199話 悪夢の再来
俺とユナはヒナのいる部屋に走った。
部屋の扉を開けると、ベッドの上でヒナの上に太った中年の男が覆い被さっているのが見えた。
ヒナは服を破かれ、胸や下着が露わになっていた。
そして、男はヒナの下着に手をかけようとしていた。
「ヒナから離れろ!」
扉の前で、一瞬固まっていた俺は、状況を理解し、男をヒナから引きはがそうと飛び掛かろうとした。
しかし、その瞬間、後ろから何者かに羽交い絞めにされた。
隣を見るとユナも同様に羽交い絞めにされている。
「連れが戻って来たか、そいつらをしっかり押さえておけよ」
俺達を羽交い絞めにしたのは、ヒナの上に覆い被さっている男の部下のなのだろう。
そして・・・振り返ったその男には見覚えがあった。
その顔は・・・ヒナを凌辱した買主の一人だ。
「ヒナ!・・・・」
ヒナに呼びかけようとしたが、俺は口を布で縛られてしまった。
「ふっふっふっ、昼間、貴族街で騒いでいる連中を見たらヒナにそっくりなこの娘を見かけてな、後をつけさせたら儂の息のかかった宿に泊まったというではないか。折角なので頂く事にしたのだよ」
太った中年の男は嫌らしい笑いを浮かべて語り出した。
やはりこの宿も安全じゃなかったか。
「それにしてもこの娘、見れば見るほど前に儂が買ったヒナにそっくりだが、本当に本人ではないのか?確かにヒナは無表情で、これほど恐怖におびえた表情を見せる事は無かったが・・・これはこれで、やはりこの方そそるわい」
ヒナを見ると、ヒナは恐怖の表情で男を見つめ固まっていた。
剣士として訓練を積んだ今のヒナであれば、この男を払い除ける事くらい出来るはずなのだが、恐怖で委縮して動けなくなっているのかもしれない。
「よく見るとそっちの女もかなりの上玉ではないか。この娘を弄んだ後は、その女も頂くとしよう。逃げない様にしっかりと捕まえておけよ」
男はそう言うと再びヒナの方を向いた。
しかしヒナは相変わらず恐怖で固まって無抵抗のままだ。
「んっ!、んんー!」
その時、ユナが激しく抵抗して暴れたので、別の部下がユナの顔を叩き、それからユナのネグリジェを引きちぎった!
大きくて形の良いユナの胸が露わになっていた。
俺も部下たちも、一瞬その姿に目を奪われてしまった。
俺はその隙をついて羽交い絞めを振り払って、まずユナを助けようとしたのだが、俺を捕えている部下もすぐに正気に戻ったらしい。その腕力はとんでもなく強く、抜ける事が出来なかった。
どうやら腕力だけでなく強力な身体強化も使っているみたいだ。
「おお!これは!」
その間に、男はヒナの下着を脱がしてしまっていたのだ!
体が硬直して無抵抗だったヒナは、あっさり下着を脱がされてしまったのだろう。
そして男はヒナの両ひざを掴み足を思いっきり押し広げていた。
「どうなっているのだ!どう見てもヒナ本人なのに、生娘に戻っているではないか!・・・しかし、これは頂きがいがある!」
しまった!このままではヒナが襲われてしまう!
ヒナの表情は恐怖で硬直したままだったが、その目から涙がぽろぽろとこぼれ落ちていた。
・・・これ以上好き勝手はやらせねえ!
俺はヒナと男の間にストーンブレードを発現させた。
そう、『亜魔女』になった俺は魔法陣も詠唱も無しで魔法が使えるのだ。
後で言い訳が出来ねえから使うのをためらっていたのだが、もう、そんな事を言っている場合じゃねえ!
