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勇者酒場  作者: 古太十三


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1/12

1・銀髪の来店者

初投稿の習作です。


推敲も重ねていくので随時、変更していく予定です。

基本は細かい修正ですが、今後のストーリーと整合性を持たせるためガラッと変更することもあります。ご了承ください。

特に1.2.3話は変更しがちです。

地名はかなり適当なので変更するかもです。

とりあえずの終わり方はだいたい決まってるので、完走できるよう頑張ります。

星評価やリアクション、感想など頂けると、今後の励みになります。

改めて、よろしくお願いします!

聖ハズマ王国の西に位置する、地方都市カイナ、寂れた温泉街だ。


その都市の場末の裏通りに、ある酒場が営業している。


[勇者酒場]


20年以上前に魔王を封印したと言われる人類の英雄、勇者。その勇者の名を冠した酒場だが、中身はなんてことはない安酒と飯を提供する古びた大衆酒場である。

店主のオヤジは無愛想だが、料理はなかなか旨く、しかも安い、さらに看板娘が可愛いと、評判は上々らしい。


そんな勇者酒場で、一見客が店名の由来を店主のオヤジに聞く。

店主は無愛想ではあるが、真面目な顔で答える。


「俺が元勇者だからだ」


大抵の客は大笑いし、これを間に受ける阿呆はいない。

オヤジもそれ以上なにも言わないし、周りの常連達もまたいつもの冗談だと気にも留めない。

安い酒に旨い飯。それさえあれば店主が勇者だろうが、嘘つきの狂人だろうが酔っ払いには、関係ないらしい。

今日も今日とて、酔っ払いで賑わう勇者酒場。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ここですね…勇者酒場は…」


季節は爽やかな風が吹き、この地域では最も過ごしやすい初夏の頃。

太陽も西に沈み、夜の帳が落ち始めた勇者酒場の前で、白い旅装用ローブに身を包んだ人影がひとり呟く。

ローブのフードを目深に被っているので顔は良くわからないが、フードに隠れていない部分からわずかに見える白い肌と背格好からして、おそらく若い女性のようだ。

背中には大荷物を背負っており、かなり重そうである。

身につけている白いローブも見る人が見れば、ほこりで薄汚れてはいるが、生地も仕立てもかなり上等なものだとわかるだろう。

ローブの中に着る旅装束も白で統一されており、全体的に白い印象である。

こんな裏通りに似つかわしくない、白い、おそらく旅行客らしい女性が、小汚い酒場の前に突っ立っている。

どうやら、[勇者酒場]と書かれた看板を見つめているようだ。


よほど気になったのか、通りすがりの住人たちは遠巻きにチラチラと視線を向ける。


よし!と自らの頬をパンパンと叩きながら気合いを入れ、目の前の真新しい扉をおそるおそる開けた。


「いらっしゃい」


チラッとこちらに視線を向た店主が、カウンター越しに不機嫌そうな声をかけてくる。

一瞬目が合うが、彼はすぐに手元に視線を戻す。

随分、無愛想だ。こんな感じで客商売が成り立つのだろうか?


