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余命僅かな君との最後の日々  作者: 有原優


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第十四話 病気


 そして翌日も俺は鈴奈に会うために図書館に行った。九時に待ち合わせしてたので、八時五十分に着くように行った。だが、そこに鈴奈の姿はなかった。

 あと十分待ったが、時間になっても来なかった。もう十分経っても。

 仕方ないと思い、メッセージを送った。安否確認だ。


 …………来ない。これはさすがに心配だ。もしやまた恐怖に心をむしばまれているのか、それともまさか期限前に死んでしまったのか。どちらにしても心配だ。どうしようか。


 迎えに行きたいが、俺は残念ながら彼女の家は知らないのだ。知らないままどうしたらいいんだ。

 とりあえず、俺はどうしようもないので、その場で勉強を始めた。そのうち来るだろと思って。

 三十分後、彼女はこなかった。しかし、その代わりに一件のメッセージが来た。


 それは……「病気にかかったから今日は来れない。ごめんね」というものだった。


 病気……俺はその可能性を考えていなかった。もしかしてほんとうは寿命というには病気での死ではないかということだ。もしそうであれば最悪だ。最期の時はベッドで苦しみながら過ごすことになる。俺はどうしたらいいんだ? 俺は何ができるんだろうか。


 そして、俺はすぐにメッセージで家の住所を聞いた、もちろん会いに行くためだ。


「いやいや悪いよ。てか、もしかして私の住所が知りたいのって、もしかして変態?」


 実に彼女らしいメッセージだ。これは本当に大丈夫な可能性もあるし、空元気の可能性もある。

 これは住所は教えてくれないだろうなと思った。だが、お見舞いに行きたいし、何より一目見ないと安心が出来ない。

 よし! 根勝負だ。


「……でも心配なんだお前のことが」

「何それ、愛の告白?」

「ふざけなくていいから」

「えー。でもねテスト前の大事な時期を私のために使ってほしくないの。それにただの風邪だし、これで死ぬなんてことはないから安心してよ」


 そして「時期でもないしね」と言った。


「分かった」


 俺は鈴奈の言うことを理解して、納得した。

 そして俺は大人しく一人で勉強することにした。一人で、誰ともかかわらずに。


 そして翌日、テストが始まった。俺の斜め後ろ、そこには誰も来なかった。鈴奈が座っているはずの席だ。


(あいつ、ただの風邪って嘘じゃねえか)


 くそ、これじゃあ彼女の頑張りは無駄ってことになっちまうじゃねえかよ。


 だが、俺も俺で大変だ。鈴奈だけにかまっていては、自分のテストの点が散々なことになる可能性がある。という訳で、俺は俺の成すことをしなければと、世界史の最終確認をした。

 世界史のプリントを赤シートで隠し、歴史上の人物の名前を当てていく形だ。


(これは、孫文か)


 そんな感じで勉強していく。


 そして、鈴奈が来ないままテストが始まった。

 勉強をしっかりとした成果が出たのか、すらすらと解いていく。もはや知らない単語が一つもない。こんなに解けるのは初めてだ。


 出来ればあの席に鈴奈がいてくれたらうれしいのだが、いないものは仕方ない。

 そして世界史のテストが終わった時に、彼女にメールを送った。(風邪が長引いているのか?)というメールを。


 実際帰ってきたメールを見ると、実際にはノロウイルスらしく、今週いっぱいは学校には来れないらしい。

 死ぬような病気ではなさそうだという事には安心したが、鈴奈の時間がしょうもないウイルスに奪われたという事が悔しい。

 鈴奈は貴重な夏休みを使い、補修テストを受けることになるという事だ。最後の夏休みだというのに。

 しっかし、あいつ短い余命をこんな病気で一週間失うことになるのか。

 ……彼女はどっちみち五〇日くらいの余命だ。そのうち六日かあ……。鈴奈にとって重い六日間になりそうだな。


 はあ、俺としても結構きついことになるな。

 

 それにもしノロウイルスと言う事なら、俺はお見舞いには行けない。テスト期間中に風邪がうつるのは嫌だし、そもそも、鈴奈は俺が会いに行くことをよしとしないだろう。


 俺は自分にできることをするしかない。


「そろそろ次のテストやるから、席に着け―」


 どうやら考え事をしていたら、次テストが始まるようだ。しまったな……テスト前の最終確認をしてない。

 そして、今日のテスト二つが終わった。結果としては上手くいった、若干心を乱されてしまったが、結果的にそれはテストにほとんど悪影響を及ぼすことはなかったようだ。


「どうするかなー」


 会いに行きたいところだが、会いに行けない

 それが正直言って寂しい。

 ……どうやら俺にとって彼女の比重は大分重いものになっているらしい。

 さて、と、家に帰った。

 そして、部屋に行って鈴奈に電話をかけた。


「何?」

「何って要件は分かってるだろ。調子はどうなんだ?」

「調子ね、結構しんどい感じ。はあ、最悪だよ。せっかく勉強したのに。……神様ももう少し考えてほしかったのに、例えば九月十九日以降に風邪にかからせてくれたら良かったのに」

「それ、お前が死んだ後だろ。どうやって遺体に風邪をひかせるんだ?」

「あはは、やっぱりいいね浩二君。冗談にまじめに突っ込んでくれて」

「……俺は、昨日と今日寂しかった。もちろんお前がいなかったからだ」

「それって、テストの点が悪かった時の言い訳?」

「違う……」

「分かってるよ。私も昨日今日と会えなくて寂しかったよ」

「……」

「だから、私は夏休み浩二君を独占したい。覚悟してくれる?」

「それは俺が先に言うべきセリフだ」

「じゃあ、相思相愛ってこと?」

「……認めたくはないが、そう言うことになるな。……認めたくないけど」

「なによ。ムカつく……」


そう言ったきり、鈴奈の声が止まり、無言の状態が続く。鈴奈はおしゃべりだ。そんな鈴奈がしゃべらないのはおかしい。


「どうしたんだ?」

「おなか痛い」

「……」


 やはりか。鈴奈は今苦しんでいる。

 俺に何かできることがあればいいが。


「うぅ」

「俺もお見舞いに行きたいところだが……」

「だめ、それは浩二君にうつっちゃうから」


 まあそう言われるよな。


「だよな……じゃあ、ここらへんで」

「だめ! もう少し声が聴きたい」

「ああ、勉強しながらだが、いいか?」

「うん」


 そして俺は数学の練習問題を解きながら、勉強に熱を入れていた。どうやら、鈴奈のお母さんは部屋にいたのだが、俺と話したいから、部屋から追い出したらしい。


 そして最終的には大分彼女も落ち着いてきたらしく、いつのまにか寝てた。

 そんな鈴奈と話しながら、勉強する日々が続き、あっという間に、テスト期間が終わった。


 テスト最終日、そこを乗り切った後、すぐさま鈴奈の家へと向かった。厳密には彼女はもう元気だそうだが、長引いて、昨日の夜まで熱があったらしい。

 緊張しながらピンポンを押す。俺は彼女の家に入るのが初めてだ。つまり鈴奈の親がどんな人なのかも知らない。

 ああ、緊張するな。

 ああ、緊張する。


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