち昇る魔力に当てられ、腰を抜かし椅子から転がり落ちるもの、口から泡を吹き気絶するもの、なかには失禁するものまでいた。
それをアイリーンは真正面から無表情で受け止めている。
「テュルソス!店仕舞いだ!」
テュルソスと呼ばれた給仕の少女は素早く、そして確実に客たちを支え起こし、または担ぎ、呆然としている客たちを促し退店させる。
きちんと料金は貰っているようだ。しっかりしている。
その間ウィリアムは溢れ出す魔力を抑える為か、カウンター内の棚から酒瓶を乱暴に取り出し、瓶のまま煽っている。
5分後、店内はウィリアムとアイリーン、テュルソスだけとなった。
長い沈黙。
ウィリアムもアイリーンも無言である。
ウィリアムは酒を煽り、アイリーンは俯いている。
テュルソスだけは忙しそうに、片付けや掃除をテキパキとこなしている。
掃除が終わったらしいテュルソスは、うんしょうんしょと新しい扉をどこからか運んできた。
扉を付け替えるらしい。
トンカントンカンと大工仕事の音を聞きながら、先程よりも幾分魔力を押さえ込んだウィリアムが苦虫を噛んだ時のような表情で先に口を開く。
「…あいつの封印は…あと50年は持つはずだ…」
(そうだ…20年前の予測ではクソったれだが、70年は抑えられるはずだった。そこから、術式の再強化も含めて100年は保つとかなんとか…さすがソフィアだのなんだの…教団のジジババ共も自信ありげに語ってやがった。自分たちの手柄でも無いくせにアホどもが!フン、封印から25年で解放か…なにが起きてる?)
俯いていたアイリーンも顔をあげ、ウィリアムをしっかりと見据えながら言葉を返す。
「はい。管理部でも予想が困難だったそうです。しかも、いかなる前触れもなく急激に魔力が高まり封印が解かれました。調査部と先生は外部からの干渉を疑っております」
ドン!!!
店内に重い衝撃音が響いた。
ウィリアムがカウンターに拳を叩きつけたのだ。
カウンターのぶ厚い天板にヒビが入り、さらに激しく陥没している。
ウィリアムの額にはっきりと青筋が立ち、目も血走っている。
正に鬼の形相だ。
先程以上の魔力も溢れ出ている。
それまで大工仕事に精を出していたテュルソスはビクッとなり、振り向いてジト目でカウンターを見やる。
「外部だと!?それこそありえん!歴代一といわれたあいつの!あのソフィアの封印術式だぞ!どこに外部から干渉できる奴がいる!俺がどれだけ…」
「まだ可能性の段階です。正直、何もわかっておりません。管理部と調査部は合同本部を設置し、原因究明に当たっており、同時に封印が解かれた封印体の追跡にあたっております」
アイリーンは先程とは比べものにならない凄まじいウィリアムの怒りと魔力に至近距離で晒されながらも、冷静に淡々と状況を説明していく、最初に感じたなにか頼りない印象は今はもうなくなっている。
しかし、アイリーンをよくよく見てみると、か細い肩が微かに震えている。
それに気付いた瞬間、ウィリアムから怒りと魔力が急速に引いていく。
(チッ…こんな嬢ちゃんに俺はなにを当たり散らしているんだ?これじゃあ、ただの八つ当たりじゃあねぇか…あー情け無ぇ…)
ガシガシと短く刈り上げた頭髪を乱暴に掻き毟りながら、努めて冷静に言葉を絞り出す。
「当代の…今の勇者と巫女は?」
こちらも大事なことだ。
聞いておかねばと、ウィリアムはアイリーンに問い質した。
「それは…」
ここに来て初めてアイリーンが言い淀む。
俯いて、言葉を選んでいるようだ。
そんなアイリーンを酒を飲みながらウィリアムは黙って見ている。
怒りも収まって、冷静に考えられるようになってきた。
(この様子じゃあ、まぁアレだな…。フン…猶予はどのくらい残ってる?さっき先生って言ってたよな…くそ!あのジジイまだ生きてやがるのか…)
そんな事をウィリアムが考えていると、テュルソスが木材を脇に抱えて、トコトコとカウンター内に入って来た。
いつのまにか捻り鉢巻きをしている。
「邪魔…」
そう言いながら、ウィリアムの前に無理やり入ってくる。
ウィリアムがデカ過ぎてカウンター内に前後で立つことが出来ない。
ウィリアムはすまんと言いながら横にずれて立つ。
無愛想なこの男もこの少女には弱いらしい。
テュルソスはアイリーンの目前でトンカントンカンと、隣の大男が破壊したカウンターの修理を始めた。
「今日はもう休んだ方が良い…」
え?と俯いていたアイリーンが顔をあげる。
大工仕事をしながら、抑揚が少なく、間延びした独特な話し方で、テュルソスがアイリーンに話しかける。
「疲れているようだから、難しい話は明日…。今日は泊まっていくと良い…」
それを聞いていたウィリアムも頷き、同意する。
当たり散らしてしまった罪悪感からか、妙に優しい。
それに、そもそも面倒見の良いおっさんなのだ。
「そうだな…今日はもう遅い。話は明日にしよう。ここの2階が俺ら従業員用の生活スペースだ。客間も一部屋余ってるから、そこを貸してやる」
「そ、そんな。そこまでして頂く必要はございません。路銀もありますし、近くの宿をこれから探して…」
と慌てて2人からの提案を固辞しようとした彼女だが、その時グーと自分のお腹から大きな音が鳴った。それを聞いた少女は顔を真っ赤にしてまた俯いてしまう。白い肌がりんごのように赤く染まる。耳まで赤い。
「ははは。そうだな。俺も腹ペコだ。おい。嬢ちゃん、嫌いなものはあるか?」
アイリーンは俯き、頭を抱えながら、ブンブンとクビを横に振る。
「まぁ、少し待っとけ」
そう言いながら、ウィリアムは大きな体を丸めてゴソゴソと準備を始める。
魔道コンロに火種を入れ、業務用の魔道冷蔵庫からお肉や野菜を大量に取り出している。
そして、包丁とまな板、そしてフライパン、鍋。
トンカントンカン。トントン。ザクザク。ジュウジユウ。
大工仕事の音、そして料理の音。
心地良いリズムだ。
まるで、幼い時に家族と見た旅の一座の演目のようだ。
アイリーンは俯きながらその音に耳を傾ける。
そして、幼き日ことを思い出していた。
アイリーンの髪型は前髪パッツンのベリーショート。
実はあまり明確なキャライメージはありません。
まだ銀髪、碧眼の美少女イメージだけで問題ないかな。