俺はストーンブレードで、男を思いっきりぶっ叩いた。
男は吹っ飛ばされて壁に激しく叩きつけられ気を失った。
俺はそのままストーンブレードで、俺を捕らえていた部下に切りつけた。部下はさすがに俺を離してストーンブレードを回避した。
しかし、ストーンブレードを切り返して、回避した男に再びストーンブレードを叩き込んだ。
ちなみに、今回のストーンブレードは刃を潰したバージョンだ。
続けて、ユナを捕らえていた部下と、近くにいたもう一人の部下も、同じ要領で倒した。
その間に俺は口の布を引きちぎり、部屋の中に駆け込んでいた。
「ヒナ!無事か!」
俺はヒナに声をかけつつ、ベッド脇に置いてあったユナのショートソードをユナに投げた。
「ありがとう!外は任せて!ヒナをお願い!」
ショートソードを受け取ったユナは、ドアの外に集まり始めていた部下たちの相手を始めた。
ネグリジェを破かれたユナは、下着一枚の姿になっていたが、お構いなしに部下と戦い始めていた。
「ヒナ!しっかりしろ!」
俺はヒナの上体を起こして抱きしめた。
すると硬直していたヒナの体が弛緩した。
「うっ・・・うっ・・・うわーん、ゲンさま!」
ヒナは正気を取り戻し、俺にしがみ付いてきた。
「こっ・・・怖かったですぅ・・・」
ヒナはボロボロ涙を流していた。
「もう大丈夫だ。すまなかった。すぐに助けてやれなくて」
「・・・ゲンさま・・・また、ゲンさまが助けてくれました」
ヒナがぎゅうっと強く俺に抱きついた。
全裸のヒナの色々な部分が俺に押し付けられる。
俺の方も薄手の部屋着なので、もろにその感触が伝わって来た。
だが、今はそんな事を意識している場合じゃねえ!
「ヒナ、何ともないか?・・・その、ケガとかしてないか?」
「ええと・・・かすり傷くらいで、後は大丈夫です」
ヒナには服を引きちぎられた時に擦れたのであろう、擦り傷が出来ていた。
「そうか・・・良かった」
「・・・でも・・・・・・・」
ヒナが再び俯いて、涙をぽろぽろ流し始めてしまった。
「どうした?ヒナ。どこか痛いのか?」
ヒナは泣きながら上目づかいで俺を見上げた。
「ゲンさま以外の男の人に見られてしまいました・・・」
・・・ああ・・・その事か・・・
「・・・ゲンさま以外には絶対見せないって決めてたのに・・・」
ヒナの目から再び涙がぽろぽろこぼれ始めてしまった。
以前に凌辱された時の記憶の無い、今のヒナにとってはショックな出来事だったに違いない。
そんなヒナを見て、ものすごくいじらしくてかわいく思えてしまった。
泣きじゃくるヒナを何とか安心させてやらないといけない!
「そんなもん気にするな!俺がこれからその何十倍も見てやる!それで帳消しにしろ!」
一瞬きょとんとして、涙の止まったヒナは、びっくりした顔で俺を見上げた。
「ほんとですか!ゲンさま!約束ですよ!他の人に見られた何十倍も見てくれるんですよね!」
ヒナは真剣な顔で聞き返した。
「ああ、男に二言はねえ!他のやつに見られたら俺がその何十倍でも何百倍でも見てやるからな!覚悟しとけよ!」
・・・ヒナを安心させるためとはいえ、俺は一体、何を約束してしまったんだ?
「はい!ゲンさまにだったらいくらでお見せします!・・・あの・・・早速今から見てもらってもいいですか?」
・・・ベッドの上でトンビ座りをしていたヒナは、両手の指を自分の体のその部位に添えた。
そして真っ赤な顔で俺を見上げている。
手で隠したのかと思ったが・・・その指は・・・まさか!ぴったりと閉じてるそれを今から左右に広げようって言うんじゃねえよな?
「ばか!今は見せるな!とにかく、早く服を着ろ!装備も付けておけ!」
「・・・はい、わかりました」
ヒナは少しだけ残念そうに返事をした、
さっきからヒナの裸を目の前にして平常心を保つのに必死だったんだ。
今そんなものを見せられたら、戦闘どころじゃなくなっちまう!
「ちょっと!いつまでもいちゃいやしてないで早く手伝ってよ!」
・・・下着一枚で奮戦しているユナに怒られた。
「わかった、今すぐ行く」
俺はヒナに毛布をかけて、ユナの加勢に向かった。




