234話 少女の復讐
※文章中に性的な表現と不快な表現があります。
今俺の目の前でシアを凌辱している男は、かつて現実でヒナを辱めた男だったのだ。
シアは今、かつてヒナから剥ぎ取った記憶までも自分の記憶として取り込んでしまっているのだ。
ヒナは覚えていないはずだが、今この男がシアにやっている行為は、現実ではヒナに対して行なわれていた行為なのだ。
その時のヒナの姿も重なって、俺の怒りは頂点に達していた。
決してこの男を許す訳にはいかない。
「貴様ぁっ!シアから離れろ!」
俺は進路の妨げとなっている男どもを一斉に薙ぎ払い、シアにとりついている男を直接ぶっ叩いてやろうと一気に距離をつめた。
・・・その時・・・俺の目の前でその男の首が胴体から切り離されて、ゴトリと地面に落ちた。
・・・何が起きた?・・・
「こいつ!許さない!あたしだけでなくシアさまにまでこんな事を!」
・・・ヒナがウィンドスライサーで男の首を切断したのだ。
ヒナは今まで見た事も無い様な怒りの形相をしていた。
・・・ヒナ・・・こいつにされた事を覚えているのか?・・・
・・・いや、そうか、このヒナはシアの記憶の中のヒナだ。
シアが覚えているヒナの記憶が反映されているのか?
俺は今まで見た事の無いヒナの気迫に一瞬怒りを忘れていた。
「ゲンさま!こいつら全員殺しましょう!」
そう言いながら、ヒナは既に何人もの男の首を切り落としていた。
「そうだな・・・こいつらに生きる価値など無い」
そうだ・・・何も躊躇する事は無かった。
所詮これらは現実の人間じゃなく、シアの記憶の中の幻影だ。
いや、現実だったとしても、もはや容赦するつもりは無かった。
俺も、ストーンブレードを刃の付いたバージョンに持ち替えて、周囲の男たちを切り捨てていった。
シアをこんな目に遭わせた奴らを、一人残らず皆殺しにしてやりたかった。
そして、俺とヒナは、瞬く間に大勢の男たちを全て切り殺していた。
最後に残ったのは、シアの背後で壊れたおもちゃの様に腰を動かし続けていた男だけだ。
その男をヒナが魔法で切り刻むと、支えを失ったシアはその場にしりもちをついた。
倒れたシアの上には、頭の無くなったさっきの男の胴体が覆い被さっていた。
シアの前にたどり着いた俺は、首の無い男の死体をシアから引きはがし、後ろに投げ捨てた。
これでシアの周りから、男どもは一人もいなくなった。
俺の目の前にはシアが仰向けに倒れている。
さっきの男に無理やり足を開かされた体勢のまま固まっていた。
シアは足を開いたまま閉じもせず、泣きはらした顔で俺とは目を合わせずに話し始めた。
「・・・これが・・・今の私の姿です・・・」
正直俺は、目を背けたい気分だった。
だが、目を逸らしてはいけないと思った。
間近で見たシアの全身は、遠くから見た時よりも、更にひどい状態だった。
全身の傷跡は生々しく、皮膚の病もひどい有様だった。
あの、天使の様に美しかったシアの肌は、病に侵され見る影もなく荒れてカサつき、老人の肌の様になっていた。
・・・そして、膝を立てて両足を大きく左右に開いたままの体勢のため、シアの大事な部分は丸見えになっていた。
本来なら、シアのこんな姿を見せられたら、下半身が限界を突破して暴発しそうになっていたところだ。
だが、俺の下半身は、今のシアの姿を見ても何も反応していなかった。
シアのその部分は、肥大して醜く変形し、変色して一部の皮膚が爛れて腐りかけていた。
更に噴き出した膿と男どもの体液がそこから流れ出し、何とも我慢できない腐臭を放っていたのだった。
かつての小さく可憐で、芸術品の様だとさえ思っていたシアのその部位は、見る影もなくなっていたのだった。
「・・・シア・・・何でこんな事に・・・」
俺は何と声をかけていいか、わからなくなっていた。
それほどまでに、シアのその姿は衝撃だった。
これは現実の姿ではないとか、仮に現実だったとしてもシアの治癒魔法ならこの状態からでも体を元通りに治せるとか、そんな事は理性ではわかっているのだが、感情がついて行かなかった。
シアは俺と目を合わせずに、横を向いたまま、ひたすら涙を流し続けていた。
おそらくシアも俺と同じ心境なのだろう。
いっそ自分という存在をこの世から消してしまいたいと思っているのかもしれない。
「見ての通りです・・・こんなわたしを見て、幻滅したでしょう?・・・わたしはもう、ゲンと結ばれる資格がありません・・・このまま・・・わたしの事は忘れて、他の幸せを見つけて下さい・・・」
「シア!何を言っている?これは現実じゃないんだ!目を覚ませ!シア」
シアは俺の呼びかけには答えず、ただただ涙を流し続けていた。
・・・俺は・・・どうすれば、この状況のシアの心を救う事が出来る?
何と声をかければシアを助ける事が出来る?
考えても正しい結論が導き出せず、何も言葉をかける事が出来なかった。
すると突然、ヒナがシアの背後に回った。
そしてシアを後ろから羽交い絞めにしたのだ!
「何をしている?ヒナ?」
ヒナの突然の行動に俺は驚きを隠せなかった。
「・・・ヒナさん?・・・何を?」
シアも俺と同じで、ヒナの突然の行動に困惑していた。
「ゲンさま!何を迷っているんですか!このままシアさまを抱いて下さい!」




