12話 冒険者ギルド
ここはアシール会社の関東支部とのことだが、辺境にある癖には結構大層な設備だと思われる。
施設そのものは木造であり、どことなく暖かみを感じるデザインだが、そこにあるシステムはオールドな俺からすれば全部が画期的に見える。
まず施錠されている扉は大半が指紋認証あるいは顔認証となっており、鍵で直接開けるタイプのものは見つけられなかった。
また中庭に行くと防弾ガラスで天井が保護された娯楽室があったり、電子書籍が中心の図書館があったりと、軍事施設というよりも豪華なホテルだった。
向かった先はオルランの所属している部署がある部屋――――着くと、スライド式のドアが自動で左右に広がり、その内部がはっきりと伺えた。
時代を先取りしたハイテクな雰囲気が漂っていて、室内でドローンを飛ばす馬鹿やらよく分からない謎な迷彩服が売られていたりしたが、構造そのものは異世界の冒険者ギルドとそっくりである。
その光景に驚き、入り口の手前で足が進まなくなってしまう。
そんな俺をよそにオルランは軽々と入って行ったが、少し歩いたところで、こちらにくるりと振り返った。
「緊張しているのか?」
「まあそりゃ、初めてだし」
答えると、ずっと止まっておくのも悪いし無理やり両足に力を込めて未知の世界へ踏み込んだ。
「……」
黙って、見渡す。
設備は確かに大層なものだ。空調もしっかりしているし、時計もデジタルである。ただ、この構造は親近感を覚える。
俺も金が減った時はこういうギルドに行って適当な仕事を貰っていた。
もちろん失敗することも多々あったが、面白いことには変わりなかった。
それはそれとして……ここ、女性が多くないか。男性もいないことはないが、もし百人の人間がいるならば、その内の七十人の女性といった体感だ。あと異世界らしき住民も普通に馴染んでいて、聖女や魔法使いの女達はそこらをうろついている。
「あっ、そういや……」
呟き、ふとオルランのとある言葉を思い出す。
異世界の文化が融合して以降、地球とあちら側の交流が盛んになったそうだ。
何でもこっちの世界とあっちの世界を繋ぐ陣が存在しているのだとか。機会があれば俺もそれを見てみたい。
オルランが受付嬢としばらく話していると、お喋りが済んだのか、小走りで戻って来た。
……走るのはいいが、その時に揺れるのはやめてくれないかな。毎度毎度目のやり場に困ってるんだ。
「終わったのか?」
「うむ、こちらの事情は済んだ。さて、そろそろ私の仲間達と会わせよう」
「あっそう、じゃあ頼むよ、俺何にも分からないからさ」
そう言ってオルランの横に並ぶと、事務所に隣接している別室へと連れて行かれた。
珍しくこのドアは手動で開けるタイプだが、表札に視線を向けると数字が割り当てられていた。
彼女がドアノブに手をつけた時、
「オルラン、表札の番号はどういうことなんだ?」
「単純に部屋の順番を表すものだ」
ドアノブからオルランが手を離すと、表札を指さした。
「例えばこの部屋は私が率いる部隊の休憩室となっている……ちなみに私は最近その部隊の隊長になったのだが、部隊名がまだ決まっていない。だからもしもいい案があれば頼む」
命名か……別に構わないが、俺がやると思想がヤバそうな名前になると思うのだ。
でも勇者としてもてはやされるなら、「東アジア版ヒズボラ」なるものを立ち上げたいところではあるかもしれない。




