270話 恒例のイベント
この宿には温泉があり大浴場があるというので、食事の後は恒例の入浴タイムとなった。
宿にはファミリールームが無く、仮にあったとしてもさすがにギルも一緒のファミリールームという訳にもいかない。
今回は部屋を個別にとり、入浴は大浴場に行く事にしたのだ。
各自自分の部屋に戻って着替えを持って大浴場に向かった。
男湯の脱衣所に行くと既にギルが来ていた。
「ふふっ、前回は負けたが僕もあれからかなり鍛えたからね。今日は負けないよ」
・・・何の勝負の話だ?
「おっと、勝負はこの後だ。まだその時じゃない」
ギルはそう言って腰にタオルを巻き、浴場へと入って行った。
・・・相変わらず意味の分からない奴だ。
俺も服を脱いでタオルを腰に巻きギルに続いて浴場へと入った。
浴場は他には客がおらず貸し切り状態だった。
ギルと二人きりというのは微妙だが、見ず知らずの他人に気を使う必要が無いのはいい。
「ふふ、これなら気兼ねなく勝負が出来そうだね」
ギルは腰のタオルに手をかけながらそう言った。
「ちょっと待て、だから何の勝負だ」
「いまさら怖気づいたとは言わせないよ。今日こそ雪辱を晴らさせてもらう。さあ、君もタオルを掴みたまえ。僕が合図をしたら勝負といこう」
・・・こいつ、何を言ってるんだ?
意味が分からねえ。
「ほう、面白そうだな。風呂場での鍛錬か?確かにこの様な足場で戦闘に入る事もあるだろう。俺も参加させてもらおう」
俺たちの背後からジオの声がした。
・・・まさかこの展開は?
俺とギルは同時にジオの方に振り向いた。
・・・そこには・・・俺の予想した通り、タオル一枚を体に巻いた姿のジオが立っていたのだ。
「ジル殿!どうしてここに!」
「なんで男湯に入って来た!」
最近の師匠やシアたちの指導で人前では胸まで隠す様になってくれて良かった。
以前は平気で俺の前に裸を晒していたからな。
「俺がシア達と共に風呂に入るわけにもゆかぬだろう。それよりも訓練を始めるのではないのか?」
・・・確かにジオにシアやヒナの裸を見られるのは面白くない。
だが、俺やギルと一緒に入るというのも問題だろう?
「僕は大歓迎だけどいいのかい?ジル殿」
ギルはタオル一枚のジオの体に興奮気味の様だ。
「ああ、そのつもりだ。合図とともにタオルを捨てて身一つになって戦えばよいのだな?」
「その通りさ!ぜひ君も参加してくれ!」
「わかった。いつでもいいぞ」
ジオは自分のタオルの胸元を掴んだ。
いつでもタオルを剥ぎ取れる体勢だ。
「ジル、バカな事はやめろ。ギルもやめさせろ」
「いいじゃないか。その方が僕たちの勝負も白熱するだろうしね。さあ、ゲン君もタオルを掴むんだ。準備はいいかい?」
俺は参加する気はねえからな。
だが、ギルにジオの裸を見せる訳にもいかねえ。
とりあえず、ジオがタオルを脱ぐのを阻止するためにジオの方に向かった。
「では、いざ勝負!」
ギルが掛け声と共に自分の腰に巻いたタオルを一気に投げ捨てた。
・・・そして同時にジオも瞬時に体に巻いたタオルを投げ捨ててしまったのだ!
一瞬間に合わなかった俺の目前には・・・ジオの、女性として究極ともいうべき魅力的な肉体が迫っていたのだ。
そして、それを目の当たりにしてしまった俺の股間は・・・例のごとく急激に膨張し、腰に巻いていたタオルを弾き飛ばしてしまったのだ。
・・・またやっちまった。
前にも同じ失態を晒した事があったな。
とりあえず今は、俺とジオのタオルを拾って、それぞれの体を隠さなければ・・・
「あー!やっぱりジルさまってばこっちに入ってた!」
その瞬間、浴場内にヒナの声が響き渡った。
声の方を振り返ると・・・体にタオルを巻いた姿のヒナとシアが立っていたのだ。
なんで二人までこっちに来た?
「ゲン!何やってるんですか!」
シアの声と同時に俺は何かに激突した。
・・・力強くも柔らかいそれは・・・ジオの体だった。
直前でよそ見をしてしまった俺は、その勢いのままジオに激突し、絡み合う様に押し倒してしまったのだ。
「いたた・・・すまん、ジル、大丈夫か?」
俺は転ぶ時、咄嗟に自分より一回り小さいジオを庇う様に抱きしめてしまったらしい。
「どういう事ですか!ゲン!」
もしかして今の俺の状況は・・・シアたちの目の前で裸でジオと抱き合っているのではないだろうか?
俺の体の前面には、柔らかくて官能的な感触が密着していた。
硬く肥大した俺の股間のものが、何やら柔らかいものに圧迫されているが・・・これはジオの下腹部では?
・・・あとほんの少しでもずれていたら大変な事態になっていたところだ。
体を起こそうと手を付くと、何やらふにっと柔らかいものを握ってしまった。
そう・・・俺が握ってしまったのは・・・ジオの胸だったのだ。
「わっ!すまん、ジル」
その瞬間、俺の指の隙間から噴き出した白いものが俺の顔にかかり視界を奪われたのだ。
これはっ?・・・母乳か?
「隙だらけだぞ」
一瞬のうちに、俺はジオに腕を捻られ体を反転させられて締め付けられてしまった。
ジオに両手両足を後ろから固められてしまったのだ。
「最初の体当たりは良かったが、その後が隙だらけだ」
ジオが更に俺の手足を後ろに締め上げたので俺の体はあおむけになって海老ぞった体勢にされてしまった。
そして背中に押し付けられている柔らかい感触は・・・胸だ。
それだけじゃない。
ジオが両足を開いて俺の足に絡めて抑え込んでいるという事は・・・
腰の後ろに押し付けられている柔らかい部分は、ジオの脚の間のあの部分じゃないのか?
それを意識した時には、既に俺の股間のそれは、限界まで膨張し硬くなって天に向かってそびえ立っていたのだ!
「ゲンが!大変な事に!」
「ゲンさま!すごい大きさです!素敵です!」
「またもや僕の負けだよ。君の方が僕以上に精進してたようだね。今日はその羨ましい境遇を君に譲ろう」
俺は、みんなの前で恥ずかしい格好でさらし者になってしまったのだった。




