240話 嫉妬の魔女覚醒
やった!シアが覚醒した!
立ち上がったシアは、全身の傷や皮膚の爛れを一瞬で直し、元通りの美しい姿に戻っていた。
まさに天使と言って過言ではない程の、芸術的な美しさのシアの裸体に、俺は一瞬で目を奪われた。
・・・しかし、天使の様な体とは裏腹に・・・その表情は・・・みるみる鬼の様な形相に変っていった。
「ゲン!わたしを捨て置いて、ヒナさんとあんな楽しそうな事をするなんてひどいです!」
姿は元に戻ったが、シアの様子が何かおかしい。
「ヒナさんも、助けてあげた恩をこんな形で返すなんて!・・・二人とも、許せない!」
やっぱり、言動がいつものシアじゃないぞ?
「シア、正気に戻ったんじゃないのか?」
「ふふふふふ、この時を待っていました!」
その時、シアの後ろにいたもう一人のヒナが笑いだした。
すると向こうのヒナも身に付けている装備などがすぅっと消えて、全裸になった。
そして、同じく全裸のシアの後ろに立って、背後からシアに抱きつくと、後ろからシアの頬に手を回して、頬を撫で回し始めた。
「シアさまを絶望の底に引きずり込んで、完全に生きる気力を無くしたところで意識を奪う予定だったのですが、嫉妬にかられて我を忘れたこの瞬間でもよかったのです。おかげであたしは、こうしてシアさまの意識と融合する事ができました」
そのままシアと体が重なって・・・シアの中に消えてしまったのだ。
シアから発せられている感情が、憎悪や妬みなど、負の感情が合わさって、これまでよりもさらに強烈な力の奔流となって俺達に襲いかかる。
・・・これは・・・ヒナや巫女たちから切り離された負の感情が、シアと完全に融合してしまったという事だろうか?
「ヒナ、どうなったんだ?これは」
「あはははは、失敗・・・しちゃいましたかね?」
「あははじゃない!どうすればいいんだ?」
シアからはとてつもない殺気と魔力を感じる。
「そうですね?・・・とりあえず・・・・・・逃げましょう!」
ヒナはそう言うと俺の手を引いて走り出した。
「逃げるって・・・シアはどうするんだ?」
「一旦落ち着いてから考えましょう!」
「こうなる場合は考えてなかったのか?」
「何か刺激を与えれば、解決の糸口が見えてくるかと思っただけだったんです!」
「そんないい加減な作戦だったのか!」
「・・・ゲンさまとエッチがしたかったっていうのが本音なんですけど!でもシアさまが目覚めなくなるという最悪の状況は回避しましたよね?」
・・・思いっきり本音を言ったな。
「これはさらに悪くなってないか?」
「一緒に何とかしましょう!ゲンさま!二人なら何とかなりますって!」
俺とヒナは手をつないだまま全力疾走しながら、そんなやりとりをしていた。
・・・全裸のままで・・・
「逃がしません!二人とも!」
そこにシアがウィンドスライサーの魔法を打ってきた!
手をつないだまま、一緒にジャンプしてこれを躱す。
背後から次々と襲い掛かって来るウィンドスライサーを俺とヒナは手を繋いだまま右へ左へと避けたり、飛び上がって躱したり、ぴったり息の合った行動で躱していく。
さすが毎日打ち合いをしてただけあってお互いの行動が手に取るようにわかる。
時には俺がヒナを抱き寄せたり、ヒナが俺の肩に乗っかったり、様々なコンビネーションでシアの攻撃を躱していく、
「逃げながらもいちゃいちゃするなんて!ますます許せません!」
・・・別にいちゃいちゃしていた訳ではないんだが・・・
全裸で手を繋いで、仲良くきゃっきゃうふふしている様にでも見えていたのだろうか?
「このままでは躱しきれません!迎撃しましょう!」
ヒナはそう言って俺の手を放すと、その両手にはすっと二本のショートソードが現れた。
魔法で呼び寄せたのだろうか?
そして、それでシアのウィンドスライサーを打ち返したのだ!
俺もストーンブレードを出現させて、シアのウィンドスライサーを両断する。
しかし、シアは次々とウィンドスライサーを放ってくる。
俺とヒナは様々な方向から襲ってくるそれを、休みなく打ち払う。
「ヒナ!背中合わせで対処するぞ!」
「わかりました!」
俺とヒナは、背中合わせで立って、それぞれの前方のウィンドスライサーに対応する事にした。
この方が各自の請け負う方向が限定されて対応しやすいはずだ。
予想通り、背後を気にしなくて良くなった分、対応が楽になった。
とは言っても油断はできない。
シアは複数の魔法を同時に制御できるのだ。
一瞬でも気を抜けばその瞬間に、この前のヒナの様に体が分断されてしまう。
一つでも打ち漏らすわけにはいかないのだ。
だが、シアの攻撃が次第に激しくなってきて、だんだん対応が厳しくなる。
僅かに反応が遅れた俺は、半歩さがって、魔法を打ち返した。
その時、丁度ヒナも同時に後ろに下がったのだろう、俺の尻にぷにっとした柔らかいものが触れた!
「ひゃんっ!」
「おおう!」
今の気持ちいい感触は・・・ヒナの尻か?
身長差のせいで、ヒナのプリッとした尻が、俺の尻をしたから持ち上げている状態で押し付け合っている。
そしてシアの攻撃が途切れないため、俺もヒナも一歩下がった状態から再び前に踏み出す事が出来ず、背中を密着させたままで戦わざるを得ない状況になってしまった!
「あんっ!ゲンさま!動かないで下さい!」
「ヒナこそ、俺の尻に尻を割り込ませるな!」
「ゲンさまこそ!・・・ああんっ!お尻の間が変な感じですっ!」
俺もヒナもシアの猛攻に対処するために常に体勢を動かさなければいけない。
尻を押し付け合った状態でお互いが上下左右に動くものだから、二人の尻は常にこすれ合っている状態になってしまったのだ。
「おおうっ!ヒナ!尻を押し付け過ぎだ!」
「そんな事言われても、シアさまの攻撃が激しすぎて!あんっ!」
尻と尻をこすり合わせるのがこんなに気持ちいいとは知らなかった・・・・
・・・いや、そうじゃなくて!
この状況を何とかしないと・・・
「あああああんっ!ゲンさま!気持ち良すぎて、もう、立っていられません!」
俺の方も、尻からの刺激で、前側がものすごい事になっているのだ!
「戦いの最中にまでイチャイチャをやめないなんて!もう本当に許せません!」
・・・シアがますますいきり立ってしまった・・・
・・・これって、さっきから、さらにシアを煽ってるんじゃないのか?




