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【9章開始】勇者を名のる剣聖の弟子  作者: るふと
第七章 魔女の夢
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210話 激戦の爪痕

 『棘狼』の追跡は意外と簡単だった。


 通った後は木の枝が傷だらけになっていたからだ。


 『棘狼』はヒナを引っかけて直進した後、何度かジグザクに進行していた。


 おそらくヒナが棘にひっかっかった状態で攻撃を仕掛けたか何かで、ヒナを振り払おうとしたのかもしれない。




 ・・・ヒナ・・・無事でいてくれ。




 俺はヒナの安否を考えながら、限界まで速度を上げて走り続けた。

 ユナがついて来れなくなっていたが、待っている時間が惜しい。


 とにかく、一刻でも早くヒナの元に駆けつけたい。




 やがて木々が無くなり開けた場所に出た。


 開けた、というか、激戦のために広範囲にわたって木々がなぎ倒されているのだ。


 あたり一面が蒸気に覆われて視界が悪い。

 相当な数の魔物が倒された事を物語っている。


 ヒナはここにいるのだろうか?


 蒸気の向こうに魔物が残っている可能性もある。


 だが、そんな事は気にしていられない。


「ヒナーーーー!どこだーーー!無事かーーー!」


 俺は普段出さないくらいの大声でヒナを呼んだ。


 魔物に見つかろうがそんな事はどうでもいい。

 とにかくヒナの安否が知りたかった。


「ヒナーーーー!返事しろーーー!」


 俺は何度もヒナの名を呼びながら視界の悪い蒸気の中を彷徨った。

 予想通り、蒸気の発生源は夥しい数の中級の魔物の残骸だった。




 ・・・これだけの数をヒナが倒したって事はねえよな?




「・・・・・・ゲン・・・さま・・・・・」




 蒸気の中からかすかにヒナの声が聞こえた気がした。



「ヒナ!無事か!」



 俺は声のした方に向かった。


 魔物の残骸は小さくなり、少しずつ蒸気が晴れてきている。


 やがて、戦場全体が見渡せる様になって来た。


 そしてその中心付近に人影を見つけた。



「ヒナっ!」



 俺はその人影に向かって全速力で走っていた。



 そこには、全身土埃で汚れて肩で大きく息をしているヒナが、今にも倒れそうに立っていた。


 装備の一部が外れて無くなっており、インナースーツもあちこち破れていた。

 かろうじてショートソードを握っていたヒナは、半ば意識を失いかけている様だった。


 しかし俺の声に気が付くと、こちらを振り返り、にっこりと微笑んだのだ。



「・・・ゲン・・・さま・・・」


 しかし、そのまま、両手に持ったショートソードを落とし、笑顔のまま、倒れ始めた。


 俺は駆け寄って、倒れる寸前でヒナを受け止め、抱きしめた。


「・・・ヒナ・・・無事で良かった・・・」


 ヒナはそのまま意識を失ってしまった。




 俺はヒナを抱き上げた。


 そこに、ユナが追いついてきた。



「ヒナ!・・・ヒナは無事なの!」


「ああ、今気を失ったところだが、命に別状はない」


「良かった・・・ヒナが無事でいてくれて・・・」


 ユナの目から涙がこぼれた。


 俺よりも一番にヒナの事を心配していたのはユナなのだ。

 さっきの判断は苦渋の選択だったに違いない。


「ヒナは一人でちゃんと生き延びたみたいだな」


 俺は周りを見渡した。



「これって・・・ヒナが一人で倒したって事?」


 

 周りの状況から見て、ここで数十体の中級の魔物が倒された様だ。

 実際にここから目視できるだけでも、30個以上の中級の魔物の魔結晶が転がっているのだ。


「わからん、さすがにこの短時間で、この数を一人で倒すのは無理だろう」




 そんな事が出来るとしたら・・・師匠か、ジオくらいだ。




「誰かが助っ人に入ったって事かしら」


 蒸気はほとんど晴れたが、辺りに人影はなかった。


「どうなったのかわからねえが、ヒナが目を覚ましたら聞いてみるしかないだろうな」


 ここで何が起きたのか気にはなるが、今はヒナをゆっくりと休ませてあげたい。


「今のところ他に中級の魔物の気配はない。とりあえず俺はヒナを村まで連れて戻る」


「そうね、そうしてもらえるかしら。あたしはガズ達に状況を説明して、残った下級の魔物を片付けてから戻るわ」


「すまない、ヒナの事は任せてくれ」



 俺はヒナを抱きかかえたまま、村へと駆け戻った。


 途中の道は結構荒れていたが、ヒナに衝撃や振動がかからない様に細心の注意を払って走り続けた。

 ヒナはずっと、幸せそうな微笑みを浮かべたまま眠っていた。




 村まで帰って来た俺は、村長に事情を説明してヒナを休ませる事の出来る場所を提供してもらった。

 村長は喜んで客室を貸してくれたので、俺はヒナを客室に運び込みベッドに寝かせた。




 ・・・これって、やっぱり、汗と埃で汚れた装備を脱がさないといけねえよな?


