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勇者を名のる剣聖の弟子  作者: るふと
第八章 上級剣士
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296話 勇者と夜明け

 海鳥の鳴き声で目が覚めると・・・俺は何か柔らかい物の上でまどろんでいた。




 なんだかとても良い眠りだった気がする。

 体も気持ちもいつになくすっきりしている。


 そして・・・いい夢を見ていた気がする。




 ・・・確か・・・俺が裸で師匠と抱き合って・・・そして師匠の乳首を口に含み、母乳を飲んでいた夢だ!

 

 夢のはずなのに師匠の裸体や肌の感触、それに母乳の味までも妙に鮮明に覚えていた。

 変にリアリティの高い夢だった気がする。


 ただ唯一の違和感は、師匠にしては胸が大きすぎた点だ。


 俺は師匠の胸のサイスが理想だと思っているので別に巨乳が好きなわけではない。

 しかし、実は潜在的に師匠の胸がもっと大きければいいとでも思っていたのだろうか?


 そんな事を考えながらゆっくりと目を開けると・・・目の前にあったのは女性の乳房だった。



 ・・・なんだ?夢じゃなかったのか?


 俺がのっかっていたのは裸の女性の体だったのだ!

 全裸の俺は、同じく全裸の女性の上に覆いかぶさって肌を重ねて寝ていたのだ!


 まさか!本当に師匠と裸で抱き合って寝ていたのか?


 夢だと思っていた事がまさかの現実だったのか?


 俺はついに師匠と体を重ねてしまったのか?




 ・・・いや、だとしてもおかしい。


 目の前にある胸の大きさは、どう考えても師匠のはずがない。




「目が覚めたか?」




 状況が整理できずに混乱していると、頭のから声が聞こえてきた


 その声は師匠より少し低く、透明感のある涼し気な女性の声だが、言葉遣いは男のものだった。



 ・・・そう・・・それはジオの声だった・・・俺は昨晩ジオと二人でいたのだった・・・



 つまり俺は・・・全裸でジオと体を重ねたまま一夜を過ごしちまったって事か!


「すまん!ジオ」


 慌てて上半身を起そうとしたら・・・ジオの太腿の間ですっかり硬くなっていた俺の股間の物が、丁度ジオの股間に引っかかってしまったのだ!


「待て、それ以上動くな」


 気が動転して焦っていた俺はそのまま力任せに体を起こそうとしたが、そんな俺の肩をジオが抑え込んだのだ。


「そのまま押し込まれると俺はお前の子を身籠ってしまうかもしれん。どうしても我慢できないというのであれば、せめて水着を装着してからにしてくれないだろうか?」




 ・・・そう、俺の股間から硬くそそり立っているそれは、今まさにジオのその場所に突き刺さろうかという位置にあったのだ!


 危うく俺は、ジオと取り返しのつかない関係を結んでしまうところだった。



「すまない!これは偶然の事故だ。俺には全くその気はない!」


 ・・・なんだか痴漢現場を見つかった時の良い訳みたいな事を言いながら、俺は後ろに下がってジオから離れた。


「お前が思春期の性欲を持て余して悩んでいる事は聞いている。どうしても我慢できない時は師匠代理としてそれを解消してやる義務が俺にはあると理解している。ただ、妊娠してしまっては困るので、避妊だけはしっかりやってほしい」


 いやいやいや!・・・剣術の師匠にそんな義務は無いからな。

 というか、何でみんな俺の性の悩みに対してそんなに理解が深いんだ?


「とにかく俺がジオにそんな事を頼む事は絶対にない」


「・・・そうか、すまなかった。昨晩も最後には俺の乳首に直接口を付けて母乳を飲み始めたので、てっきりその気になったのかと思ってしまった」


「なんだと?そうなのか?」


「ああ、お前は眠りに入る直前に急に俺の胸にむさぼりついてきて、そのまま眠ってしまったのだ」


 ・・・そうだ、俺はジオの母乳を飲みながら意識が朦朧としてきて・・・師匠の母乳を飲んでいる錯覚に陥ってしまったのだ。


 ジオを・・・師匠と勘違いして乳首に吸い付いてしまったのか?


「良い眠りに入れた様なので、起こすに忍び無くてな、そのまま俺の上で寝かせる事にしたのだ」


 俺がジオの母乳を飲みながら寝落ちしてしまったために、全裸で抱き合って寝る羽目になってしまったという事か・・・


 しかも俺はそれを師匠と勘違いして暢気に夢まで見ちまってた・・・


「一晩中、俺を上に乗せていたのか?体は大丈夫か?」


「心配無用だ。勇者の体はこの程度では何ともない。とにかく、体力が回復したのなら、食事をとってすぐにでも行動を開始するぞ」


 ジオはそう言うと、ささっと水着を装着して海に飛び込んだ。


 全裸で取り残された俺が水着を穿いていると、そこにジオが魚を抱えて戻って来たのだ。


「すぐに焼くから待っていろ」


 ジオはそう言って魚を焼き始めた。

 相変わらずの手際の良さだった。


 魚は昨日と違う種類だったが、これはこれで旨かった。


「この魚はあまり焼き過ぎない方が旨いそうだ。火加減は更に繊細になるので魔法で焼く場合は更に難易度があがるのだが、どうだったか?」


「いや、絶妙な焼き加減でかなり旨かったぞ」


「そうか、それは良かった。ララに料理のバリエーションを教えてもらった甲斐があったな」


 俺が旨いと言うと、ジオは嬉しそうに答えた。


 俺は野営の時の料理は師匠かシアに任せればよいと思っていたから自分が覚えるという考えは全く無かった。


 しかしジオは常に新しい事に挑戦しマスターする意欲があるのだ。


 そういえば前に師匠から聞いた事があった。

 ジオは歴代の勇者の中でも最も努力家だったと。


 勇者は技を磨かなくてもその卓越した力で事足りてしまう。

 そんな中で、ジオは更に技の研鑽を続けているのだ。

 それがこういうところにも現われてくるという訳だ。


 結局師匠とジオは、似た者同士なのだという事を改めて見せつけられた気がした。


 長年連れ添った夫婦は性格や考え方が似てくると聞いた事がある。

 師匠とジオが夫婦なのだと改めて実感させられてしまった気がした。

 俺が女性化したジオに師匠を重ねてしまったのもそのせいなのだろう。




「さあ、食べ終わったのなら出発するぞ。俺に跨れ」


「ああ、シアと合流してヒナを助けに行こう」


 俺はジオに跨った。




 俺を乗せたジオは空中で人魚の姿に変身すると、そのまま海に飛び込んだのだった。


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