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進化する女神:無限にスキルを書ける  作者: ライアン
運命を書き換える進化の女神
3/25

第3話:死の前の微笑み

第三グループは巫女の罠に落ち、空気さえ腐ってしまいそうな、じめじめとした広大なダンジョンに飲み込まれた。

学生たちは突然の出来事にパニックを起こし、怒りをあらわにしていた。


「くそっ! 何が起きたんだよ!」

靴が濡れた石を打ち、跳ねる音とともに、誰かが叫ぶ。


リジはぼんやりと地面を見つめながら、かすれた声でつぶやいた。

「……やられたな」


その瞬間、拳が石壁に叩きつけられる音が響く。

「クソ女……絶対に殺してやる!」

ケンは憎悪に満ちた目で吐き捨てた。


天音は少し離れた場所に立ち、何も言わなかった。

まっすぐ前を見つめているのに、その瞳には何も映っていないようだった。

そして、ダンジョンに転移する直前の“あの表情”を思い出す。


――「やっと……終わったんだね」


「ようやく、この苦しみも……消えるのか」

彼女はつぶやきながら、話し合う仲間たちをぼんやりと見ていた。


そんな彼女を見て、もう一人の少女が声を荒げた。

「また何もしないつもり!? 本当に足手まといね! 命がかかってるのに!」


天音は何も言わず、静かに床に座り込んだ。

無表情のまま、ただ一言だけを口にする。


「……好きにすればいい」


「なっ……!」

少女が言い返そうとしたところで、少年が口を挟んだ。

「もういい。あいつは……もう死んでるようなもんだ」


少女は顔をそむけ、他のメンバーと合流した。

この第三グループは五人しかいなかったが、そのうち生きて出られるのは四人……いや、もしかするとそれ以下かもしれなかった。


「マンガとかだと、ダンジョンって“階層”になってることが多いんだよな」

と、グループの中で一番オタクっぽいヒキロが言った。


「階層?」と少女が聞き返す。

「ああ。下に行くほどモンスターが強くなる。

 とりあえず片っ端から倒して、出口を探そうぜ」

ケンが拳を鳴らしながら言った。


その直後――暗闇の中に赤い目がいくつも浮かんだ。

巨大なオオカミたちが姿を現す。

この世界のモンスターは、彼らの知る“獣”とは違った。異様に大きく、そして醜悪だった。


恐怖が全員の心を支配し、冷静さは瞬く間に崩れていった。


逃げる間もなく、最初の悲鳴が上がる。

「ぎゃあああああっ!!」

血しぶきが石床に飛び散り、その瞬間、狼の牙が一人の肩を食い破った。


「やばい! 逃げろ!!」

叫び声を上げた彼の頭は、次の瞬間には怪物の口に消えた。


少女は恐怖に固まり、動けなかった。

絶望に染まったその瞳に、飛びかかる影が映る。


天音はその惨状をただ見つめていた。

悲鳴、肉の裂ける音、血の匂い。すべてが遠く感じた。


「天音ぇぇっ!」

地面に倒れ、半身を食われたリジが叫ぶ。

「助けろよ……この、クソ女……っ!」


その瞬間、アマネの口元に――微かに、笑みが浮かんだ。

まるで、初めて感情というものを知ったかのように。


「……なんで……笑ってるんだよ……?」

リジは涙を流しながら、絶望のまま息絶えた。


仲間たちは皆、目の前で喰い殺された。

それでもアマネの顔には、どこか安らぎのような笑みが残っていた。

彼女は抵抗せず、ただ死を受け入れようとしていた。


「……もうすぐ、会えるのかな。

 あなたに……私の、生きる意味だった人に……」


――そのとき、記憶がよみがえった。



---


夕焼けに染まる丘の上。

一本の木の下で、二人の子どもが並んで座っていた。


「どうして、また助けてくれたの? もう大丈夫って言ったのに……」

少女は涙をこぼしながら言う。

少年の体は傷だらけで、服は埃まみれだった。


少年は空を見上げ、小さく笑った。

「お前が自分を傷つけたら……俺、絶対許さないからな」

そう言ってから、彼女の方を向いて言う。

「だから……生きろよ」


少女は驚いたように彼を見つめ、

瞳の奥に小さな光が灯った。



---


回想が終わると、アマネの体は勝手に動き出していた。

彼女の足は“逃げ方”を思い出し、怒り狂う獣たちから必死に逃げた。

血を流し、傷だらけになりながら、何度も転び、それでも走った。


怪物たちがすぐ背後まで迫ったとき――

彼女は誤って、隔離された小部屋に飛び込み、重い扉を閉めた。


「……痛い……」

ドアにもたれかかりながら、彼女は弱くつぶやく。

「どうして逃げたの……どうして……」

声が震え、嗚咽が漏れた。


部屋の中には松明がいくつも灯り、

金貨や宝石が散らばり、中央には台座に一つのネックレスが置かれていた。


黒い宝石がはめ込まれたその首飾りは、他の財宝とは明らかに違っていた。

――それは、まるで“悪意”そのもののようだった。


アマネはそれを見つめ、何かに引き寄せられるように近づく。

気づけば、その瞳は淡い紫に光っていた。


『……願いを、叶えたいのですね』

頭の奥に、甘く冷たい声が響いた。


彼女は無意識のまま手を伸ばし、ネックレスを首にかけた。


『この絶望……思っていたよりも、深いですね』

声が小さくつぶやく。


アマネは近くにあった古びた剣を手に取る。

その剣は、ネックレスとは正反対の光を放っていた。


「……ごめんね、ユキヒラ。約束……守れなかった。

 それと……ユキ……本当にごめんなさい。」


静かに剣を構え、胸に突きつける。

一瞬、世界が止まったように見えた。

そして、鋭い音とともに、刃が彼女の心臓を貫いた。


倒れる音だけが、部屋に響いた。

悲鳴も涙もなく、ただわずかな後悔と懐かしさだけが残った。


――彼女の死は、確かだった。

だが、その呪われた静寂の中で、

“何か”が、ゆっくりと動き始めていた。

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