248話 冒険の報告
「へえ、ジオ様は今度は女の子になってしまったんですね?」
「あのちっちゃかったジオ君がこんなにかわいくなるなんて!」
お互いの冒険の話を交換しようという事になって、後からやってきたシアとヒナにジオの説明をしたところだが、同年代の少女になったジオの事が気になった二人が、ジオに詰め寄ったのだ。
ジオの両脇にシアとヒナが陣取って、美少女三人が並んでいる。
それだけでなく、顔を近づけたり体を触ったりしているのだ。
「そいつ、見た目は美少女だけど中身は男だからな。ダメされるなよ」
二人に対して言った言葉だが、自分自身に対しての戒めでもある。
さっきはジオの裸を見て不覚にも興奮してしまったのだ。
男だとわかっていてもこの美少女の姿は危険だ。
それに本人に危機意識が無いのも問題だ。
元々世界最強の存在だ。
ジオを力づくでどうにかできる男などこの世界に存在しないだろう。
おまけに師匠以外の女性を異性として全く意識していないのだから、シアたちが遠慮なくちょっかいを出しても無頓着なのだ。
「あの、胸を触ってもいいですか?」
ジオが無頓着なのをいい事にヒナがとんでもない事を言い出した。
「別に構わないが?」
「では遠慮なく」
・・・少し話遠慮しろ。
「わあ!大きい!それに形もいいですね!・・・もしかしてララさまより大きくないですか?」
ヒナ・・・それは師匠の前で絶対に言ってはいけないセリフだ。
案の定、師匠の方からただならぬ殺気が漂ってきた。
「わたしも触ってもいいですか?」
シアも気になっていたらしく、ジオがうなずくと胸に触った。
「本当です。とても男の人だったとは思えないです。・・・ううっ、ヒナさんだけでなく男性のジオ様にも負けるなんて・・・どういった魔法を使ったのですか?」
「それは私から説明するね」
シアの質問に師匠が答えた。
「元々男性と女性の体の違いって、ほんの少しのスイッチの切り替えで差が出る程度のものだから、生まれる時にそれが切り替わっていたら別の性別になっていた可能性があるんだよ。この魔法はその違いだけを切り替えて、別の性別に生まれていたらそうなるであろう体に作り替える魔法だね。だから、ジオ様がもし女性に生まれていたらこの体形になっていたって事だよ」
「そっか・・・胸だけを大きくしたりは出来ないんですね?」
「そういう魔法も無くは無いんだけど、それってもう自分じゃなくなるからね」
そうだよな、そんな魔法があれば師匠が使っていてもおかしくは無い。
だが、師匠はそういうズルが一番嫌いだからな。
「そうですよね・・・これからの成長に期待します」
「そうだよ!シアちゃんはまだ発展途上なんだから!・・・私なんて、もう成長の望みが無いんだからね」
完全な魔女として覚醒している師匠は、そこで成長が止まってしまったのだ。
一方で亜魔女のシアは、ゆっくりだが成長はするのだ。
「ララ、そう悲観するな。俺は今のララの胸の大きさが一番好きだ」
「ありがとう、ジオ様・・・でも自分より胸の大きな人にそう言われても・・・ちょっと複雑です」
俺だって、師匠の胸の大きさは今の大きさが理想的だと思ってる。
シアの胸も師匠と同じくらいの大きなまで成長すればそれ以上は必要ないと本気で思っているのだ。
・・・だが俺が今それを口にすると大惨事になるので、あえて黙っておく。
「ゲンも今のわたしの胸が大好きだって言ってくれました」
ところがシアの方からその話を振ってきた。
「ああ、そうだな。ジオの胸は確かに大きかったが、シアのかわいらしい胸の方が俺は好きだ」
「・・・まるでジオ様の胸を直接見たことがある様な言い方ですね?」
シアの目がちょっとすわっている。
しまった!言い方を間違えた。
「さっき俺がうっかりして裸を見せてしまった」
俺がどう誤魔化そうかと言葉を考えていたら、先にジオに言われてしまった。
「ゲンってば!再会した直後にもう女性の裸を見てるなんて!どれだけ女性の裸が好きなんですか!」
やっぱりシアが怒り出した。
「まあまあ、シアさま。それがゲンさまというものですよ?その分わたし達も見せればいいんですよ!」
ヒナはそう言って、早速ブラウスの胸元のボタンを外し始めた。
「ちょっと、ヒナさん!抜け駆けはダメです!それならわたしも見せます!」
シアもそう言ってワンピースの袖から手を抜こうとし始めた。
「ええと・・・そうしたら私もゲンに裸を見せた方が良いのかな?」
師匠がそう言ってスカートのすそをめくり上げ始めた。
太腿があらわになって、もう少しで下着がみえそうになる。
・・・俺の目は、つい師匠の太ももの付け根にくぎ付けになる。
「「ララ先生はダメです!!」」
シアとヒナがハモってそう言った。
「あはは!冗談だってば!でも、いつものこの展開、すっかり楽しくなっちゃって!」
・・・師匠、わざとやってたのか?
「目線を逸らそうとしてるふりをしながら、しっかりと見てるゲンがかわいくって!いかにも思春期の性欲を持て余して悩んでる男の子って感じで、ついからかいたくなっちゃうんだよね?」
「それはすごく分かりますけど!ゲンはわたしだけ・・・いえ、わたしとヒナさんだけのものです!」
「あはははは、もちろん本当にゲンに見せるつもりはなかったけどね」
やっぱり俺に見せるつもりはないのか・・・
・・・俺はこれからもずっとこうやって師匠に焦らされ続けていくのか・・・
すると後ろでパサリと布の落ちる音がした、
みんなが振り返るとそこには美しい裸体をさらした少女が立っていた。
「俺も裸になるべきだと思ったのだが・・・違ったか?」
・・・一人空気の読めていないジオだった。




