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勇者を名のる剣聖の弟子  作者: るふと
第七章 魔女の夢
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225話 風の魔物

※残酷な表現があります。

「えっ?」


 ヒナは何が起きたのかわからず自分の足元を見た。


 そして、足元に落ちている自分の手を見ると、恐る恐る掲げた右手を見上げた。


 すると・・・手首から先の無くなった腕の切り口から、激しく血が噴き出していた!


「あああああーーーーっ!」


ヒナは左手で手首から先の無くなった右手を掴んでうずくまった。


「痛いっー!いたいよー!」




「ヒナ!ーーーー大丈夫かーーー!」



 俺は慌ててヒナの方に駆け出した。



 ・・・一体何が起きた?


 この階層には魔物はいないんじゃなかったのか?



 完全に油断していた。



 

 ・・・その時、ヒナの血で赤く染まった聖域の魔法陣が光り出した。


 そして・・・地面に落ちていたヒナの右手が魔法陣の中に沈んで行った。




 ・・・何が起きている?




 その直後、俺に強烈な風が吹きつけた。

 ヒナの元に駆けつけようとした俺は風に押し戻されて前に進めなくなった。


 そして風の中に殺気を感じた。


 俺は咄嗟にストーンブレードを出現させて、その殺気をストーンブレードで薙ぎ払った。


 キィンという金属音と共に、ストーンブレードの刃先が欠けていた。



 ・・・これは!風の刃?


 ヒナはこれにやられたのか?



 俺とヒナの間に何かがいる?


 ・・・これは・・・この階層の上級の魔物か?



 

「ユナ!サヤ!こっちに近づくな!サヤは結界を張れるか?」


 俺は後ろから走って来ていたユナとサヤを制した。


「でもヒナが!」


「今近づいたら死ぬぞ!サヤ、ユナを止めて結界を張れ!」


「わかりました!」


 サヤはシールドでユナの行く手を阻み、その隙に結界を張った。


 その直後、サヤの結界に風の刃が当たった様だが、何とか持ちこたえた。

 だが、サヤの結界は今の一撃で破壊される寸前だった様だ。

 サヤは続けてもう一重の結界を張った。




「ヒナっ!ヒナーっ!」


 ユナが結界の中で叫んでいた。



 とりあえず二人は大丈夫か?


 


 そんな心配をしている間にも、俺に次の攻撃が来た。


 目では見えないが、気配で殺気が読み取れる。それに空気を裂くような独特の音も覚えた。


 俺はそれを頼りに、風の刃をストーンブレードで打ち返す。



 またしても、金属音と共に、ストーンブレードの刃が欠けていた。


 『ウィンドスラッシュ』に似た魔法みたいだが、普通のウィンドスラッシュ程度ではストーンブレードに傷を付ける事は出来ない。

 ウィンドスラッシュよりもはるかに殺傷能力の高い魔法だ。

 まともに受けたら一撃で死ぬかもしれない。


 しかし今は一刻も早くヒナの元にいって手当をしなくてはならない。


 部位欠損なら後でシアや師匠に治してもらう事が出来る。

 しかし、このままでは出血が多くて死んでしまう。


 何より、次に攻撃を受けたらヒナは即死するかも知れないのだ。


 ・・・そして、それは俺やユナたちにも同じ事が言える・・・


「ヒナ!いま助けに行く!それまで手首を強く握って血を止めろ!」



「・・・ゲン・・・さま・・・・」


 ようやく俺の声に気が付いたヒナがこっちを見た。


 弱々しくうなずくと、手首を握る左手に力を入れたらしい。

 右手の出血が少し治まった。


 しかし既にかなりの血が流れてしまっている。

 しかもその血が聖域の魔法陣に吸収されているみたいなのだ。


 それに伴って、風の魔物の力が強まった気がする。


 ・・・これって・・・ヒナの血と右手が上級の魔物に魔力を与えているのか?


 そんな・・・体の一部や血だけでも効果があるっていうのだろうか?




