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勇者を名のる剣聖の弟子  作者: るふと
第八章 上級剣士
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261話 老婆と激戦

「さあて、おぬしに勝たせてやりたいのも山々なんじゃが、あからさまに手を抜いてもそこの審判に叱られてしまうからのう。悪いが本気で勝たせてもらうよ」


「ええ、八百長があった場合、試験は失格です」


 婆さんはレィアをチラッと一瞥してから、俺の方に迫って来た。


「望むところだ」


 やはり手足がローブに隠れた状態よりも今の方が婆さんの行動が読みやすい。

 婆さんの動きは速くなったが、それ以上に俺の方も有利になった。


 それに、そろそろ婆さんの格好にも慣れて来て最初ほど気にならなくなってきた。


「ほう、だいぶ戦いに慣れて来た様じゃの?まだ色香が足りんかの?」


 婆さんはそう言うと今までよりも膝を高く振り上げて走って来た。




 ・・・そんなに足を上げたら見えちまうじゃねえか!




「儂のローブの中が気になる様じゃな?どうじゃ、見たいか?」


「婆さんの下着なんか見たくねえ」


「ふふふ、下着なんか付けとらんよ」


「・・・・・なんだと!」


 ・・・いや、婆さんが下着を付けていようがいまいが、そんな事はどうでもいいのだが・・・


「どうじゃ、儂の秘密の花園に興味津々じゃろ?」




 ・・・そんな枯れた花園に興味は無い。




「そうじゃな・・・おぬしが勝った時の褒美だけでは不公平じゃな・・・そうじゃ!儂が勝ったら、儂がおぬしの童貞を頂くというのはどうじゃ!」


 婆さんが更に訳の分からない事を提案して来た。


「それじゃ勝っても負けても一緒じゃねえか!」


「いや、違うぞ、勝った方に主導権があるからのう」


「つまり俺が勝ったら拒否権があるって事だよな」


「なんじゃ、折角のチャンスを棒に振るというのか?まあよい・・・そこまで儂を拒むというなら仕方ない。まあ、どうせ儂が勝って、おぬしのその若い肉体を隅から隅まで堪能させて頂く事になるからのう」




 思わず背筋に悪寒が走った。


 ・・・これは絶対に負ける訳にはいかなくなったな。




「ゲンさま!絶対に勝って下さいね!そんなお婆さんに負けちゃだめですよ!」


 どうやら俺たちの会話が聞こえていたらしいヒナが必死に応援を始めた。


「ゲンさまに抱かれるのはシアさまが一番でわたしが二番なんですから!お婆さんの後なんて絶対に嫌です!」


「ちょっ、ちょっとヒナさん!そんな大きな声で!」


 シアが真っ赤になって慌ててヒナの口を塞いでいる。


「とにかく頑張って下さい!ゲン!」


 シアも応援してくれている。




 そして、その隣でジオも無言でうなずいていた。


 そうだ、連日のジオとの練習を思い出せ。

 この婆さんは確かに強いが、ここ最近のジオ程じゃない。

 落ちついていつも通りに対処すれば倒せない相手じゃないはずだ。


 俺はジオがそう言っているのを感じ取って、ジオにうなずき返した。



「ああ!ゲンとジルが目で会話しています!」


「二人はいつの間にそんな関係に!ジルさんはいったい何番目に入るつもりですか!」


 俺とジオのアイコンタクトに気がついたシアとヒナが騒ぎ始めた。


 ・・・いや、俺とジオがそういう関係になる事は絶対にないから。


「なんじゃと!おぬし、本当にあの黒髪のおなごが本命じゃったか!」


 ・・・なぜか婆さんも騒ぎ出した。


「これはやはり、おぬしを倒して、おぬしを儂の虜にして儂から離れられぬ様にしなければならない様じゃな」


 ・・・おい、童貞を奪うだけじゃなかったのか?


 俺がこの婆さんの虜になる状況は、どう考えても想像がつかないが・・・とにかく、このカオスな状況をクリアにするには俺がこの婆さんに勝つしかない!



 俺は婆さんに猛攻を仕掛けた。

 婆さんは相変わらず素早くトリッキーな動きで対抗する。

 しかし、その動きにもだいぶ慣れてきた。


 俺は婆さんの動きを捉えてロングソードを打ち込む。

 婆さんがそれを杖で逸らしつつ、俺の間合いに入りこんで来た。


 予想通り、婆さんは俺の間合いの内側に入り込み至近距離から勝負を決めるつもりだ。


 俺がひるんだところに追撃をかけるつもりだろうが、俺はそれを逆手に取った。




 婆さんを思いっきり抱きしめたのだ!


 この婆さんはおそらく身体強化を使っていない。

 技とスピードで戦っているのだ。


 がっちり抱きしめてしまえば俺の腕力には敵わないはずだ。


「何をする!放さんか!」


 さすがに俺にしっかりと抱きしめられた婆さんは身動きが取れなくなった。

 これで俺が主導権を握った訳だ。

 このまま締め上げるなり、投げ飛ばすなりすれば婆さんを倒すのは容易だろう。


 だが、これは剣術試合なのだ。

 締め技や投げ技で相手を倒してもポイントにならない。


 必ず剣でとどめを刺さなければならないのだ。



「これ!苦しいではないか!老人をもっといたわらんか!儂を抱きたいのならもっと優しく抱きしめんかい!」


 ・・・相変わらず口の減らない婆さんだ。


「悪いが少し手荒に行くぜ」


 俺は婆さんを抱きしめたまま持ち上げて地面に投げつける事にした。

 そして婆さんが起き上がる隙に剣を突きつければ俺の勝ちが決まる。


 少々卑怯な気もするがルール上は問題ないはずだ。


 俺は婆さんの腰を両腕でぐっと締め上げた。

 婆さんの体はガリガリかと思いきや、思ったよりも柔らかかったが、そんな事はどうでもいい。


 そして一気に持ち上げようとした時、ハプニングが起きた。

 たくし上げて縛っていた婆さんのローブがすっぽ抜けてしまったのだ!


 俺の腕の中には持ち上げる予定だった老婆の体は無く、丸まったローブと、一緒に絡め取ってしまった杖だけが残っていた。




 しまった!・・・これは婆さんをひん剥いちまったか?


 婆さんの全裸なんか見たくねえぞ。




 俺はそう思いながらも、おそるおそる婆さんの方に視線を戻したのだった。


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