そう思い周りを見渡すと、この時間ですでに満席に近い。

随分繁盛しているようだ。

酔っ払いたちが楽しそうに飲み、騒いでいる。

店主の愛想なぞ彼らには必要ないのだろう。


その周りでは小柄な給仕の少女が、ちょこまかと忙しそうに注文をとっている。


もう一度、店主をじっくりと見る。

齢は40歳は過ぎているだろうか。少し白髪が目立つ、この国では珍しい黒髪を短く刈り上げ、髭を蓄えていてる。

目の色も珍しい黒である。

精悍な顔付きではあるが、不機嫌そうな表情がすこし怖い。

身長は見上げるほど高く、自分の腰回りの2倍程あろうかという太い腕。

それを支えるがっしりとした肩とそこから伸びる太い首、しかし意外と顔は小さめだ。

服装も白い長袖シャツに黒いパンツ。それに黒いエプロンをつけて、全体的に白黒で統一されシンプル且つ清潔感がある。


そして、この店主の最大の特徴は、その大きな腹である。


なにか服の下に詰めているのかと思うくらい、でっぷりしている。

まるで巨大な酒樽だ。


遥か東の島国にリキーシという戦士たちがいる。

彼らは大変立派な体格の持ち主たちで、筋肉の上に厚い脂肪をつけ、その体重を最大の武器とするらしい。

ブチカマーシーと呼ばれる体当たりは自分たちよりも巨大な魔物を吹っ飛ばせる程の威力らしい。

幼い頃、先生からその姿絵を見せられびっくりした記憶が蘇る。


この店主はそのリキーシに負けずとも劣らない立派な体格をもっている。


「座らないのかい?」


店主が怪訝な表情を向け、こちらを見ている。


ついつい思考に耽ってしまう。悪い癖だ。

そう考えながら、声をかけられた少女…アイリーンはいそいそとカウンターの奥側に腰掛け、荷物を降ろす。


「注文は?」


「…ミ、ミルクを…お…お願いします」


緊張のせいなのかビクビクと注文するアイリーン。

はいよ。と無愛想に答えた店主は背中を向けながら、その大きな体を丸めゴソゴソと準備を始める。


その背中を見ながらアイリーンは考える。


(この店主様が本当にあの?

お聞きしていた特徴と合っていますが、あのお腹は先生のお話にもなかったはず…うーん。お店を間違えてしまったのでしょうか?看板は合っていたはずですが…。うーん…)


お待ち。という声でハッとする。


いつの間にか目の前には木製グラスに入ったミルクが置かれている。

店主はすでに別の料理の準備をしてるようだ。


ありがとうございます。と言いつつ、アイリーンはごくごくとミルクを飲み乾す。

緊張で喉が渇いていたようだ。

このミルクもとても美味しい。


(ふー…よし!)


なにか意を決した様子で勢い良く立ち上がりながら、アイリーンはカウンター越しの店主に声をかける。


「あ…あの!て、店主様!!」


急に声を掛けられた店主は、怪訝な表情でこちらに向き直る。


その時


「てめーもういちろいってみろー!」


ガシャーンという、けたたましい音と共に呂律が回っていない男たちの怒声が酒場内に響き渡る。


「なんもでもいってやらー!」


アイリーンが驚きながら声の方に振り向き見ると、奥の方にあるテーブルがひっくり返り、酔っ払い2人がお互いの胸ぐらを掴み合っている。


その横では給仕の少女が、フラフラと2人を宥めようとしているようだが、周りの酔っ払い達はもっとやれと逆に囃し立てている。


「やれやれ…」


店主がアイリーンの横を足音もなく通り過ぎていく。

この酒場は扉こそ真新しいが全体的に古びていて、床もなかなかボロく、歩くとギシギシと軋む。

あの巨体でこの床の上を、足音を鳴らさず歩くなど本来ありえない。

しかしアイリーンは酔っ払いの喧嘩に、意識を奪われ気付いていないようだ。


「お客さん、騒ぐんだったら外でお願いしますよ」


そう言いながら、取っ組み合いをしている2人の首根っこを掴み、ヒョイと軽く持ち上げる。


あの2人もかなりしっかりとした体格の持ち主であるが、そんな大人を子供扱いしている。

相変わらず呂律の回っていない2人は、なにか叫びながら、足をバタバタと動かし店主を蹴っている。

しかし、店主は不機嫌そうな表情を変えずに、びくともしない。


店主は酔っ払い2人を持ち上げながら、周りの酔っ払いをひと睨み。

それまでの盛り上がりが嘘のように静まりかえる。

それから、出入り口まで進んで行き、扉に向かって勢いよく2人を投げ飛ばした。

大きな音と共に酔っ払い2人と砕けた扉は、仲良く酒場の外に投げ出される。


「扉の弁償代も含めてツケておくからな。頭冷やしたらまた来い」


そう言いながら、よっこいしょとその巨体を丸めて砕けた元・扉を拾い集めている。


酔っ払い2人はフラフラと立ち上がり、足早に逃げていく。


「ふん。薪代が浮いて助かるぜ」


集め終わった破片を乱暴に薪入れに乗せながら、不機嫌そうに店内に戻ってくる店主。


店内はまだ静まり返っているが、倒れたテーブルは元通りになっている。

先程、素早く給仕の少女が片付けていた。


店主は給仕の少女に目配せを送る。

少女も慣れているのか、一つ大きく頷き


「ご注文はありませんかー…?」


と抑揚は少ないが、大きな声を上げ、店内をちょこまかと動き回り始めた。

それが合図だったかのように、また店内は喧騒に包まれた。


(すごい力持ち…先生の言っていた通りですね…やはり、この店主様が…)


