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勇者を名のる剣聖の弟子  作者: るふと
第七章 魔女の夢
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244話 記憶の融合

「ヒナ・・・大丈夫なのか?」


 ヒナは自身の不幸な記憶と負の感情、それに加えて他の巫女たち記憶や感情も全て取り込んでしまったのだ。


 さっきまでのシアの様になってしまうんじゃないかと不安があった。


「・・・大丈夫です。戻って来た記憶は全て知っている内容でしたし、彼女の感情は・・・思ったよりも穏やかになっていました」


「ヒナさん、今のヒナさんはどちらのヒナさんなのでしょうか?」


 シアもヒナの事を心配している。


「どちらでもあります。元々持っていた記憶と、二つに分かれた後の記憶、ゲンさまとすごしてきたわたしと、シアさまの中にいたあたしの意識は一つに混ざり合いました。それに他の巫女たちの記憶も今は全て自分の実体験としてわたしの中に有ります」


「ヒナさんはそれだけの過去を背負って辛くはないのですか?」


 シアが心配そうにヒナに尋ねた。


「もちろん一つ一つの記憶を思い起こすと、悲しみや悔しさ、怒りや憎しみの感情を思い出してしまいます。でも、それはもう過ぎた事です!それら以外の楽しかった思い出や、幸せに満たされた思い出もたくさん増えました。それに今は、これからの人生がきっと楽しい事でいっぱいだと思うと、むしろわくわくしてじっとしていられないくらいです!!!」




 うん・・・やっぱり師匠が乗り移ってるよな、これは・・・




「ララさまならこういう時でも何とかするだろうって考えると、大抵の事は何となるんじゃないかなって気持ちになるんです!」




 ・・・やっぱりそうだった。




「ヒナさんは強いですね・・・わたしにはそれら全てを受け止める事が出来ませんでした」


 シアは自分で全て解決しようとした事がやり遂げられなくて、それが少しだけ悔しいのだろう。

 自分が出来なかった事をやり遂げたヒナに、尊敬と少しだけ劣等感を感じてしまった様だ。


「それは仕方ないと思います。あの様な残酷な過去をわたしは現実に経験してきましたが、シアさまは記憶の中で体感しただけで実際に経験した訳ではありませんし、それを受け入れるだけの時間もありませんでした。そういうのって、頭で理解していても、心が受け入れて消化するにはどうしても時間がかかるんです。こう見えてわたしの方がシアさまよりお姉さんなんですから!」


 そうだった・・・実際の年齢はヒナの方がシアより二つ年上だったな。


 こうして二人が並んでいると、見た目的にはヒナの方が少し幼く見えるのだが・・・




 ・・・しかし・・・体のある部分はヒナの方が少しだけ成長しているな・・・




「ゲン!今わたしとヒナさんの胸を見比べて失礼な事を考えましたね!」


 シアが慌てて胸を隠して、真っ赤になって俺を睨みつけた。


「いや!見てない!見てないぞ、胸なんて!」


「うそです!明らかに目線がわたしとヒナさんの胸を彷徨ってました!」


 ・・・やはりシアには嘘はつけないな・・・


「・・・すまん・・・二人の胸が魅力的過ぎて・・・」


「わたしはゲンさまにならいくら見られても大丈夫ですよ?」


 ヒナの方は、全然胸を隠そうとしていなかった。


「ヒナ・・・俺に見られても恥ずかしくないのか?」


「もちろんすごく恥かしいですよ!・・・でも、その恥かしさが、たまらないというか・・・恥ずかしさが気持ち良さにも感じてしまうような・・・」


 ヒナがそう言いながら何だか色ぽくなってるんだが・・・?


「わたしだって!ゲンになら見られても平気です!」


 シアが負けじと胸を隠していた手をどけて、俺に向かって胸を突き出してきた!


 ・・・何を張り合っているんだ・・・


 シアの小ぶりだが形の良い胸を久しぶりに間近でしっかりと見てしまった。


 いや、ヒナも別に巨乳という訳でも無くてシアとほとんど変わらないのだが、よく見ると僅かに大きいという程度のわずかな差なのだが・・・


「ゲン!見られても平気と言いましたが、そんなに真剣に見つめないで下さい!


 ・・・どっちなんだ・・・


 だが、恥ずかしさを我慢して無理して俺に見せようとするいじらしい仕草がいつものシアで、何だか安心した。




「わたしなんてもっと大事なところを見られても平気です!」


 すると、ヒナが謎のマウントを取り始めた。


「あっ!そうです!ヒナさんが言ってた、そこを見る約束をしたってどういう事ですか!ゲン!」


「あっ、・・・ああ、その話か」




 一番聞かれたくない事を聞いてきたな・・・




「それはですね、先日わたしが男の人に襲われて、その時は間一髪で助かったんですけど・・・大事なところをその男の人に見られてしまって落ち込んでいたら、ゲンさまが、他の男の人に見られたら自分がその何十倍も見てやるから元気を出せって励ましてくれたんです!」


「・・・ふーん・・・そんな約束をしたんですね?」


「いや、あれはその場の勢いで・・・」


「そんな!ゲンさまは勢いでわたしの気持ちを弄んだんですか?」


「いや、そんな事は無い。約束は約束だ、少なくともヒナが他の男に見られた回数の十倍は必ず見てやるから」


 ・・・あの時はヒナを落ち着かせるために勢いで言っちまったが・・・とりあえず10回見れば約束は果たした事になるだろう。


「やったー!本当ですね!じゃあ・・・とりあえず軽く見積もっても一万回は見て貰えるって事ですね!」




・・・なんだと?




「・・・ちょっと待て!どうしてそうなった!」


「だって、わたしが他の男の人に無理やり見られた回数の十倍以上見てくれるって約束ですよね?」


「確かにそう言ったが・・・今回の旅の途中で1回見られただけなんだから10回見ればいいはずだよな?」


「いいえ、記憶の戻った今となっては、かつて毎日の様に男の人の相手をさせられていた回数を全部足さないといけませんよね?それに他の巫女さんたちの記憶も、今ではわたしにとっての実体験として心に傷跡が残ってるんです。ですから当然その分もですよね?」


 ・・・あれっ?・・・そうなるのか?


「いや、さっき過去の事はもう大丈夫って言ってたよな?」


「それはゲンさまとの約束があるから大丈夫って事ですよ?・・・もしそうでなければ、わたしは過去に押しつぶされて・・・」


 ヒナがあからさまなうそ泣きのポーズをとっている。




「・・・ゲン・・・ちょっといいですか?」




 ・・・そして・・・シアの目がすわっていた・・・




「・・・すまん・・・シア・・・」




「もう!とりあえず詳しい話は現実に戻ってからにしましょう。このままだと落ち着きませんし」


 そういえばここはまだシアの精神世界の中だった。


 ・・・しかも三人とも全裸のままだ。


「強制的に元に戻しますよ」




 シアがそう言うと、その瞬間に俺の意識は現実の体に戻っていた。


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