 アーマーは大半が外れて無くなっていたが、一部は残っていた。

 ブーツと小手は装着したままだ。

 これらを付けたままでは体が休まらない。


「ヒナ、すまん、装備を外すぞ」


 俺はヒナの装備を外していった。


 ヒナはインナースーツだけの姿になったが、インナースーツは汗でびっしょり濡れて、肌に張り付いている。

 ヒナの、まだ幼さの残るが、女性らしくなり始めている体のラインがくっきりと浮き出ていた。

 破れたところからは素肌も見えている。


 装備を外して少しは楽になった様だが、まだ呼吸が荒い。




 ・・・これは、インナースーツも脱がさねえと、体が気持ち悪いよな?


 さすがに俺が脱がすわけにもいかないので村長に声をかけて、女性の人にお願いしようと思ったが、村長の家は全員出払っていて無人だった。

 おそらく、魔物襲撃の後始末で奔走しているのだろう。


 ・・・かといって、苦しそうなヒナをこのままにもしておけねえし・・・俺が脱がすしかないか・・・


 俺は覚悟を決めて、ヒナのインナースーツを脱がす事にした。


 とは言っても、ヒナの裸を本人に無断で勝手に見る訳にはいかない。


 まあ、本人に聞いたら喜んで脱ぎ出しそうな気もするのだが・・・それはそれだ。


 俺はヒナの体に大きめのタオルをかけて、その下で手探りで脱がす事にした。


 まずは、俺自身も装備を外してインナースーツ姿になった。


 そしてヒナの頭の方から覆い被さって、両脇から手を入れ、腰のところから上半身のインナースーツを上に引っ張り上げて脱がしていく。


 汗で濡れて滑りが悪いので、時々背中に手を回してヒナの体を持ち上げながら引っ張っていった。


 途中まで捲し上げたところで何か引っかかった・・・って胸に引っかかってるじゃねえか!


 インナースーツは体形にフィットしているので、まだそれほど大きくないヒナの胸でも引っかかってしまったのだ。


 俺は、ヒナの胸に触らない様に、慎重にインナースーツの裾を持ち上げて、ヒナの胸を乗り越えた。


 タオル越しに手探りなので結構難しい。


 だが胸を超えたあとは、両腕を上にあげさせて、一気に抜き取る事が出来た。



 ・・・タオル越しに見える、ヒナの胸のふくらみが結構生々しい・・・


 いや、余計な事を考えるな。


 次は下半身だ。

 よからぬ事を考え始めるとまずい事になってしまう。



 俺は一旦、気持ちを落ち着かせて、ヒナの足の方に回った。


 ヒナの足の上に跨って・・・もちろん接触しない様に距離は開けているが・・・


 タオルの両側から手を入れて、インナースーツの腰のところを掴み、下に引きずり下ろしていく。


 だが、やはり汗で滑りが悪い。


 腰の途中まで下ろしたところで引っ張れなくなってしまった。




 俺はヒナの腰の下に片手を差し込み、ヒナの腰を持ち上げながらもう一方の手でインナースーツを引きずり降ろした。



 ・・・のだが、手のひらに、何とも言えぬ柔らかい感触を感じていた。


 これって・・・ヒナの尻かっ!


 触るつもりではなかったのだが、つい不用意に直接触れてしまった!


 あまりにも柔らかく気持ち良い感触に戸惑った俺は、さっさと終わらせてヒナから手を放そうと、一気にインナースーツを引き下げて脱がし切ってしまおうとした。


 しかし、湿ったインナースーツを勢いよく引き抜いてしまったために、上に乗っていたタオルまで一緒に引っ張ってしまったのだ!


 まずい!と思った俺は、咄嗟にヒナの方を見てしまった。




 ・・・そこには当然、あられもない姿のヒナが寝ていたのだった!


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