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【9章開始】勇者を名のる剣聖の弟子  作者: るふと
第八章 上級剣士
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249話 師匠の苦悩

 ジオの裸を何度も見せられ、その度に興奮してしまった自分に良く分からない自己嫌悪を感じてしまっていた。


 いや、別に男の裸を見て興奮した訳じゃないんだが、どうしても複雑な気持ちになってしまう。


 見た目だけなら今のジオは、師匠に匹敵する美貌とスタイルの良さを持っている・・・多分。


 その裸を見て興奮ししてしまうのは男として当然だ。

 理屈ではわかっているのだが、その正体が男だと知っているにもかかわらず興奮してしまう自分の体に納得がいかないのだ。




 あれから俺は師匠達の旅の詳細を聞かされた。


 いくつもの不思議な国を旅して回った師匠達はその中で、空に浮かぶ大陸に行ったそうだ。



 

 そこは女性しかいない国だったので、混乱を避けるため師匠はジオとルルに魔法をかけて一時的に女性の体に変えていたのだそうだ。

 だが、その後色々な事情があり、ジオは今の成長した姿になり、しばらくその姿で活動していたそうだ。

 その国を去る時にジオとルルは元の姿に戻ったが、ジオは自在に今の女性の姿に変わる能力を身に着けたのだという。




 そして、なんと!


 あろう事か師匠とジオはその国で子供を産んだそうなのだ!


 その国では女性は一人で子供を産む事が出来るらしいのだが、国から出してもらう条件として、子供を産んで、その子供を国に残していかなければならなかったのだそうだ。


 師匠がそんな決まりに素直に従う事は無いだろうと思ったら、案の定、無理やり子供たちを連れてその国から脱走を試みたのだが、その国で生まれた子は国外に出ると死んでしまう体質だったらしく、泣く泣く子供たちと別れを告げてきたという結末だったそうだ。




 その後、師匠は子供たちと別れた事による心の隙間を埋めるために、砂漠の帝国の皇帝との間に子供を作ろうとしたそうなのだが、それもタイミングが合わず、成就できずに終わったそうだ。




 そして、その果てに、俺と子供を作ろうという暴挙を思いついたそうだ。




「ただ子供を作るためだけの相手をしてくれだなんて、こんな非常識なお願いを受け入れてくれるのはゲンくらいしかいないと思ったんだよ」


「いや、そんな事は無いぞ。師匠なら世の中のほとんどの男が喜んで承諾してくれたんじゃないのか」


「でも、私にだって選ぶ権利はあるでしょ・・・だって、子供を作るためには、あれをしないといけないじゃない? ジオ様とシン以外の男の人とそういう事をするのってやっぱりやだもん!・・・でも、ゲンとだったら・・・嫌じゃないかもって思ったんだよね」


 師匠は顔を赤らめながら俺の方をチラッと見た。



 ・・・それって?どういう・・・



「でも落ち着いて考えたらシアちゃんに悪いもんね。ヒナちゃんは気にしないだろうけどさ。シアちゃんは何と言っても『嫉妬の魔女』だからね。怒らせると怖いかもしれないよ?」




 ・・・落ち着いて考える前に勢いで突っ走ってしまえば今頃は・・・



 つい、そんな事を考えてしまった。


 この場にシアがいなくて良かった。




「まあ、シンとはまた機会があるだろうし、ジオ様が成長したらいくらでも子供が作れるからね。焦らない事にしたよ!」


  ちょっとは焦ってくれても良かったんだが?


「それに・・・ゲンがもう少し大人になったら・・・もしかしたらゲンともそういう事もあるかもしれないしね!」


 なんだと!


「あはは!もちろん冗談だけどね!」


 どっちなんだよ。




「それにしても、ゲンが本当にヒナちゃんとも婚約しちゃったなんてね。びっくりだよ。ゲンはシアちゃん一筋だと思っていたのに」


 ・・・師匠、あからさまに話題を逸らしたな?


「仕方ねえだろ・・・約束しちまったんだから」


「まあ、優しいゲンの事だからヒナちゃんをふるなんて出来ないとは思ってたけどね」


 ・・・それって、暗に俺の事を優柔不断だと思ってたって事だよな?


 確かに、師匠の事をこれだけ引きずってるんだから、否定できないところが悔しい。


「でも、この王国では貴族になれば一夫多妻は法律で認められているから、ゲンが上級剣士になれば問題は全て解決だよ!」



 そう、その問題が残っていたのだ。



「それなんだが、シアのお見合いまでもう時間がねえ。師匠、短期間で俺を徹底的に鍛え上げてくれ!」


 今回はしばらくの間王国に滞在できるという話だった。

 俺たちも学院に戻ろことになったし、師匠に鍛え直してもらう丁度いい機会だった。


「その事なんだけど・・・私もほったらかしだった弟子を鍛えてあげたいところだったんだけどさ、ずっと旅に出ていたせいで、色々仕事が溜まっちゃって、あまりゲンの相手をしてあげられそうにないんだよね」


 そうか・・・師匠は表向きは勇者だし、この国の重要なポジションに就いている。

 留守の間はレン達がフォローしていたが、師匠にしか処理できない仕事が手付かずで溜まっているという事か・・・


「時間がある時は出来るだけゲンの相手をしてあげようと思うんだけど、それだけじゃ十分な練習時間は確保できないよね」


 そうだな・・・残された時間は僅かしかない。2回の上級者試験を確実に勝利しないと、シアは他の男のものになってしまうかもしれないのだ。


「そこで、私よりもっとすごい人にゲンの指導をお願いする事にしたよ!」


 それって・・・まさか?




「俺がララの代わりにお前の指導をする事になった」




 ・・・なんと、目の前にいる黒髪の美少女・・・真の勇者のジオが臨時で俺の師匠になったのだった。


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