213話 討伐の功労者
魔物の討伐が完了し、新たな魔物の出現も治まった様なので、俺達は早速出発したかったのだが、今晩は魔物討伐の慰労会をやるというので引き留められてしまった。
さすがに今回の魔物討伐の立役者である俺達が不在という訳にはいかなかった。
というか、今回の主役は間違いなくヒナだ。
村の人々や冒険者たちが、ヒナにお礼を言いたがっていたのだ。
そういう訳で、今夜はタヤさんの宿でもう一泊する事なった。
夜になると宿のレストランで宴会が始まった。
「いやあ、お嬢ちゃんのおかげで一人の死人も出なかったぜ!ありがとな」
「本当に、まだ若いのに大したもんだよ」
「こんなにかわいい女の子が魔物の群れを一人で倒したなんて!まるでうわさに聞く勇者様の様だな」
「まったくだ!勇者様以外にこんなに強い美少女がいるなんてな!」
「本当だな、勇者様もかなりの美少女だと聞いたが、おれはあんたの方が好みだな。なあ、おれと結婚してくれねえか?」
「お前、何抜け駆けしてんだよ!彼女にはおれがプロポーズするつもりだったんだぜ!」
「ちょっと待てよ!ヒナちゃんはおれの嫁だ!」
「彼女はオレの命を救ってくれたんだ!オレに気があったに違いねえ!」
「それならおれだって助けてもらったぞ」
「君達、何を言っている。ヒナ殿はわたしの妻になると、もう決まっているのだよ」
「てめえ!何勝手に決めてんだ。ヒナちゃんはみんなの嫁だ!」
「そうだそうだ!平等にみんなの嫁になってもらおう!」
・・・冒険者達が好き勝手な事言ってるな。
「ヒナ、モテモテだな」
「あははははははははは!やきもちですか?ゲンさま? 大丈夫でひゅよ!わたしはゲンさまのお嫁さんでひゅから!」
・・・ん?何だかヒナの様子がおかしいぞ?
「でも、みんなからこんなに好かれるのって、悪い気分じゃないでひゅよね?」
・・・やっぱり何か変だな?妙に顔も赤いし、目の焦点が合って無い気がする。
「皆ひゃーん!わたしもみんなの事が大好きでひゅ!できればみんなのお嫁さんになってあげたいでひゅ!でもぉ、わたしはゲンさまのお嫁さんになるって決まってるのでひゅ!」
何言ってるんだ、ヒナ。
「おい!ゲンにはシアちゃんがいるだろ?」
「そうだそうだ!ヒナちゃんはおれによこせ!」
俺に向かってブーイングの嵐が来た。
「わたしはぁ、シアさまと一緒にゲンさまのお嫁さんになるんでひゅ!」
だから、煽るな、ヒナ。
「ちょっと待て!ゲン!貴様、美少女二人を独り占めかよ!」
「そうだそうだ!どっちか譲れ!」
「むしろおれが二人とも嫁にしたい」
更にエスカレートしてしまった。
「いや、そう言う事じゃない!話を聞いてくれ・・・」
「仕方ないですねぇ・・・じゃあ!こうしまひょう!わたしがゲンさまのお嫁さんになったら、そのあと、皆さん全員のお嫁さんになってあげまひゅ!」
・・・ヒナ・・・何を言ってるんだ?
「おおおおお!それっておれ達がヒナちゃんを抱いてもいいって事か?」
「はい!ゲンさまが抱いてくれた後でしたらぁ、皆さん全員に抱かれてあげまひゅ!」
「おおおおおおお!すげえぞ!」
「やったあ!ヒナちゃんと子作りができるぜ!」
「おれ、どうやってヒナちゃんを抱こうかな?」
・・・ちょっと待て!さすがにヒナの言動がおかしいぞ!
「ユナ!ヒナの様子がおかしいぞ!どうなってんだ?」
俺はユナに救いを求めた。
「どうやらさっき、お酒をいっぱい飲んじゃったみたいなのよ」
「なに?ヒナはまだ未成年だろ?酒を飲んじゃだめなんじゃないのか?」
「あれ?言ってなかったけ?ヒナは年齢的にはもう大人だよ。ゲン君より二つ年上だったかな?」
「聞いて無いぞ!見た目からしても俺やシアより年下じゃなかったのか?」
「『柩』に閉じ込められていた間って成長が止まるみたいなのよ。ヒナは長い間『柩』の中にいたからね」
・・・そうだったのか、今まで年下のつもりで接してしまっていた。
「まあ、体も精神も成長してないから、まだ子供と言えば子供なんだけど、法律的にはお酒は飲めるのよ」
・・・それって・・・飲ませたらだめなんじゃないのか?
実際、かなりやばい事になってないか?
「じゃあ!これからゲンさまに抱いてもらうのでぇ・・・その後、みんなに順番に抱いてもらおうと思いまひゅ!」
・・・なんかとんでもない事を口走ってるぞ?
「「「「「「おおおおおおお!!!!」」」」」」
「仕方ねえ!おい!ゲン!今すぐヒナちゃんを抱け!そしてすぐおれたちにまわせ!」
「早くしろ!ゲン!」
会場がおかしな熱気に包まれてしまった。
「ゲンさまぁ!みんなもこう言ってるのでぇ、今すぐしまひょ!」
ヒナはそう言って俺に抱きついてきた!
「ちょと待て!落ち着け、ヒナ」
「いいえ、待てません!今すぐここでしまひょう!」
そう言ってヒナは服を脱ぎ始めてしまった。
「だめに決まってるだろ!服を脱ぐな!」
既に胸元がはだけて下着が見えている。
「さ、ゲンさまも脱いで下ひゃい!」
そう言って俺の襟元を広げ始めた。
「やめろ、ヒナ!」
「うっ・・・ぷ!」
突然、ヒナの動きが止まった。
「うええええええええええええ!」
その直後、胃の中身を吐き始めてしまったのだ!
・・・・・俺の襟元から、服の中めがけて・・・・・




