262話 老婆と決着
おそるおそる婆さんの方に目線を戻すと・・・そこには裸の婆さんが両手を上げた姿勢で固まっていた。
幸いな事に婆さんは全裸ではなく、小さな下着を一枚だけ穿いていた。
婆さんの全裸を見なくて済んだ事に安堵したが、胸などが丸出しの婆さんをこれ以上見てはいけない気がしてすぐに目線を逸らした。
「き・・・きゃああああああ!」
一瞬呆けていた婆さんは、甲高い悲鳴と共に両手で胸を隠してしゃがみ込んでしまった。
一瞬だけ視界に入った婆さんの下着は、シアやヒナぐらいの年の少女が身に付けている様なかわいいデザインの下着だった気がする。
そしてもろに見てしまったが、婆さんの胸は意外とふくよかで張りがあり、更に先端の突起はきれいなピンク色だったのだ!
なんで婆さんのくせに胸と下着だけがそんなに若々しいのか不思議に思ったが、今はそんな事を考えている場合じゃない。
俺は抱え込んでいた婆さんのローブと杖を左手で掴み、右手のロングソードを婆さんの首筋に突きつけた。
「勝負あり!勝者、ゲン!」
レィアの掛け声で試験は終了した。
「小僧!早く儂のローブを返さんか!」
下着姿でしゃがみ込んでいる婆さんが、顔を真っ赤にして俺をにらみ上げていた。
不覚にもそんな婆さんが少しだけかわいく見えてしまった。
「ああ、すまん。ほら、返すぞ」
俺は左手に持っていたローブを婆さんに差し出した。
婆さんはそれを素早く奪い取ると、急いで身に纏い始めた。
「こら!レディが着替えておるんじゃ!後ろを向かんかい!」
「・・・ああ、すまん」
今さらな気がするが、俺はそそくさと後ろを向いた。
・・・あれだけ挑発的な事を言ってた割に、この婆さん、意外とうぶなのか?
「ゲン・・・ルール上は勝利ですが、故意では無いにしても女性を裸に剥いて勝利を得るのは騎士道精神的にどうかと思います」
レィアに注意されてしまった。
「まったくじゃ!乙女の柔肌を公衆の面前に晒すなど、どういう了見じゃ!おぬし、儂の事を毛嫌いしてるふりをして、まさか本当に儂の体を狙っておったとは!」
・・・乙女という歳でも無いと思うがそんな事を口にしたらセクハラで訴えられてしまう。
「コウ様も、少々悪ふざけが過ぎたのではないですか?」
「ああでも言わんとこ奴が本気にならんじゃろ?」
・・・今のやり問いからすると、試合中の発言は俺を挑発するのが目的で本気じゃなかったみたいだな。
それを悟った俺は、少しだけ悪戯心が沸いてしまった。
「ああ、そうだった。俺が勝ったんだから婆さんを抱いてもいいんだよな?」
「なっ、何を言っとるんじゃ!」
ローブを羽織って身だしなみを整えていた婆さんが動揺している。
「約束したよな?俺が勝ったらやらせてくれるって?」
「ふざけるでない!おぬしはあそこにいる彼女たちの様な若くてかわいいぴちぴちのおなごが大好きで、儂の様な年寄りには興味無いんじゃなかったのか?」
「いや、さっき婆さんの裸を見たら興味がわいた。俺が一人前になるまでみっちり練習に付き合ってくれるんだよな?婆さんの歳なら遠慮なく本番の練習が出来ru
よな?」
「ダメじゃダメじゃダメじゃ!そんな事をして万が一おぬしの子を身籠ってしまったらどうするんじゃ!」
・・・いや、どう考えてもその可能性は無いだろう?
婆さんは真っ赤になって反論しているが・・・それにしてもこの婆さん、素のリアクションがやっぱりどこか可愛いな。
「ちょっと・・・ゲンがエッチなのは知っていましたが、まさかこんなお婆さんにまで手を出そうとするなんて・・・」
「ゲンさまの守備範囲が・・・まさかこんなに広いなんて」
いつの間にかシアとヒナが傍に来ていて婆さんとの会話を聞かれてしまった。
「シア、ヒナ、もちろん今のは冗談だ」
「そうですか?冗談に聞こえませんでしたよ?」
「はい、ゲンさまはいつものエッチなものを見る時の目でお婆さんの体を嘗め回すように見てました」
・・・いや、さすがにそこまでではないだろう?
「なんという事じゃ!そこまでスケベだったとは!・・・仕方ない・・・約束は約束じゃ。ただし一回だけじゃよ」
婆さんがはにかみながら、上目遣いでチラッと俺を見上げたのだ。
「いや、本当に冗談だから!じゃあな婆さん。帰るぞ!シア、ヒナ」
もう、さっさとこのめんどくさい婆さんと離れた方が良い。
「俺は少し師匠と話してから帰る」
ジオは婆さんと話があるというので、ジオを残して俺たちは先に屋敷に向かった。
しかし、婆さんはジオの正体を知っているのだろうか?
「勝ち方はともかく、とにかくこれで残り一勝ですね」
帰り道で少し不機嫌そうなシアがそう言った。
「ああ、そうだな。あの婆さんの実力は本物だった。運が良くて勝てたようなものだ」
「運というか、ゲンさまのラッキースケベで勝てた様なものですよね?」
「本当に、ゲンがエッチな事に遭遇する確率は異常ですね。何がそうさせているのでしょうか?」
「さあな」
・・・本当にそんな偶然が続くのなら、なんで師匠とだけはそういう事が起きねえんだろうな?




