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11話 勇者としての活動について

 「はあー美味いぜ空気は!」


 外にある広場に出て、芝生の上で仰向けに寝転がった。

 俺は途中で廊下に行ってしまったが、慌てて追い掛けて来たオルランにここはどこなのかという旨の説明を受けた。


 まず前提としてアシール個人防衛株式会社というサウジアラビア発祥の民間軍事会社があって、世界で幅広く支部を展開しているとのこと。通称アシール会社はレバノン侵攻やガザ紛争、イエメン内戦などに参加しており、実戦経験はかなり高い。また会社は世界の異常現象を受けて異世界出身の人々も所属できる部門を創設し、オルランも冒険者部門に配属されているみたいだ。


 しかしまあ、俺はこの会社を好きにはなれん。

 だって俺の故郷を荒らしたからだ。

 所属している人を殺そうと思ったことはないが、どうもこの会社に居座るのは気分が害される。そもそもスンニ派の空間にシーア派がいて大丈夫なのだろうか。


 けどオルランとかいう爆乳のお姉ちゃんは俺の秘書官になってくれたし、我慢もしておくべきか。あんな美女と仲良くなれる機会は早々ない。

 しばし時間が経った頃、広場にオルランの声が通った。


 「アイマン君! 昼ご飯を持って来た!」

 「おお、やっとか」


 笑みが溢れ、そっちを振り向くと――――俺の寿命はそこで尽きたかと思ってしまった。

 オルランは厨房で昼食を作っていたらしく、その昼食が入っているであろうバッグを腕に掛けてこちらに走っていたのだが、風船がブルンブルンと激しく揺れて、服に波紋を生んでいたのだ。


 「んぶっ!」


 唾が喉の変なところに滑ってしまい、咳き込み、悶える。

 無自覚エロとは、こういことを示すのか……!


 「あ、アイマン君、風邪かっ!?」


 するとオルランは俺の背中を擦ったのだが、その時にやたらと柔軟で丸みを帯びたものがふにょんとぶつかった。


 「ち、違う! 入り損ねただけだよっ!」


 オルランを軽く突き飛ばし、息を整える。


 「な、ならいいのだが……それよりも昼食を持って来た」


 彼女はうっすらとした微笑みを浮かべて籠から包装紙を取り出した。それは低く膨らんでいる。

 受け取ると、紙を引き剥がした。

 中から現れたのは……多分サンドイッチというやつだ。食べたことはないが、侵入先の基地でイスラエル兵がモグモグと口に運んでいた。


 「ありがとうよ、オルラン」


 紙を畳むと自分のポケットに入れて、齧る。

 ――――柔らかいパンは歯によって噛み砕かれ、挟まっている食材の味も舌の上に敷かれる。

 これは卵か……けれどオルランのものにはハムがある。


 「なあオルラン……」


 解けた表情でパンを貪っていく彼女に横から声を掛けた。


 「どうした、アイマン君?」

 「いや、そっちのにはハム挟まってるけど、まさか配慮してくれたのか……?」


 恐る恐るといった様子で聞いてみると、オルランは笑顔で頷いた。


 「ああ、敬虔なムスリムに豚肉は出してはならないし、君はそもそもこの世界を救う勇者だ。だから配慮なんてものは至極当然のことだ」


 そう言ってから、オルランは再びサンドイッチに齧りつき、可愛らしい表情を浮かべる。

 敬虔なムスリム、ねえ……俺はオルランのお〇ぱいにしか今のところ興味はない。

 サンドイッチを食べ終えると、腹を撫でて、浮かぶ真っ白でふわっとした雲達を見上げた。

 というか何とも思わなかったが、俺はこんなスタイル抜群の美女が作ってくれた手料理を頂いたのか。


 「あっ、そういえばさ……オルラン」

 「質問か? だったら少し待ってくれ」


 オルランは口元に付着したサンドイッチの残りカスのようなものを拭い取った。


 「えっと、勇者として活躍するのはいいんだけど、具体的に俺は何をしたらいいんだ? 救えって言われても……そこんとこが分かんないよ」


 肩に掛けている銃に目を向けるが、これだけで世界を救済するには力不足だろう。


 「それについて、説明が不足していたな――――大まかに、三つのことをやってもらいたい」

 「三つだって?」


 彼女の近くに移動し、耳を傾ける。


 「ああ、まずは一般的なモンスターの討伐だ。冒険者部門はいわばギルドのようなものだから、いつでも出撃ができる。そして二つ目はダンジョンの攻略だ」

 「ダンジョン?」

 「そこからモンスターが大発生する時期があるから、定期的にダンジョンを潰さなければならない」

 「そんなの朝飯前だ、任せておけ」

 「む、一人でやるつもりか?」


 問い掛けられ、そうに決まってるじゃんと頷きを見せる。


 「アイマン君、あなたの実力はリスペクトするが、それは極めて危険なこと――――だから、秘書官である私も同行する」

 「ええー、お前も来るのかよ……」


 足手纏いにならないか不安だが、すぐにその捻くれた思考は……別の意味でさらに捻くれた。

 冷静に考えるんだ――――加齢臭漂うオッサンではなく、常に肉塊を揺らしてくれる美人で頼りになりそうなお姉さんがお供してくれるんだ。これ以上の幸運を見逃していいわけがないだろう。


 「いや、絶対に来てくれ」

 「そうも頼りにされるとは、嬉しい限りだ」


 オルランは無邪気な笑みで応じたが、かくいう俺の感情は不純な望みしかない。


 「それで本題に戻るが……アイマン君には六体の魔王を倒していただきたい」


 再チャレンジか……異世界でも魔王の命を握り潰したが、またあの苦労を味わうのか。

 しかし課された任務を無視にすることはできない。


 「いいけど、その魔王とやらはどこにいる?」

 「ベラルーシ、エジプト、オーストラリア、アメリカ、ベネズエラ、そして南極だ」

 「それぞれの大陸ごとにいるのか」

 「ああ、その認識で合っている。しかし魔王討伐だけではなく、魔物の駆除も怠らぬように……むしろ、被害の大きさで言えばモンスターの方が甚大とまで言える」


 色々と伝えられたが、要するに俺の役割はまだまだ終わらせてくれないようだ。

 はあー、しょうがない、イライラすることもあるだろうけれど、それで世界規模のナクバが終わるんだったらいいや。

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