アイリーンはカウンター内に戻って来た店主を凝視する。

その視線に気付いた店主が声をかける。


「そういえば…あんた、俺を呼んでなかったか?」


そう言われたアイリーンは慌てて姿勢を正し、目深に被っていたフードを下す。

フードの中から現れたのは、輝く銀髪を短く切り揃えた15.6歳の少女であった。

まだ幼さの残る顔立ちは大変整っており、瞳は透き通るようなサファイアブルー。

肌も人形のように白く儚げである。

その横顔を見た酔っ払い達がどよめいている。

アイリーンは真っ直ぐに店主を見つめ、はっきりとした口調で問うた。


「お初にお目にかかります。私は封印教団から参りました。アイリーンと申します。

失礼ながら、貴方様は25年前に封印の巫女と共に魔王を封印した、勇者ウィリアム様でお間違えないでしょうか?」


この時、不機嫌顔の店主…ウィリアムはアイリーンの顔を見た際、少しだけ驚いた表情になった。

封印教団と聞いた次の瞬間には眉間に皺が寄り、超不機嫌顔になってしまったが。

子供が見たら泣き出すレベルだろう。

すぐに元の不機嫌顔に戻りながら、アイリーンの目を真っ直ぐに見ながら答える。


「あぁ。誰も信じちゃくれんが、俺が元勇者で間違いない。ウィリアム・バッカスだ」


「やはり!…やはり!そうなのですね!あぁ神よ!このお導きに感謝いたします!」


アイリーンはサファイアブルーの瞳に涙を浮かべ、手を組み、天を仰ぎ祈り始めた。

こんなやり取りで信じたのには理由があった、勇者の名は世間には勇者ウィリアム、または親愛を込めて勇者ウィルとしか伝わっていない。

そのフルネームを知る人間は教団内でもごく一部だ。

本人には隠すつもりはないようだが。


(変な嬢ちゃんだぜ。…銀髪か…。あと頼りねぇ細ぇ腕だな。ちゃんと飯食ってるのかー?フン、そんなに上を見上げたって、あるのはシミだらけのボロ天井だけどな…おいおい!あそこ腐りはじめてるじゃあねーか…くそが!)


ウィリアムは冷ややかな目でアイリーンを見た後、視線を彼女と同じ方向に向ける。

そろそろ、この店も建て替えが必要だなと考えていた。

修復だけでは限界があるようだ。

しばらくアイリーンの祈りが続き、ウィリアムが建て替え案の具体策を思案し始めた頃。

アイリーンはふと我にかえり、慌てて、咳払いをひとつ


「おほん。た、大変失礼いたしました。

き、教団本部からウィリアム様への言伝を預かってお…」


「いや…いい。どうせ碌な話じゃない。それにおれはもう、おまえら教団とは無関係だ」


(そうだ。俺はもうおまえらとは縁を切ったはずだ!20年前の契約を忘れたのか?クズどもが!こっちはおまえらなんぞ、思い出したくもないってのに!)


と、心の中で悪態を吐きながら、ウィリアムはシッシッと手を振り、アイリーンの話を途中で遮る。

カウンターに頬杖をつき心底面倒臭そうに横目でアイリーンを見ている。


だが、アイリーンの瞳の奥には決して消えない決意の炎が灯っている。

なにか先程とは雰囲気も変わっているようだ。

そして、短く、囁くように、だがはっきりと。


「【封印体】が解放されました…」


ウィリアムのイメージは◯の錬金術師のカーティス精肉店のオヤジ。

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