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勇者を名のる剣聖の弟子  作者: るふと
第八章 上級剣士
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265話 依頼と試験

「お前が俺の試験官だと?どういう事だ?お前はこの王国の人間ではないし、ましてや上級剣士ではないだろう」


「ところがそうでもないのさ。僕は以前この王国に留学していた事があってね。その時に試験に合格し、王国の上級剣士に名を連ねているんだよ」


 ・・・確かに、外国人でも剣術大会に出場は可能だし、上位入賞すれば剣士試験の受験は出来るはずだ。


「まさか、お前が上級剣士だったなんて・・・」


 だが、こいつになら勝てそうな気がしてきた。


「僕になら勝てそうな気がするかい?でも、試験では魔法は使えないからね。実戦で君が得意とする魔法剣無しで、果たして僕に勝てるかな?」


 確かにそうだ。前にこいつと共に依頼を遂行した時は、俺は常にストーンブレードを使っていた。


「そうだな、それなら今回の依頼は魔法は使わずに遂行してやる。その上でお前にも勝って上級剣士になってやる」


「はは、それではお手並み拝見といこう」


 ギルは相変わらずのキザったらしい仕草でそう言った。


「しかし、遠征中にいつでも試験が出来るのはいいが、立会人はどうするんだ?自己申告で済むとも思えないが?」


 俺はギルド長に尋ねた。


「それなら問題ない。そこにいるジルに立会人としての資格があるって話だ」


 確かに勇者であるジオは、上級剣士試験の立会人を引きうけるには十分な肩書を持っている。


 ・・・しかし、ジルの正体がジオである事はどこまで知られているんだ?


「この美しい方がどなたかは存じ上げませんが、相当腕が立つという事だけはわかります。共に旅ができる事を心より幸運と存じます」


 ギルがジオの手を取って、手の甲に口づけをかわそうとした。


「そういうのはいい」


 ジオはその手を振り払った。


「ははは、これはつれない・・・まあいいでしょう、きっと旅の時間が僕たちの距離を縮めてくれる事でしょう」


 いや・・・多分それは無いぞ。


「つまり今回の依頼はこの5人のパーティーという事になるのですか?」


 シアがギルド長に質問した。


「ああ、そういう事になるな。ヒナもそれでいいな?」


「はい!ぜひ参加させてください!」


 ヒナは元気よく手を上げた。


「あんたはこの事は知ってたんだな?」


 俺はジオに小声で聞いた。


「ああ、ララに頼まれていた」


 知ってたんなら先に教えてくれ。

 大方、師匠が俺を驚かそうと思って秘密にしてたんだろうが・・・




「シアさん!またご一緒出来て光栄です」


 ギルは早速シアの手を握りしめていた。


「こちらこそ、よろしくお願いします。いつぞやは助けて頂きありがとうございました・・・でもその、この手は離していただけますか?」


「おっと、これは失礼」


 ギルはシアの手を離し、敬礼をした。


「あの後も色々大変だったそうですね。お力になれず大変残念に思います」


「いえ、ゲンとヒナさんのおかげで、こうして無事に解決しましたので」


「それは良かった。次の遠征では必ずお役に立って見せます」


 ・・・いちいちセリフと行動が芝居がかってんな。


「そしてあなたはヒナさんですね?ずいぶん元気になられた」


「ええ、おかげさまで。今はこうしてゲンさまと共に充実した生活を送っています」


 ヒナは若干どや顔気味に、にっこりと微笑んだ。




「なるほど、ゲン殿はなかなかの甲斐性をお持ちの様だ。もしかしてお二人を妻に迎える予定という事かな?」


 ・・・そうはっきりと聞かれると答え辛いな。


「・・・ああ、一応・・・その予定だ」


「ゲンさま!一応じゃなくて、ちゃんと約束してくださいましたよね?」


 すかさずヒナに突っ込まれた。

 シアも、顔を赤らめながらも、少し拗ねた顔で俺の方を睨んでいた。


 ここは男として中途半端な態度は見せられねえな。

 恥ずかしがっている場合じゃねえ。


「ああ、そうだ!俺はこの二人を妻にする!必ずそうすると約束したからな!」


 俺は声を張り上げてギルに向かって宣言した。


「ゲン・・・」


「ゲンさま・・・」


 そんな俺をシアとヒナが嬉しそうに俺を見つめていた。



「ふふっ、かっこいいですよ、ゲン殿」


 ギルはにこやかに微笑んでいた。


「でも確か?この国の法律では平民には一夫多妻を認めていませんよね?・・・ああそうか!それで上級剣士になる事を懇願していたんですね?上級剣士になればこの国の貴族位が手に入りますからね」


 そうか・・・ギルが上級剣士って事は、この国において貴族って立場になるわけだ。


 ギルは少し考え込んでから話を続けた。


「なるほど・・・それでは万が一、ゲン殿が上級剣士試験に合格できなかったら、どちらか一人とは結婚できないという事ですね?そもそも貴族であるシア殿とは結婚できないでしょうから、その時はゲン殿の妻はヒナさん一人だけという事になる訳ですね?」


「それは!・・・確かにそうなるが、俺は必ず上級剣士になって見せる」


「それって、僕に勝つ事が出来れば・・・という事ですよね?・・・ふふ、おもしろい。つまり僕がゲン殿に負けなければ、僕にもシアさんを手に入れるチャンスが出来るという事ですね?」


「なんだと?」


「おや?君は自分が上級剣士になれなかった時には、シアさんを誰とも結婚させないつもりですか?」




 ・・・確かにこいつの言う通り、その時はシアは政略結婚で他国の王子に嫁がされる事になる。

 そんな事になるくらいなら、他に好きな奴を見つけて結婚した方が幸せなんじゃないのか?


 一瞬、そんな考えが頭をよぎった。


「ふふふっ、それでは賭けをしませんか?この遠征の間にゲン殿が僕に勝つ事が出来れば、当然、ゲン殿は上級剣士になってシアさんを手に入れる事が出来る。しかし、遠征が終わるまでの間に僕に勝つ事が出来なければ、僕にシアさんを譲るというのは?」



 ギルがとんでもない提案を持ち掛けてきたのだった。


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