表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者を名のる剣聖の弟子  作者: るふと
第八章 上級剣士
305/329

304話 婚約の真相

 シアたちが宴の会場を去った後、俺たちも頃合いを見て会場を抜け出し、指定された部屋へと向かった。


 部屋の目には衛兵が立っていたが、俺達を見るとすんなり扉を開けて中へと入れてくれた。

 扉の中は執務室で部屋の奥には執務机が置いてある。


 その机にギルが座っていた。


「よく来たね。さあ、こちらへ」


 ギルは隣の部屋に続く扉を開けた。


 扉の奥は応接間になっており、ソファーにはシアが座っていた。

 ギルは当然の様にその隣に座ると、俺達を向かいの席へと誘った。


「まあ掛けたまえ」


 色々言いたい事はあったが、とりあえず言われるままに俺達三人は向かいのソファーに座った。




「突然の事で驚きましたよね?」


「当たり前だ。シア・・・洗脳されたりしてる訳じゃねえのか?」


「はい、わたしは正気です。まずはこうなった経緯を説明させてください」


「それは僕から話そう。とりあえず身分を隠していた事を詫びたい。すまなかった・・・聞いての通り、僕はこの国の第2王子だ」


「どこかの貴族だとは思っていたがまさか王子だったとはな」


「王子の身分は捨てるつもりだったからね。今回ここに戻るまでは」


「事情が変わったって事か?」


「そうだね・・・僕も知らなかったんだけど、シア殿に婚約を申し込んでいたのはこの国だったのさ」


「何だって!お前がシアの婚約者候補だったっていうのか?」


「正確には僕の兄上・・・第1王子の婚約者として申し込んでいたみたいだけどね」


「第1王子だと?」


 ・・・そういえば今日は第1王子はいなかったようだが?


「そうだね・・・兄上は今、身柄を拘束されているからね」


「どういう事だ?」


「彼は今罪人として王位継承権を剝奪され、牢に閉じ込められているところさ」


「何があったんだ?」


「全てはこの国のしきたりと、あの魔物のせいさ」


 なんだか複雑な事情が合いそうだな。


「まずはこの国の事から話そう。かつてこの大陸には八つの国があったけど皇帝によって統一されて一つの帝国になったのは知ってるよね?」


「ああ、知ってる」


 そして師匠があろう事かその皇帝の妃の一人になっちまった事もな。


「帝国に組み込まれたと言っても、各国の自治権は守られていてね、基本的にはそれぞれの国はその国の王が治める事になっている。よほどの事が無い限り皇帝が各国の運営に介入して来る事はない。皇帝が禁止しているのは奴隷制度や平民への弾圧・・・」


 ・・・師匠が言っていたな。

 皇帝の治める帝国は理想的な社会になるだろうと・・・

 

「それから恋愛・婚姻の自由を妨げてはいけないという事だ」


「多夫多妻制って奴だな」


「そう、男女とも複数の相手と自由に結婚する事が許されている。もちろん相手の意志を尊重する事が義務付けられているけどね」


 その制度のおかげで師匠は皇帝と結婚しちまったんだ。


「でもそれは各国の王家に関してのみ適用されないんだ」


「どういう事だ?」


「それぞれの王家にはそれぞれのしきたりがあるからね。さすがに帝国としてもそこまでは介入しなかった。だからこの国の王家はこの国の王家の従来のしきたりに従っている」


「この国の王家のしきたりって何なんですか?」


 ヒナがギルに問いかけた。


「この国では王位継承者の中で最も能力に長けた妃を娶った者が時期国王に選ばれるのさ」


「それでシアを妃に希望していたのか」


「そうだね、その条件で行くと上級魔法士のシア殿を妃にできればほぼ王位継承は確定だからね」


「だが上級魔法士ならシアの他にもいるんじゃないのか?」


 シアが亜魔女って事は公にはしていない。

 上級魔法士クラスの女性なら世界中にそこそこいるはずだ。


「貴族に限定するとかなり数が限られるんだよ・・・平民を妃にする事は認められていないんだ」


「結婚は自由なんじゃないんですか?」


「それがこの国の王室のしきたりだからね」


「この国とわたし達の王国は元々友好関係にあって、国王同士の話の中でわたしを王子の婚約者として推薦してしまったそうなのです。だからお父さまも断り辛かったらしくて」


 シアの親父がそう言っていたよな。

 話が正式にまとまる前に既成事実を作るしかないと・・・


「わたしもそれが今回遠征に来る事になったこの国だって知らなくって・・・それがたまたま港町でわたしの事を知っている人に会ってしまって、ギル・・・殿下と一緒いたので婚約を承認してこの国に来たのだと勘違いされてしまったのです」


「だが婚約の相手は第1王子では無かったのか?」


「そうだね。僕は王位には興味が無くて王位は兄上に任せて冒険者として自由気ままに生きていくつもりだったからね・・・でも兄上が継承権を失ったために事情が変わってしまった」


「どうなったんですか?」


「他の王子たちがシア殿との婚約の権利を主張しだしたのさ」


「何だって?第一王子が失脚した時点で婚約の話は白紙に戻るんじゃないのか?」


「具体的な相手を特定せず王子の誰かとって話になっていたらしいね」


「なんだそりゃ?そもそもどうして第一王子は継承権を失ったんだ?」




「それは・・・兄上はあの魔物に捕まって・・・平民の女性との間に子供が出来てしまったからさ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