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勇者を名のる剣聖の弟子  作者: るふと
第七章 魔女の夢
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231話 記憶の迷宮

 竜を倒した事によって、第八階層の聖域に繋がる扉が開いた。



「やりましたね!ゲンさま」


「ヒナのおかげだ。助かった」



 ここはシアの記憶の中だが、おそらくシアは聖域の柩の中にいる気がする。




 俺たちは扉に向かって走った。


 竜が倒された事により、夥しい数の魔物が出現したが、それらを蹴散らして俺とヒナは扉の中に飛び込んだ。




 ・・・しかし・・・そこは第八階層の聖域ではなかった。



「ここは・・・第七階層か?」


 俺は再び第七階層の入り口に戻されていた。


「・・・これは、ゲートの繋がりが意図的に変更されていますね」


「どういう事だ?」


「やはり、シアさまが、侵入を妨害しているのではないかと思います」


「なぜだ!シアが俺を遠ざけているというのか!」


「ゲンさまだけを遠ざけている訳では無いのかもしれませんが、自分の意識に他者が干渉する事を拒んでいるのではないでしょうか?」


「どうすればいい?」


「・・・考えがあります。とりあえずもう一度第八階層へのゲートに向かいましょう」


「わかった」




 俺とヒナは襲い掛かる魔物達を蹴散らしながら、第八階層へ繋がるゲートを目指した。


 あいかわらず魔物の出現数はとんでもないが、ヒナのサポートがあるおかげでさっきよりも楽に進める。


 そして、聖域にいる例の風の魔物と三度目の対決となる。


「ヒナ!さっきと同じ様に頼む!」


「はい!まかせて下さい!」


 ヒナは迫りくる風の刃の全てに魔法をぶつけて相殺していた。


 ・・・これはやはり、風の魔物が使っている魔法とヒナが使っている魔法は同じものじゃないのか?


 さっきは気にしていなかったのだが、あらためて注意して音を聞いてみると、風の魔物が使っていた風の刃と、ヒナのウィンドスライサーは同じ風切り音を発していたのだ。

 そして、風の魔物が使っている風の大剣とこれを受け止めたヒナの魔法も、同じ魔法に感じた。


 ・・・つまりヒナは、この風の魔物と同じ魔法が使えるって事か?何か関係があるのか?


 そんな疑問が頭をよぎった。


「ゲンさま!とどめを!」


 だが、そんな事は今はどうでもいい。

 ヒナが作ってくれたチャンスを無駄には出来ない。


 ヒナのサポートで、隙の出来た風の魔物を俺は一刀両断にした。

 確かな手ごたえがあり、風の魔物の殺気が消えていった。


「助かった。ヒナ」


「どういたしまして。それよりも早くゲートに向かいましょう」


「ああ、そうだな」



 俺とヒナは再び第八階層へのゲートの前に立った。

 だが、このまま中に入っても、さっきと同じ様に竜のところへ飛ばされてしまう可能性が高い。


「では、今回はあたしがゲートを開きます」


 ヒナが解錠の魔法を発動する前に、何かの魔法でゲートの状態を調べていた。


「・・・やはり・・・このままでは再び竜のところへ繋がってしまいます」


 やはりヒナの言う通りゲートの接続が変えられているという事か?


「どうすればいい?ヒナ」


「ゲンさまはシアさまの事を強く念じて下さい。あたしがシアさまの元へ繋がる様にゲートを変更します」


「そんな事は出来るのか?ヒナ」


「はい、ゲンさまとシアさまの繋がりが強ければ大丈夫です」


「分かった、やってみよう」


「それから・・・あの・・・」


「なんだ?」


「できれば後ろから・・・あたしの事を抱きしめてもらえるとより確実です」


 ヒナはちょっと照れながらそう言った。


「了解した。そうする」


 俺は言われた通り、ヒナを背後から抱きしめた。

 そして、シアの事を強く念じる。


「では、いきます」


 ヒナがゲートに何か複雑な魔法操作をしている様だ始めた。

 だが、かなり苦戦している様に見える。


「どうだ?ヒナ」


「なかなか強固なプロテクトがかかった複雑な魔法で解除が難しいです。ゲンさま、もっと強くシアさまの事を思って下さいますか?その思いをあたしにぶつけるつもりでお願いします!」


「わかった」


 俺はヒナに言われた通りシアの元へ行きたいと強く願った。


「・・・あの・・・ゲンさま?・・・ちょっと強く締めすぎです」


「ああ、すまん。大丈夫か?」


 思わずヒナを抱きしめる腕に力がこもっていた。

 ヒナはシアと体格が似ているから、ついシアを抱きしめている気分になっていたのだ。


「はい、大丈夫です。もう少しで何とかなりそうです」


「そうか、頼む」


 なぜ、この様な魔法が使えるのかわからないが、今はこのヒナだけが頼りだ。


「出来ました!多分これでシアさまのところに行く事が出来ます」


「そうか!助かった」


 どうやったのか気になるが、説明を聞くのは後でいい。

 今は一刻も早くシアの元に行かなければならない。


「行くぞ!ヒナ」


「はい!」


 俺とヒナはゲートに入っていった。


 そしてゲートを抜けた先に竜はいなかった。


 ・・・上手く行ったか?それにしてもここは?


 ゲートの先は一見第八階層の様な、何も無い空間だった。


 しかし俺たちのまわりには、シアの過去の記憶らしき無数の映像が垣間見えていた。

 つまりシアの精神世界に最初に入った時と同じような状況だ。




 ・・・ただ、違う点があるとすれば・・・




 今、見えているシアの記憶は・・・




 幼いシアが、様々な不幸な境遇に見舞われている映像だったのだ。


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