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勇者を名のる剣聖の弟子  作者: るふと
第七章 魔女の夢
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220話 パーティの新メンバー

「つまり、魔物を倒して『聖域』に行かないと、シア達を助ける事は出来ねえって事だよな?」


「そう言う事です」


「なら話は簡単だ。俺が地下迷宮に入ってシア達を取り戻す」


「ちょっと待って!さすがにこの三人だけで地下迷宮を攻略するのは無理があるわ。おそらく各階層に上級の魔物が出現するはずよ」


「ユナ殿の言う通りです。第五階層に調査に行った者たちの話では上級の魔物の出現を確認しています。その他にも、中級の魔物も多数目撃されていました」


「だが、迷宮を攻略してシア達を救出しないとこの事態は解決できねえんだろ?」


「幸いにも、迷宮の第四階層までは影響を受けてはいません。現時点では緊急性は低いのです」


「冗談じゃねえ!シア達を見殺しにしろって言うのか?」


「この状況はある意味、前回の依頼の前と同じって事よね?前みたいに各地から上級冒険者を募る事は出来ないの?」


「体制が変って以前の様な報酬を用意する事が出来なくなったのです。第五階層以降を開放しても、その後の見返りがありません。いずれにしても上級冒険者を集めるには時間がかかります」


 ・・・以前の様に外国から巫女の候補を集めてくる訳にいかねえからな、既存の巫女だけで迷宮全体の運用は不可能って事か?




 ・・・師匠の帰還を待つしかねえのか?




「ゲンさま!わたしたちだけでシア様たちを助けに行きましょう!」


 ヒナは胸の前で両手を握って俺に詰め寄った。


「ヒナ、さすがにそれは無茶よ!あなたは魔法が使えないし、ゲン君は魔力があるけど魔法の制御が苦手でしょう?シアさんやビビと同等とまではいかなくても、強力な魔法が使える魔法使いがいないと攻略は不可能よ」


 そうだな、俺の魔法は威力のコントロールが出来ねえから、迷宮を破壊しかねない。

 そうなったらシア達を救出するどころじゃなくなる。


「それならわたしが同行します」


 サヤが申し出た。


「わたしもそれなりの魔力に目覚めました。それに、シア様に指導して頂いたおかげである程度の魔法の制御も出来るようになりました。微力ながらお手伝いさせて頂く事が出来ると思います」


 サヤは第五階層の『柩』に入っていたのだ。 

 『柩』は階層が深くなるごとに、強い魔力適性を持った者でないと順応できなくなる。

 第五階層の柩に順応出来たのあれば一般的な中級魔法士よりも強力な魔法が使えるはずだ。


「サヤは残った巫女の中では最も魔力が強く、それに冒険者としての訓練もしています。十分戦力になるでしょう」


 ギルド長もサヤさんの参加に賛成の様だ。


「他の冒険者達にも出来るだけ協力させましょう。下級の魔物や、一部の中級の魔物ぐらいなら対処できます」


「それは助かる。今から迷宮に入れるか?」


「さすがに今すぐは無理です。出発は明日にして下さい。君らも今夜は旅の疲れを癒した方がいいでしょう」


 一刻も早くシアを助けに行きたかったが、確かにそれもそうだな。




 その日は宿で旅の疲れを癒す事になった。


 結局この日も三人で一緒に寝る事になった。


 ヒナとユナは旅の疲れもあり、すぐに眠りについてしまった。

 しかし俺は、シアの事が気になってなかなか眠りにつく事が出来なかった。




 横になっていても一向に寝付けないので、気を紛らすために夜風に当たって来ようと思って外に出ようすると、宿のロビーでサヤと出くわしたのだ。


「サヤじゃないか?」


「あっ!これはゲン様、こんばんは」


「サヤもこの宿に泊まってたんだな」


「はい、わたしたち身寄りの無い巫女はこの宿に部屋を用意してもらっているんです」


「どうした?こんな夜更けに?」


「ゲン様こそ、こんな夜更けにどうされたのですか?」


「シアの事が気になって寝付けないんでな。夜風に当たって来ようと思たんだ」


「わたしもです。シア様たちを無事に助け出せるかどうか心配で、眠れませんでした」


「そんなにシアの事を?」


「はい、わたしたちにとっては恩人ですし、最近ではすっかり仲が良くなって親友の様に思っていました」


「そうなのか?」


「はい、わたしを含め、特に魔力の強かった子たちは、シア様が付きっ切りでケアして下さいましたので、シア様を中心に強い連帯感が生まれたのです」


「そうだったんだな」


「はい、しかし、第七階層の柩に入れられた二人は特に症状が重く、回復が進まなかったのです。でもシア様の努力で少しづつ心を開き始めていたのですが、例の事件でしばらくシア様に会えなくなってしまった間に、症状が再び悪化し、心を閉ざしてしまったのです」




 例の件っていうのは、ビビに指名手配の手が回ってきた件だよな?


 ・・・ビビが悪いわけではないんだが・・・いや、ビビが悪いんだが・・・

 しかし過去の事よりも現在とこれからの事を考えられない物だろうか?

 人の恨みというのは後を引くものなんだな・・・




「その二人を回復させたために、代わりにシアが目覚めなくなってしまったという事だよな?」


「はい、二人はそれを負い目に感じて、今回の事態を引き起こしてしまったのだと思います」


 その二人は第七階層の柩に入っていたという事は、ヒナと同レベルの魔力に目覚めてるって事になるのか?

 そうすると・・・その二人も『亜魔女』になったっていう事か?

 

「二人とも第七階層の柩に順応していたんだよな?」


「その二人は第六階層までは順応できたのですが、無理やり入れられた第七階層の柩に順応できなくて、精神が崩壊してしまったのです」


 つまり記憶が完全に消失していた巫女たちは、限界を超えた『柩』に入れられたせいでそうなったって事なんだろうが・・・

 人によって適性できるレベルが違うって言ってたよな?


「私は第五階層まで順応出来ていたので、次は第六階層の柩に入れられる予定だったみたいです。そうなったら、完全に精神が崩壊していたかもしれません。その前にゲン様たちがこの件を解決して下さったので助かったのです」


「そういえば一人だけ第七階層の柩に順応できた巫女がいたと聞いています。それがゲン様と一緒にいたヒナさんの事ですよね?」


「だが、ヒナも他の二人と同じ様に精神が崩壊し、過去の記憶を失っていた。条件は同じだったんじゃないのか?」


「そうなんでしょうか?『柩』に順応できた場合は精神崩壊は無いと聞いていたのですが?実際、シア様やビビ様は大丈夫だったのですよね?」


「あの二人は別格なんだろうが・・・ヒナは特に症状が重かったしな」


「ヒナさんは最も長い時間、第七階層の柩に入っていたそうです。そんな長期間一人の巫女が柩に入っていた例は他にはないのですが、おそらく柩に完全に順応していないと不可能なはずです」




 ・・・どういう事だ?ヒナは何か事情が違うのか?


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