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2話 探索

 枝を集めて焚き火を作製して、魚を獲って丸焼きにし、疲労がある程度拭えたところで渡河を始める。

 まあ渡河とはいっても数メートルの幅しかないが。


 「これで生き返ったな」


 さっきまでは無理に動いていたが、今は不可なくすんなりと動ける。

 対岸に上がって靴の中に溜まった水を排出させると、ダンジョンを見上げた。

 大きさは……まだ小さい方か、これは。施設で例えると学校の体育館ぐらいだろう。


 俺が今までに見てきた中で一番広大だったダンジョンは面積がヤバすぎてもはや攻略不可能だった。だからあれは俺が唯一逃げ出したダンジョンと言える。

 あのデカブツと比べたら、こんなのおちゃのこさいさいだ。


 銃を構えながら辺りを警戒し、ダンジョンへ慎重に突き進む。

 こういう時に気を付けなければならないのは、例えば――――あっ、もう見つけられたや。


 「……? トラップの類なんだろうけど、これも違和感あるなぁ」


 地雷がよくダンジョンの周辺に埋められていることがあり、まさにその地雷らしきものをいち早く見つけたから処理しようとしたのだが、デザインが近代的すぎる。

 王国のダンジョンにあった地雷は小型の樽が地面に敷設されていたが、こいつは国家の軍が持っているような外観だ。


 それこそ、イスラエル軍なんかもこれと似た地雷を所有していたはず。

 怖くなり、やっぱり踵を返すことに。

 地雷とは残酷な兵器である。

 普通の爆薬は木っ端微塵に体が弾け飛ぶが、地雷は兵士の士気を下げるための存在だ。


 もし地雷を踏んでも即死はせず、瀕死の間際で生き残り、安泰に暮らせるとしてもそれはイモムシの姿を強要される。

 こう思っては不謹慎だが、一発の銃弾で死ねることは戦場では幸せな部類なのかもしれない。

 が、奇妙なる発見はそれだけに留まらなかった。


 「今度は何だ……」


 落ち葉に隠れていて見えづらかったが、看板が埋もれていた。拾い上げて、付着した土を軽く払った。

 文字が表記されていたのだが、アラビア語ではなく、キリル文字だった。ウクライナとかロシアとかベラルーシとかで使用されているアレだ。


 ということは俺はレバノンじゃなくてスラブ圏のどこかしらの国家に飛ばされたのかと推測を立てたが、また新たに発見した看板を確かめてそれは違うかもと感じた。


 そちらには東アジアで広く普及している漢字と……見慣れない変な文字が描かれていた。でも、知っているのは知っていると思う。何だったかなこれは……あ、そうだ、思い出した。


 「これ、平仮名ってやつか……?」


 サンキュー、今は亡き親父。

 俺が中学生だった頃、親父から東アジアの歴史や文化を少し教わったのだが、その際に日本語という自分にとっては異質な言語を勉強してみたことがあった。

 発音そのものはわりかし単純だったが、文法が難しかったのを今でも覚えている。


 「スラブなのか東アジアなのかよく分からねえな……」


 看板を投げ捨て、頭を掻きながら困り果てる。

 大まかな地域すら把握できないのはどうしようもない……とにかく、もっと探索して手掛かりを集めるしかなさそうだ。

 ダンジョンの攻略はまた今度に回すことにして、森の奥深くへ進んでいく。


 軍隊で使用される地雷が埋まっていたわけだしこの先にどんな危険があるのか知る由もないが、現在できることはそれぐらいしかない。

 歩けそうな場所には積極的に行く――――シンプルでリスクも多少は付き纏うが、手掛かりを得るには最も効率的だ。


 体力がまた減ったら休憩は怠らないが。

 しばらく進むと、先程と同じようなダンジョンが現れた。

 今回のはサイズが巨大で、山を一つ飲み込むほどである。

 だが賑わっていないのか、もはや廃墟と化していた。

 ダンジョンの表面はピラミッドのように段差となっており、そこに腰掛ける。


 「ふう、変な所だなぁ全く」


 銃を抱きながら、雲の一つないまっさらな青空を一点に見つめる。こうしておくと、何だか落ち着くのだ。

 このライフルは長年連れ添っているし、情が湧くのも不自然じゃないか。


 「そういえば、このダンジョン……」


 視線を上げて、全体を見渡す。

 横にもデカいが、縦にもデカく、登っていけば地上を一望できそうだった。

 手首を捻って、背伸びして、数回のスクワットで準備運動をやってから、滑落しないように石の段差を伝っていく。

 最初は緩やかな傾斜だったが、真ん中辺りからは急なものになり、なるべく下を見ずよじ登ることだけに集中した。


 「いけたっ! 疲れた~」


 冷や汗ダラダラだったが、頂点に辿り着いた時は思わず喜びの感情を爆発させてしまった。


 「へえ、やっぱり広いな……おっ、ちゃんと人もいるのか。安心したぜ」


 山ばっかりなのかと思っていたが、遠くには小さな町が霞んで見えた。

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