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勇者を名のる剣聖の弟子  作者: るふと
第七章 魔女の夢
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215話 氷雪の国への旅路

 翌朝、俺達は氷雪の国に向かって出発した。




「うー、頭が痛いですぅ」


「これに懲りたら、次からお酒はほどほどにしなさいね」


「もう二度と飲まないですぅ」


 ヒナは朝起きたら昨日の夜の事はすっかり忘れていた。

 記憶力の良いヒナにしては珍しい。


 まあ、覚えていなくて良かったのだが・・・




 ヒナの調子がまだ回復していなかったので、今日は馬車で移動している。

 今のヒナに走らせるのはあまりにも酷だからな。




 昨晩は、あの後泥酔して風呂場で眠ってしまったヒナをタオルでくるんで部屋まで運び、ベッドに寝かせた。

 結局ヒナは、そのまま朝まで起きなかったのだ。


 ユナが部屋に戻ってきたのは明け方近くだった。




「もう、ヒナがみんなを焚きつけたもんだから後始末が大変だったんだけらね」


 あの後、盛り上がった冒険者たちの相手をユナがしていたらしいのだが・・・詳しい話は聞かない方が良さそうだ。


「ごめんなさい、お姉ちゃん・・・それで、私は一体何をしたの?」


「・・・聞かない方がいいと思うわ」


「うー、気になります」


「ゲンさまも、教えて下さい!」


「酒に酔って眠っただけだ」


「嘘です!絶対それだけじゃないですよね?」


 確かに昨日は忘れられない事がたくさん起き過ぎてしまった。


 そして最後は・・・ヒナを落ち着かせるためとはいえ、勝手にキスをしちまった。




 ヒナとの初めてのキスは、とても柔らかくて気持ちの良いヒナの唇の感触と共に、ほんの少しだけ、酸っぱい匂いとアルコールの匂いがしたのが、ちょっと残念だった。



 ・・・次は酒を飲んでいない時にしたいものだ・・・


 ・・・って!俺は何で次の事を考えてるんだ!




 それにしてもヒナとの関係が着実に進展しちまってるじゃねえか!

 これは何とかしねえとな。




「なんだか、すごくいい事があった様な気がするんですけど、どうしても思い出せないんです」


「・・・いや、何も無い」


「もしかして!すでにお腹の中にゲンさまの赤ちゃんが!」


「いや、そういうのは無いからな」


 ・・・危うく一歩間違えたらそうなってた機会が何度もあったがな。


「ええ、それに関しては今朝も確認したから大丈夫よ」


 ユナ・・・まさか毎日ヒナの確認してるわけじゃねえよな?


 それって・・・万が一俺とヒナとそういう関係になったら速攻でユナにばれるって事じゃねえか。


 ・・・いや、もちろんそうなるつもりは無いんだが・・・




 やがて馬車は国境に差しかかった。


 国境を抜けた先の国は、特に何の特色もなく治安の悪い貧しい国だったから、前回も最速で通過している。

 

 国境を通過し、馬車でその日に行けるところまで移動して、宿のある町で馬車を降りた。


「今日はこの町で一泊するわよ。明日からは走るけどヒナも大丈夫よね?」


「はい、今晩眠れば明日は大丈夫だと思います」


 ヒナもだいぶ本調子に戻って来たな。


 その町に一軒だけあった宿に泊まる事にした。

 確か前回も泊った事のある宿だ。

 この国は全体的に治安が悪く、確かこの宿もあまり管理が良いとは言えなかった。

 鍵などがずさんで、簡単に部外者が侵入できてしまうのだ。


 三人で一つの部屋で泊って、俺とユナが交代で番をする事にした。

 まあつまり、野宿よりは多少はましという程度だ


 ヒナも交代で番をすると言っていたが、疲れていたのかすぐに熟睡して朝まで起きなかった。


 結局朝まで何事も無かったので、翌朝は普通に出発した。




「何だか前に来た時よりも町がにぎやかになって治安が良くなった気がするな」


 昨晩も特に何も起きなかったし、町の雰囲気が、前に見た時より活気に満ちている気がする。


「ええ、そうよ。氷雪の国の体制が変って他国との交流が活発になった関係で、通過点であるこの国も潤ってきたみたいなのよ」


「そんな影響が出るんだな?」


 今まで地下迷宮からの恩恵を自国で独占していたのだが、あれから体制が変って国外との流通が盛んになったとは聞いていたのだが、隣国にもその影響が出ていたんだな。


「それもこれも、ララさんの口添えがあったからみたいなんだけどね」


「師匠の?」


「ええ、シアさんと一緒に巫女たちのケアをしていた時に、あなたの国から何度も支援があってね。シアさんから聞いた話では、ララさんの進言で、国王様が復興の支援を指示していたらしいの」


 師匠がそんなところまで気にかけてくれてたのか。

 そして国王は、やっぱり師匠の頼みは何でも聞いてくれるんだな。

 まあ確かに、親じゃねえけどあの親バカっぷりは異常だったからな。


「素敵な師匠ね」


「ああ、そうだな」


「はい、ララさまはとっても素敵な方です!」


「師匠の話が出るとヒナはいつもご機嫌だな」


「はい!わたしの理想の女性です!わたしもララさまみたいになりたいです!」




 ・・・そうだな、何だかんで、実際ヒナはだんだん師匠と共通点が増えて来ている。


 性格だけでなく、しゃべり方も似てきたんじゃねえのか?

 多分、実績を上げて自信がついてきたせいもあるのだろう。

 師匠の最大の魅力でもある、あの、絶対的な安心感をヒナにも感じ始めているのだ。


 


 俺がヒナの事を意識する様になってきたのは・・・きっと、そのせいもあるんだろうな。



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