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勇者を名のる剣聖の弟子  作者: るふと
第八章 上級剣士
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297話 渓谷の町

 砂漠の大陸の断崖絶壁を昨日とは逆の方向に調査を行った俺とジオは、やがて大きな川の河口にある港町へとたどり着いた。


 断崖絶壁はさらに先まで続いているのだが、大河の河口であるこの場所だけは川によって作られた渓谷の下に僅かな平地があり、そこに町が出来ているのだ。


「ここまで調べてきたが、やはり魔物の形跡は無かったな」


「シア達が来るまで町で聞き込み調査をしておこう」




 俺とジオは港町に上陸する事にした。


 しかしこの町には砂浜は無く、海に面しているのは港の埠頭だけだった。

 こっそり上陸する訳にはいかないので俺とジオは堂々と埠頭から上陸した。

 もちろんジオは海中で人間の姿に戻っている。


 ただ一つ問題なのは・・・この国に俺たちが着ている様な露出度の高い水着で泳ぐという文化は無かったので、なぜ俺たちが下着姿で海から現れたのか説明するのに手間取っただけだ。


 結局、船の上でエッチな事をしている最中に魔物に襲われて船が転覆し、かろうじてこの町に流れ着いたという事で納得してもらえた。


 それはそれで、俺は男どもに羨望と妬みの目で見られる事になったのだが・・・




 とりあえず俺とジオは水着姿(ここでは下着姿)で町を歩き回るわけにもいかないので店で服を入手した。


「ようやくこれで落ち着いたな」


 俺は膝丈の短パン、ジオは上下セパレートのパレオを身に付けただけで相変わらず肌の露出は多いのだが、この町ではこれが一般的な服装らしい。


 どうやらこの国では下着姿で町を出歩くという行為は子作りのパートナー募集という意味を持っていたらしい。


 そのため、悪目立ちしてしまった俺とジオは、服を身に付けた後もちょくちょく声を掛けられる様になってしまった。


「ジオは分からなくもないが、なんで俺にまで女どもが群がって来るんだ?」


「気が付いてないのか?お前は結構女にもてる容姿をしている様だぞ?」


「そうか?俺みたいなのを好きになってくれるもの好きはシアとヒナぐらいだと思っていたが?」


「何を言っている。ララもお前は将来俺以上のいい男になるとよく自慢していたぞ?」


「そうなのか?」


「ああ、俺と出会っていなかったら、成長したお前と結婚する可能性は充分有り得ると言っていたな」




 なんだって!タイミングによっては師匠と結婚する事も出来たかもしれないっていうのか?


 ・・・少しだけ自分の生まれたタイミングの悪さを呪わずにはいられなかった。




「もっともお前にはシアやヒナがいるから自分では勝ち目は無かっただろうとも言っていたな」




 ・・・いや、そんな事は無いだろう。


 師匠も変なところで自分を過小評価してるよな?

 シアやヒナの方が自分よりかわいいと思っている節があるからな。


 いや、誰が上とか下では無く、三人ともそれぞれ別の魅力があるのだが・・・


 とにかく、今は俺とジオに人が集まるのを利用しない手は無い。

 寄ってきた奴らに聞き込み調査をする事にした。


 どうやら例の魔物はこの町の近辺にも何度か出現していた様だ。

 この町でも何組かの男女が強制的に生殖活動を強要されるという被害に遭ってしまったらしい。


「この大陸全土を支配する帝国では子供が出来た男女は必ず結婚しなければいけない決まりになっている。しかも離婚は認められない」


「それは難儀だな。魔物の被害に遭っただけで無く、好きでも無い相手と強制的に結婚させられるのか?」


「ああ、だがこの大陸は多夫多妻が認められている。他に好きな相手がいれば重婚は可能だ」


「そういえば、そんな話もあったな」


 前に聞いた事があったが、男性も女性も複数の相手と同時に結婚できるのがこの大陸の話だったな。

 そうだ、その話を聞いた時は俺にもまだ師匠と結婚できるチャンスがあるかもしれないと思ってしまったのだ。




 ただ・・・今俺と一緒にいるのは師匠では無くその旦那の方なのだが・・・




「それに、先ほどから聞いた話では、魔物に捕まって強制的に関係を持たされてしまった男女はほとんどが両思い、もしくは片思いの相手同士だった様だな」


「それって偶然なのか?」


「前にこの大陸でにた様な魔物と遭遇した時もそうだったが、その人間が本気で人を好きになる気持ちと同調する傾向があるのかもしれん」


「つまり魔物が自分の思い人と強制的にエッチさせてくれるって事か?」


「おそらくそのような事だろう」




 ・・・それで前に捕まった時はシアやヒナとさせられそうになったのか?




「だがそれならなんとも思っていない相手と無理矢理関係を持たされる事は無いって事か」


「いや、そうとも限らない。一方的な片思いのケースもあった様だ」


「それは相手が気の毒だな・・・だがヒナに関しては知り合いのいないこの国ならその心配も無・・・・・いや、まてよ?ヒナほどの美少女なら一目惚れの場合もあるのか?」


「前回の例と同じであれば、単なる性欲ではだめで、本気で相手を愛している必要があるかもしれんが?」


「いや、ヒナを見たら本気で惚れちまう男がいてもおかしくは無い。やはりヒナが危ねえ!」


 早くヒナを助け出さねえと、ヒナを見て一目惚れした男どもの餌食になっちまう。


「さっき聞いた話では、あの魔物はこの川の上流にある王都付近に出没する事が多かったらしいな。それに確信は無いが、昨晩その魔物らしき影が川を上っていったとの目撃情報も有った様だ」


「だったらそっちに行った方が遭遇する可能性が高いな。シア達を待っている時間が惜しい。今から王都に向かおう」


 シアとギル乗る船は今日の朝港を出るはずだ。

 順調に来ても到着は明日になる。


 その間にヒナがどんな目に遭わされているかわからないのだ。




 俺とジオは船着き場に伝言を残し、川の上流にある王都を目指す事にしたのだった。


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