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勇者を名のる剣聖の弟子  作者: るふと
第八章 上級剣士
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290話 水中の戦い方

 俺達三人が水しぶきの上がった地点に到着すると、海面から縦横無尽に生えてくる触手とジオ達が戦っているところだった。


 触手のずっと先の海面下にさっきの触手の本体らしき影が見える。

 なんだが丸い大きな塊から無数の触手が伸びている様だ。

 ジオとギルで次々と触手を切り落としているのだが、数が多く再生が早すぎて本体に近づけない様だ。




「ゲン!戦闘開始です!わたしに乗り移って下さい!」


 シアがヒナのすぐ隣に並んだ。


「ああ、分かった」


 俺はヒナの背中から離れて、シアの背中に乗り移った。


「あーあ、もう少しゲンさまに乗っていてほしかったです」


 ヒナは残念そうな顔をしていた。


「戦いが終わったらまた乗ってやるから、今はジオ達の応援に入ってくれ」


「はーい、わかりました」


 ヒナはそう言うと両手に剣を構え、水面を蹴って大きく跳ね上がり、触手の方へと向かっていた。


「俺たちも行くぞ」


 シアの背中に跨った俺は、膝でしっかりとシアのわき腹を挟んで剣を構えた。


 シアのウエストはヒナと同じくらい細いが、僅かにシアの方が細い気がした。

 尻もシアの方が少し小振りだ。

 ただ、身体強化で筋力を強化しているので安定している。


「はい!しっかりつかまってくださいね!」


 シアはそう言うとジオ達の隣へ泳いでいった。


 シアの泳ぎはヒナの様な無駄な動きは無く、正確で安定している。

 尾びれで力強く水を叩いている割に、背中に乗っている俺に余計な振動や揺れが伝わって来ない。


 上に乗っている俺の乗り心地を考えてそうしているのだろう。

 そういう気配りを欠かさないところがやっぱりシアだ。


「シアの上は快適で乗り心地が良いな」


「ありがとうございます。でもヒナさんに乗っている時も楽しそうでしたよ?」


「そうか?確かにヒナに乗っている時は面白かったが、やはりシアの方が落ち着く」


「ふふっ、そう言って貰えると嬉しいです・・・もうすぐ触手に接近しますよ」


「ああ、戦闘開始だな」




「待たせたな」


 俺とシアはジオ達の横に並び触手を切り始めた。

 俺が近くに来た触手をロングソードで切り落とすと、シアは『ウィンドスラッシュ』で少し離れた場所の触手を切り裂く。


「ヒナちゃんは向こうで戦っているよ」


 ギルの目線の先を見ると少し離れたところでヒナが、触手やその間から出て来る下級の魔物と戦っていた。


「ヒナちゃんも可憐だけど、シア殿の人魚姿も神秘的で美しいね」


「こんな時に何言ってるんですか」


 ギルは戦闘の最中でも女性を口説く事を欠かさない。


「ヒナにも教えたが、剣に風魔法を纏わり付かせて戦うといい」


 ジオに言われて、ジオとギル、それに離れたところで戦っているヒナの剣を見ると、確かに剣の表面に風魔法が纏わりついていた。


「水中なのに風魔法でいいのか?」


 水の中で風系の魔法を使っても威力が半減するだけじゃないだろうか?


「風系の魔法は水中の方が効果が増す場合があるんです。『ウィンドスラッシュ』などの風系の攻撃魔法は、空気をぶつけているのではなくて空気中に真空の刃を作って相手を切り裂くのですが、同じ原理で魔法を発動すると水中の方が速度も速いし効果も倍増するんです」


「そうなのか?意外だな」


 シアが説明してくれた。


「水系の魔法は水中だと打ち消し合ってしまいますし、火炎系の魔法は水蒸気爆発を起こしてこちら側も危険です。土系の魔法や光系の魔法も威力が半減してしまいますから」


 なるほどそういう理屈か。


 俺は自分のロングソードにウィンドスラッシュを重ね掛けして定着させた。


 それで水中から接近して来た触手を切り裂くと、さっきまでより切れ味が増していた。


「なるほど、これはいいな」


 その間にシアは周囲に三つのウィンドスラッシュを作って触手や下級の魔物を次々と殲滅し始めていた。


「これなら本体に近づけるね。僕とジル殿だけでは触手が多すぎて前進できなかったんだ」


 触手は本体からかなり遠くまで伸びている。

 本体はその先の水面下に潜んでいるため、そこにたどり着くためには夥しい数の触手と、その隙間に潜む無数の魔物を倒さなければならない。

 俺とシア、それにヒナが加わった事により、触手の再生能力を上回ったため、少しずつ前進して本体に近づける様になったのだ。


 だが、触手の量が多く、未だに魔物の本体をはっきりととらえる事が出来てない。




「本体が見えないが、こいつは中級の魔物か?」


 俺はジオに尋ねた。


「いや、上級の魔物だ。以前にも似た様な上級の魔物と戦った事がある」


「そうなのか?」


「ああ、その時の魔物も今回の魔物と同じで、致命傷となる攻撃は仕掛けて来ない代わりに、触手で人間を拘束し裸にしていた」


 捕まえるのはともかく、なんで裸にする必要がるんだ?


「何のために魔物がそんな事をするんでしょうか?」


 シアも同じ事が気になっていたらしく、ジオに質問した。


「おそらく繁殖が目的だ」


「繁殖?ですか?」


「そうだ、前回の魔物も今度の魔物もそうだった。おそらく今度の魔物も人間を繁殖させる事を目的として行動している」




 ・・・ありがた迷惑な魔物だな・・・


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