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勇者を名のる剣聖の弟子  作者: るふと
第八章 上級剣士
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292話 魔物の行方

「本体に逃げられた。触手を切り離して逃げたのだろう」


 隣には同時に触手の包囲網を突破したジオ達がいた。


「・・・それじゃあ、ヒナは?」


「おそらく・・・あいつに連れていかれた」


「何だって?ヒナが連れていかれただと?」


「周囲にいないところを見ると、拘束されて連れ去られた可能性が高い」


 本体から切り離された無数の触手が消滅した後は、周囲に数十体の下級の魔物が残っていた。

 それらを片付けたがヒナの姿や痕跡はどこにも見当たらなかった。


「魔物は沖の方へ逃げたみたいですね」


 海上に広がる波紋からシアはそう推察した。


「この方角は砂漠の大陸がある方角だね」


「とにかく今すぐ追いかけてヒナを助けないと!シア、いけるか?」


「・・・ごめんなさい。もし隣の大陸まで追いかける事になるのだとしたら、今のわたしには無理です」


 海峡の一番距離の近い場所と言っても隣の大陸まではかなりの距離がある。

 戦闘の疲労も残っている今のシアでは無理か・・・


「俺が追跡する。三人は後から船で来てくれ」


「大丈夫なのか?ジル」


 勇者のジオなら確かに可能かも知れないが・・・


「俺は大丈夫だ。一旦岸まで戻ってギルを降ろしたらすぐ追いかける」


「それなら僕も一緒に・・・いや、ここはジル殿に任せよう。僕は泳いで帰れるから、ジル殿はヒナちゃんを追いかけてくれ」


 ギルは何かを悟ってジオに同行する事をやめた様だ。


「わかった。ヒナの事は任せろ」


 ギルがジオの背から降りた。


「それなら俺がジルと一緒に行く」


「ゲン、大丈夫なのですか?」


「ヒナは俺にとって大切な存在だ。ジルだけに任せておく訳にはいかない」


「そうだな、では俺に乗れ」


 俺はジオの背中に跨がった。

 シアやヒナと比べて体格はそれほど変わらないのだが、やはり二人よりも安定感がある。


「ゲン、ジル様、ヒナさんの事を頼みます。わたしとギルさんは船で追いかけます」


「ああ、任せろ」


「シア殿の事は僕に任せてくれ」


 ギルにシアを任せるのは別の意味で不安が残るが、今はそんな事を言っている場合ではない。


「飛ばしていくが振り落とされるなよ」


「遠慮せず行ってくれ。シア、砂漠の大陸で待っている」


「では行くぞ、しっかりとつかまれ」


 ジオはそう言うと、尾びれで力強く海面を叩き、一気に加速した。

 ものすごい加速が体にかかって、危うく振り落とされるところだった。


 ジオの細くくびれた腰の割に、ボリュームのある尻のおかげで、しっかりと下半身がホールドできていたおかげで、振り落とされずにすんだ。


 ・・・やはりジオの方がシアやヒナよりボディのメリハリが強いな。


 そんな事を考えていた一瞬の間に、シアたちは遙か後方に離れて見えなくなってしまった。


「魔物の移動速度は思った以上に早い。すでにかなりの距離をあけて離れている様だ」


「追跡できるのか?」


「わずかに残った波紋から推測しても方角は間違っていない。奴が海上を移動していれば補足は可能だ」


「それ以外の可能性はあるのか?」


「海底深くに潜ってしまうと追跡は困難だ。それに陸に上陸して移動した場合、追跡方法が変わってくる」


「まだ海上を移動した時の波紋が残っているな」


「ああ、大質量の物体が海面付近を高速移動したのは間違いない」


 追えるだけ追うしかないという事か・・・


 それにしてもジオの泳ぐ速度は半端ないな。

 地上を馬で走るよりも遙かに早い。

 俺たちが身体強化で地上を走る時よりも速いのではないだろうか?


 このペースなら、日没前に砂漠の大陸まで着いてしまうかもしれない。


 それにしても速度が速すぎて体に当たる水飛沫が痛いくらいだ。

 水着タイプの付加装備のおかげで、実際にはダメージにはなっていないのだが、生身で受けていたら体中痣だらけになっていたかもしれない。


 魔物の方も同程度の速度で移動しているはずだが、ヒナは大丈夫だろうか?




「波紋が明確になってきたな。魔物との距離が近づいたのだろう」


「このまま、追いついてヒナを取り戻せそうか?」


 日没が近づいた頃にようやく魔物との距離が近づいた。


「暗くなったら補足は難しい、一気に距離を詰めるぞ」


 ジオがさらに加速し、海上を跳ねる様に付き進む。


 俺に加わる衝撃もかなり激しくなってきた。

 この速度になると水面は岩の様に堅く感じるのだろう。


「波紋が強くなってきた。もうすぐ本体に遭遇するぞ」


 ジオに言われるまでもなく、目の前に大きな物体が通り過ぎた後と思われる波紋が鮮明に続いている。

 これならもうすぐヒナを助けられそうだ。




 ・・・しかし、ジオが急激に速度を落とした。


「どうした?」


「・・・陸地にぶつかる。回避するぞ」




・・・陸地だと?魔物は上陸したのか?




 すると目の前に水平線から断崖絶壁がせり上がってきたのだ!


 しかし魔物の通った痕跡と思われる波紋はまっすぐ断崖絶壁に続いているのだ。


「魔物はこのまま前進したのか?」


 ヒナ共々この速度で断崖絶壁に激突したらただではすまないだろう。


「減速した形跡はない。このまま前進した様だ」


 ・・・なんて事だ・・・ヒナはどうなったんだ?


「このままだと俺たちも激突する。水中に回避するぞ」




 ジオは俺を乗せたまま水中へと進路を変えたのだった。



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