302話 中州の王城
魔物討伐を達成した俺とヒナ、そしてジオの三人は王都のある中州のところまで戻ってきた。
途中、世話になった村長に魔物の討伐が完了した事を告げるために川岸の村へ立ち寄った。
「何だって!もう魔物を退治しちまったのかい?しかもあんた達だけで!」
魔物の討伐を報告したら、村長はえらく驚いていた。
「ああ、ヒナを助け出して三人で協力して倒す事が出来た」
「あんたは・・・魔物に捕まってた女の子だね?大丈夫なのかい?妊娠させられたりしてないのかい?」
「大丈夫です!ゲンさま以外の赤ちゃんは産むつもり無いですから!」
「そうかい、それは良かった。しかしあの状況からどうやって助け出したんだい?」
「俺が囮になって魔物に捕まった。その隙に二人が魔物を倒したのだ」
「へえ、あんたたち二人とも剣士みたいだけど、その剣であの巨大な魔物をどうやったら倒せるんだね?」
「剣では無くて魔法で倒したんだ」
「ほう、魔法で?・・・しかし上級魔法でも使わなけりゃあの巨大な魔物は倒せないんじゃ無いのかい?」
「ゲンさまとわたしの共同作業です!二人の愛の力で倒したんです!」
「ヒナ・・・言い方・・・」
「あはは、お嬢ちゃんはこいつと結婚するつもりなのかい?」
「はい!そうですよ」
ヒナはそう言って俺の腕にしがみついた。
「そうかい、そいつは良かったな・・・めでたい話は重なるもんだね。丁度この国の第二王子も結婚が決まったって話だ」
・・・そんな話が合ったのか。
「へえ!それはおめでたいですね!」
「ああ、何でもしばらく国を離れていた第二王子が婚約者を連れて城に帰ってきたそうだよ。魔物討伐の伝令が着いたのと同時だったんで、城は大騒ぎだったよ」
・・・このタイミングでか?・・・偶然ってあるもんだな・・・
「ところで俺たちのパーティーメンバーがそろそろ王都に到着するはずなんだがその情報は無かったか?」
「そんな話は無かったね。というかあの盛り上がりじゃそんな些細な話は後回しになってるだろうよ」
俺にとっては些細な話では無いんだが・・・
「とにかく俺たちも城に行こう。討伐の報告をする必要がある」
ジオの言う通りだ。
王城に行けばきっとシアたちと合流できるだろう。
「じゃあ、村長、俺たちは王城に向かう。色々世話になったな」
「ああ、たんまり報奨金をぶんどってきな」
報酬は冒険者ギルド経由になるから勝手に貰うわけにはいかなんだがな・・・
俺たち三人は川岸の村を後にして王城へと向かった。
王都のある中州へ渡るには一本しか無い橋を渡る事になる。
橋の入り口の城門は何やら慌ただしい雰囲気に包まれていたが、門番に冒険者証を見せたらあっさり通してもらえた。
橋を渡った先にもう一つ城門が有り、中に入ると賑やかな町並みが広がっていた。
「以外と中は広いんですね」
城壁に囲まれた中州の城下町は、もっとこぢんまりした町並みかと思いきや、道幅も広くゆとりのある風景が目の前に広がっていた。
中央に見える高い建物がおそらく王城だろう。
ところで水着姿に剣だけを腰から下げているヒナの姿は、さすがに王都内で目立ってしまうので、近くになった服屋で取りあえずヒナの服を買う事にした。
服と行ってもジオと同様パレオ風の布地だが・・・
「ヒナは恥ずかしくなかったのか?」
「一応水着を着てますから気にしてませんでした。まさかこの国には水着という物が無いとは思わなかったので、王都に入ってから妙に人から見られているとは思っていましたが、わたしって下着姿で帯剣している変な人って思われていたんですね」
・・・それだけじゃ無くてヒナほどの美少女が水着姿でいたら当然目を引くと思うぞ。
おまけにジオまで一緒なのだから目立たない訳が無かった。
「それにしても町に中は賑やかですね?」
王都の中はまるで祭りの様な賑わいだった。
「魔物の討伐と王子の結婚が決まったのなら当然だろうな」
俺たちは賑やかな町の往来を抜けて王城へと向かった。
王城の入り口では、上級冒険者証を見せて魔物討伐の報告に来たと言ったらすんなりと中へ通して貰えた。
しかし、今は城内が立て込んでいるのでしばらく持つ様に言われ、豪華な応接間に通された。
「お城の中も忙しそうでしたね」
魔物討伐の経緯は役人に話したが、国王立ち会いの下で再度報告する必要があるとの事だった。
しかし、その肝心の国王と側近達がすぐには招集できないというのだ。
待てないのなら明日仕切り直しても良いとの事だったのだがシア達の状況も今日の内に確認しておきたいというのもあり、待たせて貰う事にしたのだ。
結局、日が暮れる頃まで待たれてから、ようやく謁見の間へ案内される事となった。
「ずいぶん待たされましたね。まあ、その間お菓子が食べ放題でしたので、それは良かったですけど」
ヒナは待っている間、出されたお菓子をひたすら食べ続けていた。
いくら食べても太らない体質とはいえ、さすがに食べ過ぎでは無いだろうか?
やがて謁見の間の扉の前に到着すると、扉を開けて中に通された。
国王とその親族が着席するまで頭を下げている様に言われたので、その通りにしていると、やがて国王とその親族が謁見の間に入場し席に着いた。
「上級冒険者ゲン、並びにその同行者よ、面を上げよ」
言われるままに顔を上げて国王を見ると・・・目の前には国王と思われる男性とその妃が座っていたのだが・・・
「シア!何でそこにいる!」
国王の隣には、ギルとシアが座っていたのだった。