 とにかく、一刻も早くヒナのところまで行かなければならない。


 しかし、俺の体は強烈な風に押されて前に進む事が出来ないのだ。

  ストーンブレードに魔法で推進力を発生させて、それにしがみ付いているのでかろうじて飛ばされずに済んでいるだけにすぎない。


 そして、その強烈な風の中に時折風の刃が紛れて来るのだ!

 それを避けつつ前に進むのは至難の業だった。

 それどころか、迫りくる風の刃を打ち返すたびにストーンブレードの刀身が削れて行く。


 このままではヒナを助けるどころか消耗戦だった。




 俺は刀身が半分ぐらいになっていたストーンブレードを投げ捨てた。


 そして新たなストーンブレードを出現させた。


 それはただのストーンブレードではなく、刃渡りが二倍近くある巨大なストーンブレードだ!

 当然重さも通常のストーンブレードの数倍になるが、その分、風に対抗できる。


 普通ならこんな大きさの剣は振回す事が出来ないが、魔力で振り回すなら話は別だ。


 魔法による剣の挙動と自分の体の動きを同調させる『シナジーアタック』なら、この大きさの剣を使いこなす事が出来る。

 それに、俺自身もこのストーンブレードに摑まっていれば吹き飛ばされる事は無い。


「ヒナ!今行くぞ」


 俺はストーンブレードを前へ推進させながら自分も前進する。

 魔力と筋力の融合により、強烈な風圧に対抗して前に進む事が出来た。


 しかし、俺が前進した事により、風の刃の飛んで来る頻度が増したのだ。


 明らかに俺を阻止しようとしている。


 俺とヒナの間には、目に見合ないが何か大きな存在がいる事を感じている。

 こいつがこの階層の上級の魔物なのかわからないが、こいつにダメージを与える事が出来れば何か状況が変わるかもしれない。


 何しろ一秒でも早くヒナを助けなければならないのだ!


 俺は前に踏み出して、目に見えない何かに向かってストーンブレードを振った。


 ストーンブレードは空を切っただけだが、俺の感覚は『何か』を切った事を感じ取っていた。


 実際、その瞬間に、風の動きに乱れが生じた。


 俺を押し戻そうとする風の向きや、風の刃の挙動が変ったのだ!




「ああっ!」


 その時ヒナの悲鳴が聞こえた。




 俺はヒナの方を見た。




 すると、ふらふらになりながらも立ち上がっていたヒナの太腿が、ぱっくりと大きく裂けていたのだった。



「ヒナっ!」


 ヒナは大きく切り裂かれた太腿から血を流していた。


 しまった!魔物はヒナにも再び攻撃を始めてしまった。


 もう一刻の猶予もならない。今すぐヒナのところへ駆けつけなければ!



 しかし、俺の進行を阻む風は、もはや『空気の壁』と言ってもいいくらい、強固に俺の行く手を阻んでいる。

 もしかしてこれは目に見えないが風の魔物の体そのものなのかもしれない。


 そうなのであれば、こいつを切れば魔物を倒せるのかもしれない。


 俺は特大ストーンブレードに更に魔力を流し込んだ。

 これによってストーンブレードは切れ味と破壊力を増す。

 更に対魔法切断特性も持っているので、魔法自体を切り裂く威力も、魔力の注入量で向上するのだ。

 魔法で構成された体であれば、これで切り裂く事も出来るはずだ。


 俺は強烈な風圧に対抗しつつ、渾身の力を込めて前に踏み出し、特大ストーンブレードを横一文字に振り切った!



 実体はないが、何か大きな存在を真っ二つに切り裂いた感触を感じた。


 それと同時に俺にかかっていた風圧が、ふっと消えた。


 風の刃の気配も感じなくなった。




 ・・・今ので・・倒せたのか?




 姿が見えないので状況がわからないが、これまで感じていた脅威を感じなくなっていた。


 とにかくこれでヒナの元へ行ける。


 そう思ってヒナの方を見た俺の目には・・・驚愕の光景が映っていた。




 ・・・俺の目の前で・・・ヒナの胴体に切れ目が入りそこから血が噴き出したのだ!




 そしてそのまま前に倒れたヒナは・・・・・




 ・・・・・体が・・・上下に分断されていたのだった。


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