4話 剣聖の手料理
「ここが私の家だよ」
「はあ!?」
なんだこりゃ?
なんで王都の中心地にこんなバカでかい家持ってんだよ?
家っていうかこれは屋敷じゃねえか?
「まぁ入って入って!」
「「「「「「「おかえりなさいませ ララ様」」」」」」」」」」
屋敷の中に入るとメイドがずらっと並んでいた。
「ララ様、こちらのお方は?」
執事っぽい爺さんが話しかけてきた。
「紹介するね!私の弟子になったゲン君だよ!」
「・・・ララ様?『勇者の弟子』は取らないのでは?」
「ゲン君は『勇者』じゃなくて『剣聖の弟子』だよ」
「左様でございますか?」
「ゲン君、この人はバトラーさん。この家の事でわからない事があったらバトラーさんに聞いてね」
「バトラーさん、ゲン君の部屋を用意してあげて!」
「かしこまりました」
「おい!俺の部屋ってなんだよ?」
「ゲン君、住むとこ決まってないんでしょ?ここに住むといいよ!」
「いや、そこまで甘えるわけにはいかねぇよ」
「いいからいいから!部屋はいっぱい余ってるし、ここに住んでた方が練習の時間も増えるよ」
「まぁ、それはそうだが」
「じゃあ決まりね!とりあえずお風呂にでも入ってきなよ」
メイドに連れられてやってきた風呂はえらい広い風呂だった。
なんで家にこんなでかい風呂があるんだ?
でも折角だからゆっくり湯につかって旅の疲れを落とした。
風呂から出ると次は部屋に案内された。
なんだこのだだっ広い部屋は?
俺の村の家が丸ごと入っても余るじゃねえか?
「なあ、もっと狭い部屋で良いんだが?」
連れてきてくれたメイドに聞いた。
「この部屋がこのお屋敷の普通のサイズの部屋でございます。ここより狭い部屋はございません」
・・・仕方ねえか。
折角だから使わしてもらおう。
部屋で荷物の片づけをしていたら、食事の用意が出来たと言って呼ばれた。
だだっ広いダイニングに行くと、メイド服の『勇者』(『剣聖』)がいた。
編み上げていた金髪は、おろしてプリムで後にまとめている。
さっきとはまた違った雰囲気だった。
「何でメイドの格好してんだよ!」
「料理をする時はこの格好が動きやすいんだよ? えへへ、似合うでしょ!」
『勇者』(『剣聖』)はメイド服のスカートの裾をつまんで可愛いポーズをとった。
(似合い過ぎて怖いわ!無駄に可愛いんだよ!それにスカート短くないか?)
「ララ、それくらいにしてあげなよ。さすがに彼がかわいそうだ」
振り返るとさっきの兄ちゃんと姉ちゃんがいた。
「?・・・何がかわいそうなの?」
・・・やっぱり自覚ないのか?
「まあいいや!準備が出来たから歓迎会を始めよう!」
テーブルの上には見た事もない様な豪華な料理が並んでいた。
「これ全部お前が作ったのか?」
「そうだよ!さあ召し上げれ!」
4人でテーブルを囲んで席に着いた
「「「「いただきます!」」」」
とりあえず肉料理っぽいやつを食べてみた。
「うっま!何だこりゃ?」
肉がとろけるように柔らかく絶妙な味付けと相まって口いっぱいに濃厚な旨味が広がる。
「ふふっ、気に入ってもらえた?他の料理も食べてみて!」
今度はパスタっぽいやつを食べてみる。
これもとんでもなく旨い!
スープも飲んでみるが、スープってこんなに旨いものだったか?
とにかく何を食べても驚くほど旨かった。
「料理ってこんなに旨くなるもんなのか?」
「ははっ、ララの料理は特別だよ」
「じゃあ食べながらだけど、あらためて自己紹介しようか?」
「まず私は『勇者』で『剣聖』のララです。最近『勇者』になったばかりの『新米勇者』です。趣味はやっぱり料理かな?」
「僕は勇者のパーティーメンバーになった『中級魔術師』のレンだ。防御系や補助系、結界魔法が得意だ」
「わたしは同じく勇者パーティーのメンバーで『中級魔術師』のルナです。魔法は全般使えるけど、どちらかといえば攻撃系の魔法が得意かな?ララとは幼馴染だよ」
「二人とも『魔術師』なのか?『魔術師』ってあんまり聞かねえけど『魔法士』とは何が違うんだっけか?」
「『魔術師』は『魔法士』よりも高度な知識と魔法操作技術を習得するとなれるんだよ」
レンの兄ちゃんが説明してくれた。
「そうか、『魔法士』よりすげえんだな」
「まあ、そうだね」
『魔法士』は国家資格だ。
おそらく『魔術師』もそうだろう。
俺も簡単な下級魔法は使えるが資格は持ってねえ。
そういう奴は『魔法使い』って呼ばれる。
まあ、この国ではほとんど全員が『魔法使い』だがな。
「今はこの3人でパーティーを組んでるんだよ。次はゲン君の番だよ」
「俺はゲンだ。剣士を目指している。剣聖の弟子になりたくて村を飛び出して王都に来た。こんなにあっさり弟子になれるとは思わなかったけどな」
「ねえ、ゲン君はどこで剣を習ったの?なんだか私の剣筋に似てるよね?」
「誰からも習ってねえ!独学だ。3年前の剣術大会で見たあんたの戦い方を真似してきた」
「へえ!そうだったんだ!でも独学であそこまで強くなるなんてすごいね!」
「まあ、こっそり魔物退治もしてたからな」
魔物退治は『剣士』や『魔法士』の資格を持ってねえとやっちゃいけねえ事になってる。
「ところでゲン君は『身体強化』は使ってなかったよね?」
「ああ、俺は『身体強化』が使えねえんだ。だから『剣聖』に弟子入りしたかったんだ」
「そういう事か・・・うん!わかった!私がゲン君をもっと強くしてあげるね!」
「よろしく頼む」
「任せといて!」
「そうだ、あんたの事はこれから『師匠』って呼んだ方がいいよな?」
「名前でもいいけど?」
「いや『師匠』って呼ばせてくれ」
「ちょっと照れ臭いけど・・・まあいいかな?」
「それと俺の事は呼び捨てでいい」
「そっか、じゃあよろしくね!ゲン」
「よろしくな!『師匠』」