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勇者を名のる剣聖の弟子  作者: るふと
第七章 魔女の夢
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218話 再会の地へ

 翌日、俺達は町で買い物をした。


 まずは防寒着だ。

 俺とヒナは附加装備のおかげで凍える事は無いんだが、見た目があまり軽装過ぎるとこの国では目立ってしまう。

 そこで各自防寒着を購入する事にしたのだ。


 ヒナは装備と同じ薄緑の生地に白いファーが付いているコートにした。

 全体のイメージとしては附加装備と似た雰囲気にまとまっている。


「やっぱりヒナはこの色合いが似合ってるな」


「えへへ、ありがとうございます」


 俺は前回と同じダークグレーのコートを買った。

 ユナは元々コートを持っていたのでそれを着ている。




 それから、そりを入手した。


 この町から先の街道は雪が積もっている。

 車輪の付いた馬車ではなく、そりが使われているのだ。


 そりは前回の様な一人乗りの小さなそりではなく、馬や犬に曳かせる大型のそりを購入する事が出来た。


 店で相談したら快く安値で売ってくれたのだ。

 前回よりずいぶん待遇が良くなったな。




 そりは町の人に、門の外まで運んでもらった。

 町の中は雪が積もっていないので、そりで移動できないのだ。


「ゲンさま、そりを買ったのは良いですけど、馬はどうするんですか?」


「こうするんだ」


 俺は『ストーンブレード』を出現させて、ロープでそりと繋いだ。


「出発するぞ、二人ともそりに乗れ」


「へえ、こんな方法があったんだ」


「俺の魔力は普段使い道がねえからな。こんな時にでも使わねえともったいねえ」


「わあ!なんだかわくわくします!」


「二人ともしっかり手すりに掴まれよ!行くぞ!」




 二人がそりに乗り込んで手すりにつかまった事を確認すると、俺はストーンブレードを動かしてそりを曳き始めた。


「すごい!動き出しました!」


「速度を上げるぞ。振り落とされるなよ」


 俺は次第にそりの速度を上げていった。


「きれいな雪景色がすごい勢いで流れていきます!」


 ヒナが周りの景色を見て感動している。


「これならあっという間に王都に着くわね」


「この辺りは道が真っすぐで平坦だからな。山岳地帯に入るとこの速度は出せなくなるが、それでも時間は大幅に短縮できるはずだ」


 本当は平地ならもっと速度が出せるんだが、街道は他の通行人やそりも通るからこれ以上速度を出すのは危険だ。

 それでも普通のそりよりも十分に速い。




 さすがに一日で王都に着く事は出来なくて、途中の町で一泊したが、二日目には王都に到着する事が出来たのだった。





 ・・・ついにシアの待つこの町に帰って来る事が出来た。


 待たせたな、シア。

 予定よりだいぶ遅くなっちまったが、俺が必ず目覚めさせてやるからな。




「わあ!もう着きましたよ!」


 ヒナにとっては因縁の深い場所だが、トラウマとかは無いのだろうか?


「ヒナ、大丈夫か?この王都に帰って来て」


「大丈夫って?何がですか?」


「この場所に嫌な思い出があるんじゃないのか?」


「ここに来てからは、ほとんど意識が無かったのでこの場所にそれほど嫌な思い出はありません。むしろゲン様と初めて出会った思い出の場所です!」


「そうか・・・それなら良かったが」


 相変わらずヒナは何にでも前向きだな。




 王都の城門も前回はきびしい検問があったが、ここも今回はすんなり通る事が出来た。




 そして・・・城門を抜けると・・・盛大な出迎えがあったのだ!




「まあ!勇者様のご帰還よ!」


「勇者様!おかえりなさい!」


「やっと勇者様に直接お会いする事が出来ました。助けて頂いてありがとうございます」




 大勢の少女たちが俺達を出迎えていた。


 ・・・何人か見覚えがある。

 皆、『巫女』だった少女達だ。




「勇者様、早く聖女様を目覚めさせてください!」


「聖女様はわたしたちを目覚めさせるためにご自分が犠牲になって・・・」


「ああ、運命の恋人同士がやっと再会できるのですね・・・」


「聖女様を救えるのは勇者様しかおりません」




 巫女だった少女たちに囲まれて、一斉に話しかけられたので訳が分からなくなってしまった。




「みなさん、落ち着いて下さい」


 年長の少女が他の少女たちを鎮めてくれた。

 そしてその少女が俺の前に歩いてきた。




「失礼しました。ゲン様」


「ああ、君は?」


「はい、あなたに助けて頂いた巫女の一人です」




 この少女には見覚えがあった。

 前に第五階層から連れ帰って来た巫女だ。


・・・確かその後、記憶の修復にも立ち会っているが、その時は眠ったままだったからこうして直接話をするのは初めてだな。


 以前は無表情で全く感情が無かったが、今は穏やかな表情をしている。




「そうか、ずいぶん元気そうになったな。良かった」


「はい、それもゲン様とシア様のおかげです」


「俺は何もしてねえよ。あんたらを助けたのはシアだ」


「ゲン様が地下迷宮の魔物を倒し、研究機関の不正を暴いたのだとシア様とビビ様から聞いております」


 ・・・あいつら・・・俺の事を大げさに話してるな?


「その後も、わたしたちの意識に回復にも携わっていたと聞きました。確かに記憶の片隅にゲン様の存在を感じる事があるのです。こうして直接お会いできて嬉しいです」


 この少女の治療には俺も立ち会い、彼女の悲しい過去を垣間見てしまっている。

 だが、ヒナの時の様に直接記憶に介入した訳ではないので、俺の事を認識しているとは思わなかった。


「あらためまして、助けて頂いて本当にありがとうございました」


 少女は深々と頭を下げた。




「とにかく、シアにすぐに会いたい。シアはどこにいる?」


「それが・・・今すぐにシア様に合わせる事は出来ないのです」


 少女は少し悲しそうな顔になった。


「どうしてだ?」


「シアさんは病院で寝ているんじゃないの?」


 ユナが少女に尋ねた。


「はい、ユナ様。シア様はずっと病院のベッドでこん睡状態だったのですが・・・今は、病院にはおりません」


「病院にいないって、それじゃあシアは今どこにいるんだ?」




「シア様は・・・地下迷宮におります」


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